

アルキルアルミニウムは、日本の消防法で「第3類(自然発火性物質及び禁水性物質)」に分類される危険物として扱われます。
この分類が示しているのは、単に“燃える”ではなく、空気に触れるだけで発火し得ること、水と接触して危険な反応を起こし得ることが、制度上の前提になっている点です。
建築現場での感覚だと「溶剤=第4類」を想像しがちですが、アルキルアルミニウムは“禁水”という別軸の難しさがあり、散水・洗い流し・湿布といった日常の対処が裏目になる場面があります。
特に注意したいのは、名称が「アルキルアルミニウム」と総称で書かれていても、実体はトリエチルアルミニウム等の個別物質で、性状や取り扱い条件がSDSで具体化されることです。
参考)アルキルアルミニウム - ハロゲン元素に注意!消火困難な危険…
現場の受入れ時は、ラベルの危険物分類だけでなく、SDSの「水反応」「自然発火」「皮膚腐食」等の区分と注意書きまで確認して、保管場所・養生・作業手順に落とし込む必要があります。
参考)https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0642.html
トリエチルアルミニウムは、GHS上「自然発火性液体 区分1」「水反応可燃性化学品 区分1」などに分類され、危険有害性情報として「空気に触れると自然発火」「水に触れると可燃性又は引火性ガスを発生」が明記されています。
つまり漏えい時に「空気(酸素)」と「水分(湿気・結露・雨・濡れウエス)」の両方が着火・発熱のトリガーになり得るため、屋外でも安全とは限りません。
さらに、作業者の皮膚・眼への影響も無視できず、トリエチルアルミニウムは皮膚腐食性(区分1)に分類されており、火災以前に“付着=化学熱傷リスク”として扱うべき物質です。
あまり知られていない落とし穴は、「水をかけなければ粉じんが立つ」「冷やしたい」という通常の安全感覚が、禁水性物質では逆効果になり得ることです。
SDSの注意書きには「水と接触させないこと」「湿気を遮断し、不活性ガス下で取り扱うこと」等が並び、対策の基本が“乾燥”“密閉”“不活性雰囲気”に寄っている点が、一般の可燃性液体と決定的に違います。
アルキルアルミニウムは、燃焼時に白煙を生じることがあるとされ、吸入で呼吸器系に悪影響が出得るため、火炎だけでなく煙の管理(退避距離・換気・呼吸用保護具)が重要になります。
また、ハロゲン化物と激しく反応して有毒ガスを発生し得るため、消火剤や周辺薬剤の選択で「反応させない」発想が必要になります。
初期消火は“勢いよく水を当てる”という発想から切り替え、現場のSDS・消防計画に基づき、適合する消火資機材(例:専用粉末等)と、遮断・隔離・窒息の手順を優先して整備するのが現実的です。
参考リンク(トリエチルアルミニウムのGHS分類・注意書き・取扱い/保管の要点)
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/97-93-8.html
アルキルアルミニウム等を移送する場合、危険物に関する政令に基づき「移送の経路等に関する書面」を関係消防機関へ送付する趣旨の制度が案内されています。
この“経路の見える化”は、事故が起きたときの対応を早めるだけでなく、運搬中の停車場所・迂回・積替えの判断を事前に縛ることで、危険な偶発作業を減らす意味合いがあります。
建築現場側としては「搬入された後」だけでなく、元請・荷受け・運送会社の間で、どこまで書面・SDS・緊急連絡体制を共有しているかを、受入れ条件に入れておくと事故率が下がります。
参考リンク(アルキルアルミニウム等の移送経路等に関する書面送付の制度概要)
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/drs/ss_11/035.html
建築従事者の独自視点で重要なのは、「薬品そのもの」よりも“現場の水分管理”が事故の引き金になりやすいことです。
例えば、雨天搬入・結露した鉄骨面・湿ったウエス・水養生直後の床・スラブ洗浄の飛沫など、火気のない環境でも“水分に触れない”前提が崩れやすいポイントが多く、工程干渉でリスクが跳ね上がります。
さらに静電気対策(接地・アース)や防爆機器の使用が注意書きに含まれているため、「乾燥」だけでなく、帯電しやすい養生材・ホース・樹脂容器の扱いも含めた現場ルール化が必要です。
現場で実務に落とすなら、次のように“水分・空気・接触”をチェックリスト化すると、教育が早くなります。
このあたりを押さえると、「アルキルアルミニウム 危険物」は単なる化学の話ではなく、建築現場の工程・天候・養生・清掃と直結する管理テーマとして説明できます。