鉄骨規格から強度・設計・建築基準法まで建設業従事者必須知識解説

鉄骨規格から強度・設計・建築基準法まで建設業従事者必須知識解説

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鉄骨規格の基礎知識

鉄骨規格の基本構成
📋
JIS規格体系

建築基準法に基づく鋼材規格の全体像

強度分類

SS400からSN490まで用途別強度等級

🏗️
建築適用

重量・軽量鉄骨造における選定基準

鉄骨規格JIS基準とSS400の位置づけ

鉄骨規格の核となるのは、建築基準法第37条で指定されている日本工業規格(JIS)です。建築基準法上は「鉄骨」という材料名は存在せず、正式には「鋼材」として「炭素鋼」または「ステンレス鋼」の総称で扱われています。
主要な鉄骨規格は以下のように分類されます。

  • 一般構造用圧延鋼材(JIS G 3101) - SS400が代表的
  • 溶接構造用圧延鋼材(JIS G 3106) - SM490など
  • 建築構造用圧延鋼材(JIS G 3136) - SN400からSN490
  • 一般構造用炭素鋼鋼管(JIS G 3444) - STK材

SS400は引っ張り強度が400メガパスカル以上で、橋やビルの骨組みに使われ、加工性に優れることから建設現場で最も多用されている基本規格です。

鉄骨規格の厚さ・断面形状による分類システム

鉄骨規格では、厚さによる明確な分類体系があります:
厚さによる分類

  • 厚さ3mm未満:薄鋼板
  • 厚さ3mm以上幅1250mm未満:平鋼
  • 厚さ3mm以上幅1250mm以上:鋼板

軽量鉄骨造では厚さ6mm未満の薄鋼板を使用し、重量鉄骨造では厚さ6mm以上の強度の高い鋼板を使用します。LGS(軽量鉄骨造)は従来の木造や重量鉄骨に代わる構造材として注目されており、軽量・高精度・加工性の高さが魅力です。
断面形状の分類
断面形状を工夫することで、鋼材の曲げや圧縮の強度を高めています。

  • H形鋼:広幅・中幅・細幅に分類され、最も需要の多い基本形状
  • 形鋼(L形):等辺・不等辺に分かれ、鉄塔や橋梁に使用
  • 溝形鋼(コ形)チャンネルとも呼ばれ、背中合わせで柱・梁に使用

鉄骨規格強度等級と機械的性質の詳細

一般構造用炭素鋼鋼管(STK)の機械的性質は、JIS G 3444によって詳細に規定されています。厚さと種類の記号により、具体的な伸び率が以下のように定められています:
STK材の伸び率規格例

  • STK290:厚さ1mm以下で20%以上の伸び
  • STK400:厚さ1mm以下で12%以上の伸び
  • STK500:厚さ2mm超え3mm以下で8%以上の伸び

これらの数値は、鋼材の延性と加工性を示す重要な指標です。数値が高いほど変形能力に優れ、地震時の靭性が向上します。

 

意外な活用ポイント🔍
山形鋼は、鉄塔や橋梁という大規模構造物だけでなく、実は門や柵の枠にも使用されている点が特筆すべき特徴です。この多様性が、山形鋼がH形鋼に次ぐ需要を持つ理由の一つです。

鉄骨規格の建築基準法適合と耐久性要件

鉄骨鉄筋コンクリート造における鉄骨規格の適用では、セメントの種類から具体的な耐久性基準まで詳細に規定されています:
コンクリートとの複合構造での要件

  • 使用セメント:JIS規定のポルトランドセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント
  • かぶり厚さ:水セメント比55%以下で屋内3cm、屋外4cm以上
  • 直接土に接する部分:4cm以上(基礎は6cm以上)

建築基準法での構造耐力規定
建築基準法第20条では、建築物は自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造とすることが求められています。
鉄骨規格の選定では、これらの荷重条件と組み合わせて適切な強度等級を選択する必要があります。特に横筋の鉄筋比は階数により0.2%以上〜0.25%以上と段階的に強化されています。

 

鉄骨規格最新動向と設計実務への影響

近年では、JISで規定されていない鋼材が多用されるようになってきました。代表的なものに「冷間成形角形鋼管」があり、他にも「耐火鋼」や「低降伏点鋼」などが実用化されています。
設計時の重要ポイント

  • 鋼材の比重:7.85(JIS G 3192等で規定)
  • 国際規格との違い:日本はJIS、国際的にはISO規格で断面寸法が異なる
  • 許容応力度計算:材料強度に応じた安全率の適用

実務での注意点
建築鉄骨の部位に応じた要求性能を確保するため、建築構造専用の鋼材では寸法精度のマイナス側公差が厳しく設定されています。設計時にはこの精度要件も考慮した規格選定が必要です。
建築基準法における鉄骨造の構造耐力上主要な部分の材料は、「鋼材(炭素鋼・ステンレス鋼)」または「鋳鉄」と明確に区分されており、適切な規格選定が構造安全性の根幹となります。

 

設計実務では、これらの規格体系を理解した上で、建物用途・規模・立地条件に応じた最適な鉄骨規格の選定が求められています。特に軽量鉄骨造の普及により、従来の重量鉄骨一辺倒から多様な選択肢を検討する時代となっており、規格の深い理解がより重要になっています。