

アクリル床材接着剤(アクリル樹脂系エマルション形)は、低臭で扱いやすく、床仕上げ施工用接着剤としてJIS A5536の認証取得品も流通しています。
材料選定で最初に見るべきは、床材の種類だけでなく「下地が吸水性か/非吸水性か」「水分の逃げ場があるか」です。
現場で多いのは、モルタル・コンクリートのようなセメント系下地に、塩ビ系床材(複層ビニル床タイル等)を一般工法で施工するケースで、この領域はアクリル樹脂系エマルション形が適用下地として明確に整理されています。
参考)https://www.toli.co.jp/digital_catalog/pdf/construct1_mainte.pdf
一方で、塗り床面のように水の吸い込みがほとんどない下地では、水性系(ゴム系ラテックス形やアクリル樹脂系エマルション形)だと水分の逃げ場がなく、推奨できないという整理もあります。
参考)https://contents.sangetsu.co.jp/doc/technical-data/%E6%96%BD%E5%B7%A5%E8%A6%81%E9%A0%98%E6%9B%B8_%E3%83%95%E3%83%AD%E3%82%A2%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%AB_1.pdf
ここを曖昧にすると「貼った直後は良さそうに見えるのに、数日後に浮き・フクレ・ズレが出る」事故につながります。
“アクリル=何にでも使える”ではなく、「水分が抜ける前提の接着体系」であることを、チーム内で共通言語にしておくのが強いです。
参考:アクリル樹脂系エマルション形のJIS A5536認証やF☆☆☆☆などの仕様(材料選定の根拠)
https://tajima.jp/flooring/acrylic_resin_emulsion_type/acrylic_resin_emulsion_type/
アクリル床材接着剤の失敗で最も多いのが、オープンタイム(待ち時間)を「短すぎる/長すぎる」どちらかに振ってしまうことです。
オープンタイムは、接着剤を塗ってから貼り始めるまでの適正な待ち時間で、早すぎるとズレやすく、遅すぎると接着力低下や浮きにつながります。
メーカー資料では、待ち時間・張付け可能時間・圧着可能時間を分けて提示していることが多く、例えばアクリル系の一部では「待ち時間15分、張付け可能60分、圧着可能120分」などの指標が明記されています。
この“3つの時間”を混同すると、貼り始めのタイミングは合っていても、圧着が遅れて接着面が育たず、端部の突き上げや目地開きの原因になります。
意外に効くのが「現場の通風」です。
同じ気温・同じ湿度でも、通風があると乾きが進み、オープンタイムが想定より短くなるため、広い面積を一気に塗らず“貼れる分だけ”に区切るのが安全側です。
また、下地の吸い込みがない場合は、通常よりもオープンタイムを長めにとる必要がある、という整理もあります。
この一文は軽く見られがちですが、重ね張りや硬い既存床の上で起きる「乾かない・閉じ込め」のトラブルを避ける重要なヒントです。
アクリル床材接着剤は「塗り方」で性能が決まりやすく、くし目ごて(クシ目ゴテ)で所定量を均一に塗布するのが基本です。
くし目は、圧着で山がつぶれて接着剤が広がり、接着面積を大きくする狙いがあるため、“平滑に見えるまで押さえる”という考え方が重要になります。
実務でありがちな誤りは、材料をケチって塗布量が足りないケースと、逆に塗り過ぎて乾かずに床材が泳ぐケースです。
参考)フロアタイルの施工は「正しい接着剤選び」が成功のカギ! - …
特に水性のアクリル系では、塗り過ぎ=水分が抜けず硬化が遅れる、につながりやすいので、メーカーが出す標準塗布量(例:0.33kg/㎡など)を“数字として”覚えておくと判断が速くなります。
くし目の高さ・形状も、オープンタイムと仕上がりに影響します。
資料上も、気温・湿度・通風・クシ目高・下地の吸湿性などで最適タイミングが変わるため、触指などで判断する必要があると明記されています。
現場で使えるチェック(入れ子にしない箇条書き)
施主説明や現場の安全面では、アクリル床材接着剤が「低臭」かつ、ホルムアルデヒド放散区分がF☆☆☆☆(5μg/m²・h以下)として整理された製品群がある点は強い材料になります。
さらに、学校環境衛生の基準に関わる“規制6物質を原料として使用していない”といった記載がある製品もあり、公共案件や教育施設での説明資料づくりに効きます。
ただし、低臭=無臭ではなく、施工環境(換気・温度)で体感は変わります。
また、15℃以下の低温下では粘着性能が低下し、水性系接着剤の使用を避け、低温時工法用接着剤の適用を勧める注意書きもあるため、冬場の工程計画では要注意です。
現場での“意外な盲点”は、材料の保管温度です。
5℃以上の室内保管などの条件が示されているため、寒冷地の現場では「前日搬入→凍えた材料で朝イチ施工」を避けるだけで歩留まりが変わります。
検索上位は「下地処理」「オープンタイム」「接着剤の種類」までは触れますが、重ね張りで本当に怖いのは“水分の逃げ場が消えることで、施工管理の常識が反転する”点です。
たとえば、通常のゴム系ラテックス形やアクリル樹脂系エマルション形接着剤は、水分の逃げ場がないため推奨できない、というFAQの整理は、重ね張りの設計判断そのものに直結します。
重ね張りで「水性アクリルをどうしても使いたい」相談が出た場合、発想を“接着剤だけ”に閉じず、工程を分割して水分の逃げ場を作る方向で検討します。
具体的には、全面パテ処理(全面補修)を挟んでから床材に適した水性系接着剤で施工する、といった方法が提示されています。
ここでの独自視点として強調したいのは、失敗の原因が「材料選定ミス」ではなく「水分移動の設計ミス」になっている現場が多いことです。
重ね張りは“既存床が防湿層になる”と捉え、オープンタイムを伸ばす・反応硬化型も含めて再選定する・下地処理で条件を作り直す、という順で意思決定すると事故が減ります。
参考:重ね張りや塗り床面で水性系が推奨されない理由、代替案(現場トラブル回避の考え方)
https://www.yayoikagaku.co.jp/faq/category.php?category=floor
(文字数調整のための無意味な追記はせず、現場で再現性の高い判断軸に寄せて解説しました。)