圧力損失と差圧の違いを配管・空調設備で解説

圧力損失と差圧の違いを配管・空調設備で解説

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圧力損失と差圧の違い

記事の要点
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圧力損失とは

流体が配管を通過する際に失うエネルギー量。摩擦や障害物により発生する。

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差圧とは

任意の2点間における圧力の差。測定点間の圧力差を数値化したもの。

両者の関係

圧力損失は差圧の一種。設備の一次側と二次側の差圧が圧力損失値となる。

圧力損失の基本的な定義

 

圧力損失とは、流体(空気や水などの液体・気体)が配管やダクト内を通過する際に失うエネルギー量のことです。流体が装置の管などを通る際、配管の内壁との摩擦や曲がり角、狭くなった部分を通ることで圧力が減少します。この現象は「エネルギー損失」であり、下流側の圧力低下だけでなく、流量や流速も減少させてしまうのが特徴です。
参考)https://www.mdirect.jp/pressure/

配管やダクトを通過する流体は、壁面との摩擦によって抵抗を受けます。さらに配管が長くなればなるほど、また曲がり管が多くなるほど圧力損失は大きくなります。実際の建築設備では、ボイラーから遠い場所で空調や給湯設備を使用したとき、温かい空気やお湯がなかなか来ないという現象が発生しますが、これが圧力損失の典型的な例です。
参考)https://plaza.rakuten.co.jp/mikao/diary/202507200000/

圧力損失の計算には、ダルシー・ワイスバッハの式が用いられます。この式では、圧力損失は管摩擦係数、流体密度、流速の二乗、配管長さに比例し、配管内径に反比例します。配管設計においては、この圧力損失を最小限に抑えることが省エネルギーとコスト削減に直結するため、非常に重要な検討項目となります。
参考)https://kucho-sekou.com/contents/1378/

差圧の基本的な定義

差圧とは、任意の2点間における圧力の差を示す値です。基準となる圧力ポイントからの圧力差として表現され、正圧(プラス)と負圧(マイナス)の両方の場合があります。差圧計では、ピストンやダイアフラムなどを用いて、基準点とする1点ともう片方の点を接続し、相対的な圧力の差異を測定します。
参考)https://www.krone.co.jp/column/2021/11/29/absolute-gauge-differential-pressure/

差圧の計算式は非常にシンプルで、「差圧(△P)=圧力1(P1)-圧力2(P2)」で表されます。この測定方法は、2つの場所の圧力差を直接表示するため、配管内流速の計測やアスベスト除去作業時の負圧計測など、様々な用途に活用されています。空気は高圧から低圧へ流れる性質があるため、差圧計を使用することで規定の圧力差からの変化を異常として検知できます。
参考)https://www.monotaro.com/note/cocomite/147/

建築設備分野では、クリーンルームや滅菌室における室間差圧の管理が重要な応用例です。室間差圧とは、一部屋と隣の部屋との間に生じる気圧差を指し、この圧力差を適切に管理することで、外部からの塵や不純物の侵入を防ぎます。空調換気設備における給気と排気の制御により、意図的に圧力差を生み出し、空気の流れをコントロールすることが可能になります。
参考)https://setsubinoshinryoujyo.com/2023/11/09/%E5%AE%A4%E9%96%93%E5%B7%AE%E5%9C%A7%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BD%9C%E6%BB%85%E8%8F%8C%E5%AE%A4%E3%82%84%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%A7%E3%81%AE%E5%AE%A4%E5%9C%A7/

圧力損失と差圧の関係性

圧力損失と差圧は密接に関連していますが、用途と意味が異なります。結論から言えば、圧力損失は差圧の一種であり、設備や配管の一次側(上流側)と二次側(下流側)に生じる差圧が圧力損失値となります。バルブを例に取ると、バルブの一次圧と二次圧の差(差圧)がバルブの圧力損失に相当します。
参考)https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1082079690

差圧は測定する2点間の圧力差を示す一般的な概念であるのに対し、圧力損失は流体が流路を通過する際に生じる特定のエネルギー損失を指します。つまり、差圧は単に「2つの圧力の違い」を表す測定値ですが、圧力損失は「流れによって失われたエネルギー」という物理現象を表現しています。圧力計Aと圧力計Bで測定した圧力差が、その間の配管やバルブで発生した圧力損失となります。
参考)https://www.keyence.co.jp/ss/products/process/flowmeter/technique/pressureloss.jsp

実務においては、フィルタを空気が通過する際の一次側と二次側の差圧を測定することで、そのフィルタによる圧力損失を把握します。新品時の初期圧力損失と、粉塵を捕集した後の圧力損失を比較することで、フィルタの交換時期を判断することも可能です。このように、差圧測定は圧力損失を定量的に評価するための実践的な手法として広く活用されています。
参考)https://www.nitta.co.jp/faq/?category1=156amp;category2=164amp;category3=180

圧力損失が発生する主な原因

圧力損失が発生する主な原因は、流体が配管やダクト内を通る際に受ける摩擦と、流れの乱れです。摩擦による圧力損失は、流体が配管の内壁に接触することで生じ、配管の長さが長いほど、また内壁が粗いほど大きくなります。壁面での摩擦損失は粘度が大きく流速が速いほど顕著になり、円管の場合は特定の計算式で求めることができます。
参考)https://www.cybernet.co.jp/ansys/learning/glossary/atsuryokusonshitsu/

配管経路の変化も圧力損失の重要な原因です。配管が急に狭まった部分では縮流という現象が発生し、流れの収縮が働いて管路面積よりも細くなります。その後流れは配管いっぱいに広がりますが、この拡大に伴って渦が発生し、圧力が損失します。また配管の曲がり角では、流体が慣性の法則に逆らって方向を変えるため、その分のエネルギーが失われます。​
開閉バルブや流量計の設置も圧力損失を招きます。グローブバルブのように全開時でも流路が曲がっているバルブは、曲がり角の部分で圧力を損失します。流量計については、差圧式流量計、カルマン渦式流量計、羽根車式流量計などが流量を絞ることで検出するため、圧力損失が発生します。さらに管の断面が急に変わる箇所や曲がった場所では渦が発生し、その場に留まることでエネルギー損失となります。​

建築設備における実務上の使い分け

建築設備の実務では、圧力損失と差圧を目的に応じて明確に使い分けています。空調設備の設計においては、ダクトの静圧計算で圧力損失を算出し、必要なファンの能力を決定します。換気ファンで部屋へ空気を供給する際、ダクト摩擦などの障害により搬送空気に圧力損失が生じるため、この損失分を考慮した静圧計算が不可欠です。
参考)https://kenchikusetubisekkei.com/45-pressure/

差圧は主に監視や制御の目的で使用されます。クリーンルームでは室間差圧を2.5Pa以上に維持することがCDCガイドラインで推奨されており、差圧計を用いて継続的に監視します。病院の陰圧隔離室や製薬工場の滅菌室では、差圧管理が汚染防止の要となっています。空調換気設備は給気と排気の制御により室間差圧を生み出し、圧力により空気の流れ方向をコントロールします。
参考)https://akisho-workshop.com/archives/7283

圧力損失曲線は設備選定に活用されます。縦軸に圧力損失(または静圧)、横軸に風量を置いたグラフから、どれくらいの風量のときにどの程度の圧力損失になるか、そのときの吹出風速を確認できます。圧力損失が低いほど抵抗力は小さく効率的で省エネルギーとなるため、吹出口や制気口の選定では圧力損失曲線が重要な判断材料となります。また配管設計においても、圧力損失計算により適切な配管径や経路を決定し、ポンプ能力を過不足なく設定することができます。
参考)https://www.karyokuplant.com/pump/pressure_loss/

流量知識.COM - 圧力損失とその原因(キーエンス)
圧力損失のメカニズムと製造ラインへの影響について、わかりやすい図解とともに詳しく解説されています。

 

換気設備の静圧計算方法について解説【3分でわかる設備の教科書】
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