換気設備種類と選び方|建築事業者向け完全ガイド

換気設備種類と選び方|建築事業者向け完全ガイド

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換気設備種類と特徴

換気設備の主要3種類
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第一種換気設備

給気・排気ともに機械で制御し、計画的な換気を実現

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第二種換気設備

給気のみ機械、排気は自然換気で清浄環境を維持

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第三種換気設備

排気のみ機械、給気は自然換気で低コストを実現

換気設備第一種の機械換気システム

第一種換気設備は、給気口と排気口の両方にファンなどの機械換気装置を設置する方式です。機械により空気を入れて機械により空気を出すことで、効率良く計画的に換気ができる特徴があります。建築事業者にとって、高気密・高断熱の住宅に最適な換気方式として提案価値が高い設備です。
参考)第1種換気 ・第2種換気・第3種換気とは

換気機器の機種ごとに1時間当たりに換気できる風量が決まっているため、空間に応じた機種を選べば必要量の換気を計画的に行うことができます。室内の気圧は外気とほぼ同等となり問題を発生する危険性が少なく、狙いの場所から空気が入り狙いの場所から空気が出るので狙い通りの換気が可能です。
参考)換気の種類とは?第一種から第三種までご紹介。業務用換気を設置…

第一種換気システムには、給気、排気ともに機械換気の方式で、居住空間から非居住空間まで幅広く採用されている換気方式です。ただし、双方に機械がつくことで費用がかさむというデメリットがあります。建築プロジェクトの予算と顧客ニーズのバランスを考慮した提案が求められます。​

換気設備第二種と第三種の違い

第二種換気設備は、給気を機械ファンで行い、排気を自然換気で行う方式です。外からの汚れた空気の侵入を防ぎ、クリーンな環境を保てるため、クリーンルームや食品を扱う工場などにおすすめの換気方式です。給気のみを機械でおこなう換気として、室内を清浄に保つ必要のある特殊な建築物に採用されます。​
第三種換気設備は、第二種換気方式とは逆で、入口である給気口は自然給気、出口である排気口にファンなどの機械換気装置が取り付いた方式です。出口で空気を引っ張り出していることで、室内は外気より気圧が下がり負圧となります。多くの場合、1階はトイレと洗面所、2階はトイレの換気扇で排気を行います。​
3つの換気方式の中で1番普及している換気方式が第三種換気です。導入・ランニングコストが安いことが最大のメリットで、負圧になるため小屋裏や壁内への湿気の侵入を防ぐことができます。建築事業者として、コスト重視の顧客には第三種換気をおすすめすることが一般的です。​

換気設備の全熱交換器による熱回収

全熱交換器は、排気時に捨ててしまう室内の熱を回収して、給気してきた空気に戻すことで、換気による温度変化を抑えることができます。全熱交換器には回転型と静止型があり、回転型はローターの回転により排気から給気に熱回収する蓄熱式熱交換器です。静止型全熱交換器は直交流型プレートフィン式全熱交換器の構造をしており、特殊加工紙の仕切板と間隔板で構成されています。
参考)https://www.jraia.or.jp/product/exchanger/theory.html

全熱交換器なら、排気される汚染した室内空気と供給される新鮮な室外空気とが通過する際に温度(顕熱)と湿度(潜熱)の交換が行われます。換気による室内の温度変化を抑えられるだけでなく、エアコンの負荷の軽減にもつながるため、換気とエアコンをトータルで考えると省エネです。
参考)全熱交換器と換気扇との違いは?|ダイキンプロショップ-業務用…

全熱交換器は空調された室内空気と新鮮空気である外気との間で熱交換を行うことで温度・湿度を回収することができる同時給排気型の換気扇であり、換気・空調設備の省エネルギー化を図るための重要な手段として普及しています。換気を行うことにより発生する空調エネルギーのロス(換気負荷)を60%程度削減することが可能であり、夏季・冬季に使用される空調の消費電力を13~30%削減可能であることが示されています。建築事業者として省エネ性能を重視する顧客に対して、全熱交換器付き換気システムの提案は非常に有効です。
参考)全熱交換用紙

日本冷凍空調工業会による全熱交換器の熱回収原理の詳細解説

換気設備のダクト式とダクトレス式

第一種熱交換換気システムには、設置方法の異なるダクト式とダクトレス式があります。ダクトレス式は、換気システムの本体を直接建物の外壁に設置するタイプで、ダクトの配管は必要ありません。ダクト式は、天井裏や床下にダクトを配管して設置するタイプで、換気システムの本体は壁掛けまたは天井隠蔽が一般的です。
参考)第一種熱交換換気システムとは?

ダクト式換気システムは、給気と排気を一台の換気ユニットで制御し、ダクトを通じて住宅全体を換気する方式です。ダクトによって換気経路を設計できるため、住宅全体の空気の流れや換気量をコントロールしやすく、各部屋への均等な換気が可能です。しかし、ダクトの設置にはスペースが必要で、ダクトのメンテナンスや清掃の手間やがかかる点がデメリットです。
参考)https://www.daiei-co.com/blog/15175

ダクトレス式のメリットは以下の通りです。設計、施工が簡単なため、工法を選ばず、ダクト配管が難しい場合(吹き抜けや勾配天井等)でも熱交換換気を導入でき、施工に係る日数や費用も削減できます。大がかりなダクト清掃が必要なく、お住まいの方でお手入れが完結でき、局所的な導入も可能です。​

項目 ダクト式 ダクトレス式
設置方法 天井裏・床下にダクト配管 外壁に直接設置
初期費用 高い 低い
換気性能 高い(全館均等換気) 部屋ごとに独立
メンテナンス ダクト清掃が必要 簡単(自分で可能)
熱交換効率 高い(60~90%) やや低い(40~50%)
適した住宅 大規模・新築 小規模・リノベーション

ダクトレス一種換気システムは、小規模な住宅や部屋数が少ない住宅に特に向いています。リノベーションや既存住宅への後付けを検討している場合にも適しており、建物の構造を大きく変更する必要がなく、短期間での設置が可能です。
参考)【完全解説】一種換気システムはダクト式、ダクトレス?どっちが…

換気設備選定時のコスト比較(建築事業者向け独自視点)

建築事業者として顧客に換気設備を提案する際、イニシャルコストとランニングコストの両面から比較することが重要です。第一種換気は双方に機械がつくことで費用がかさむ一方、第三種換気は導入・ランニングコストが安いことが最大のメリットです。​
24時間換気システムの標準的な消費電力は、1台あたり8W~40W程度です。1カ月間、24時間運転を続けた場合の電気代は、一般家庭でよく使われる換気扇(消費電力15W)で約300円~400円程度に収まるケースがほとんどで、毎日使っても1日あたり約10円未満と、意外に負担が少ないのが特徴です。
参考)24時間換気の電気代を徹底比較—高気密住宅や戸建て・賃貸で異…

主要メーカーの24時間換気システムの電気代目安として、パナソニックの標準タイプは消費電力5.0Wで1ヶ月あたり約96円、三菱電機の節電タイプは消費電力3.5Wで1ヶ月あたり約66円、マックスの高気密対応は消費電力4.0Wで1ヶ月あたり約78円です。弱運転中心の運用であれば電気代はどれも1ヶ月100円前後が目安です。​
💡 建築事業者として知っておくべきポイント。

  • 第一種換気は初期費用が高いが、全熱交換器により冷暖房費を削減できるため、長期的なランニングコストでは有利になる場合があります​
  • 第三種換気は初期費用を抑えられるが、気密性能が低い住宅では冷暖房費がかさむリスクがあります

    参考)第一種換気と第三種換気はどちらがいいか 換気システムの選び方…

  • 顧客の予算と建物の気密性能を総合的に判断し、最適な換気設備を提案することが建築事業者の専門性です
換気種類 初期費用 月間電気代 メンテナンス頻度 推奨建物
第一種(ダクト式) 高い(50~150万円程度) 約300~500円 年1回(ダクト清掃含む) 高気密・高断熱住宅
第一種(ダクトレス式) 中程度(30~80万円程度) 約300~500円 6ヶ月に1回 小規模住宅・リノベーション
第三種 低い(10~30万円程度) 約200~400円 6ヶ月に1回 一般住宅

顧客の建物規模や予算、居住期間を考慮し、トータルコストで最適な換気設備を提案することが、建築事業者としての価値提供につながります。特に賃貸物件や別荘など長期間使用しない住宅には、設置コストが比較的低いダクトレス式が経済的に導入できます。​

換気設備設置基準とメンテナンス

換気設備の法定要件
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建築基準法第28条

居室の床面積に対して換気に有効な開口部を1/20以上確保

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2003年改正による義務化

新築住宅には機械換気設備の設置が法的に義務化

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定期点検の実施

6ヶ月または1年に1回の法定点検とメンテナンス

換気設備の建築基準法による設置基準

建築基準法第28条では、居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならないと明記されています。この「床面積の1/20以上」というのが換気量の基準であり、設計者や施工者にとって非常に重要な数値です。
参考)換気設備に関わる建築基準法の規定を解説

2003年の建築基準法改正により、新築住宅には機械換気設備の設置が義務化されました。これは、シックハウス症候群などの健康被害に対応するかたちで行われた改正です。従来のように窓を開けて換気する方法だけでなく、機械換気設備による計画的な換気が求められるようになりました。​
例えば住宅の場合、換気回数0.5回/h以上の機械換気設備(いわゆる24時間換気システムなど)の設置が必要となります。換気回数0.5回/hとは、1時間当たりに部屋の空気の半分が入れ替わることを意味します。建築事業者として、この法定基準を満たす換気設備を確実に設置することが求められます。
参考)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/sickhouse.files/sickhouse_1.pdf

国土交通省による改正建築基準法のシックハウス対策に関する資料

換気設備の技術基準(建築基準法施行令)

換気設備を設置する際には、建築基準法施行令第129条の2の5で定められた技術基準を守る必要があります。特殊建築物の居室に設置する換気設備の技術基準として、以下のような規定があります。
参考)義務化されたって本当?換気設備工事の基本を解説します - 電…

自然換気設備では給気口や排気口の有効開口面積などが一定の水準以上であることが求められます。機械換気設備では有効換気量が一定の水準以上であることが必要です。居室の中の人が活動する空間の炭酸ガス含有率をおおむね100万分の1000以下に、一酸化炭素の含有率をおおむね100万分の6以下に保つ換気ができることが求められます。
参考)換気設備の種類と換気設備に関わる建築基準法の規定を解説|コニ…

項目 自然換気設備 機械換気設備
有効開口面積 給気口や排気口の有効開口面積が一定の基準を満たすこと 該当なし
有効換気量 該当なし 室内の空気を十分に入れ替える適切な換気量が求められる
二酸化炭素(CO2)濃度 該当なし 100万分の1000以下であること
一酸化炭素(CO)濃度 該当なし 100万分の6以下であること
防水・害虫対策 雨水や害虫の侵入を防ぐ設備があること

給気口と排気口に、雨水の浸入やねずみ、ほこりその他衛生上有害なものの侵入を防ぐための設備があることも技術基準として定められています。風道から発散する物質やその表面に付着する物質によって居室の内部の空気が汚染されないことも重要な基準です。建築事業者として、これらの技術基準を遵守した換気設備の設計・施工が求められます。​

換気設備の定期点検とメンテナンス

換気設備の法定点検には、定期点検(6ヶ月または1年に1回)が義務付けられています。定期点検では、換気量・CO₂濃度の測定、ダクト・フィルターの汚れ・詰まりチェック、換気扇・送風機の作動確認、騒音測定などが実施されます。
参考)換気点検|建築基準法 href="https://facilities.tanaakk.com/2025/03/11/ventilation-inspection-building-standards-act/" target="_blank">https://facilities.tanaakk.com/2025/03/11/ventilation-inspection-building-standards-act/amp;#8211; TANAAKKファシリ…

清掃・メンテナンス(1年に1回以上推奨)では、換気ダクト・フィルターの洗浄・交換、モーター・ベルトの点検・調整、給気・排気口の清掃が行われます。建築事業者として、引き渡し後の定期的なメンテナンスの重要性を顧客に説明し、適切な保守契約を提案することが重要です。​
法定点検の対象となる換気設備には、機械換気設備として全熱交換器、局所排気装置、天井埋込型換気扇、壁付換気扇、空調機・エアハンドリングユニット(AHU)があります。自然換気設備としては給気口、排気口、窓換気システム、通風口が対象です。ダクト・フィルター系統として、空調ダクト、排気ダクト、排煙ダクト、換気フィルター、HEPAフィルターも点検対象となります。​
🔧 メンテナンスのポイント。

  • 第一種ダクト式は、給気した空気がダクトを通る場合、ダクトのメンテナンスを怠るとカビやホコリを含んだ空気が住宅全体に拡散される恐れがあります​
  • ダクトレス式は大がかりなダクト清掃が必要なく、お住まいの方でお手入れが完結できるメリットがあります​
  • 定期的なフィルター清掃・交換を行うことで、換気性能を維持し、電気代の上昇を防ぐことができます

換気設備の選び方(住宅規模別)

建築事業者として顧客に換気設備を提案する際、住宅の間取りと家族構成を考慮することが重要です。住宅の広さや部屋の配置によって、必要な換気能力やシステムの種類が大きく変わるため、事前の計画が欠かせません。​
広いリビングを持つ住宅では、ダクト式一種換気システムが適している場合が多いです。中央管理型のシステムにより、広い空間全体を効率的に換気できるため、温度や湿度のムラが生じにくいのが特徴です。部屋数が多い場合や、小さな部屋が多い住宅では、ダクトレス式が適している場合があります。​
狭小住宅では、スペースやコスト、メンテナンス性を考慮した上で、最適な方式を選定することが重要です。第一種換気は、給気と排気の両方を機械で制御するシステムで、熱交換型の機種を選べば、外気を取り込む際に室内の温度と湿度に近づけることができ、冷暖房の負荷を軽減しながら効率的な換気が可能になります。
参考)【福岡市 城南区】狭小住宅における換気システムの重要性

家族構成も選定のポイントです。小さな子どもやアレルギー体質の家族がいる場合には、フィルター性能の高いシステムを選ぶことで健康リスクを低減できます。使用する部屋が限られる単身世帯では、部分的な換気が可能なダクトレス式が合理的です。​
📊 住宅規模別の推奨換気設備。

  • 小規模住宅(延床面積100㎡未満):第三種換気またはダクトレス式第一種換気​
  • 中規模住宅(延床面積100~150㎡):ダクト式第一種換気または第三種換気​
  • 大規模住宅(延床面積150㎡以上):ダクト式第一種換気(全熱交換器付き推奨)​
  • リノベーション・既存住宅:ダクトレス式第一種換気​

室内の換気を効率的かつ正確に行うことを重視する場合は第一種換気を、家づくりも生活もコスト重視の場合は第三種換気をおすすめします。建築事業者として、顧客のニーズと建物特性に応じた最適な換気設備提案が求められます。​