空調設備種類と選定ポイント・メンテナンス・コスト削減方法

空調設備種類と選定ポイント・メンテナンス・コスト削減方法

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空調設備種類と特徴

空調設備の主な種類
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中央熱源方式

機械室に熱源機器を集約し、建物全体を一元管理する空調システム

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個別分散方式

各階や部屋ごとに空調機を設置し、個別制御を実現するシステム

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ダクト方式

空気を搬送路として冷暖房を行う全空気方式の空調システム

空調設備は大きく分けて中央熱源方式と個別分散方式の2つに分類されます。中央熱源方式は、ボイラーや冷凍機などの熱源機器を機械室に集約し、冷温水を空気調和機に送水して建物全体を空調する方式です。一方、個別分散方式は空調を必要とする部屋ごとに空調機を設置し、空調の入切や冷暖房の切替が個別にできる方式となります。
参考)空調方式の分類と単一ダクト方式 【通販モノタロウ】

中央熱源方式では熱源が一箇所に集約されるため、保守や管理を一括化できるメリットがあります。しかし機械室やダクトスペースなど広いスペースが必要となり、空気や水を搬送する動力に使うエネルギーも大きくなる傾向があります。個別分散方式では各室やゾーンごとの個別制御が可能で、使っていない部屋の空調を停止して節電できる特徴があります。
参考)いろいろな空調方式ー中央熱源方式と個別熱源方式の特徴とメリッ…

中央熱源方式と個別熱源方式の詳細な比較が掲載されています
熱源機器としては、圧縮式冷凍機とボイラーの組み合わせ、吸収式冷凍機とボイラーの組み合わせ、1台で冷温水を作れる吸収式冷温水機、ヒートポンプチラーなどがあります。近年はヒートポンプ技術の発展により、熱効率の高いヒートポンプチラーを採用するケースが増えています。
参考)空調設備の全体像 【通販モノタロウ】

空調設備の単一ダクト方式の仕組みと利点

単一ダクト方式は中央熱源方式の代表的なシステムで、空調機から1本の給気ダクトを分岐して各室に調和された空気を送り届ける方式です。シンプルな設備構成のため、イニシャルコストが比較的安く、機械室などに機器が集約されるため保守点検も比較的容易です。​
単一ダクト方式には定風量方式(CAV)と変風量方式(VAV)があります。定風量方式は風量を一定に保ち送風温度を調節して室温を制御する方式で、常に一定の外気が含まれるため室内の空気質が良好に保たれます。しかし各室ごとの温湿度設定ができず、熱負荷が小さい部屋にも同風量の空気を送るため無駄な送風エネルギーが発生します。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/91b07519f89886754f1bdeaad64a8fa34d648ef6

定風量方式と変風量方式の詳細な違いが解説されています
変風量方式はダクトの途中に変風量(VAV)ユニットを取り付けることで空気の風量を変更可能です。熱負荷に応じて送風量を調整できるため、定風量方式より省エネ効果が高い空調方式といえます。ただし稼働機器が増加する分メンテナンスの手間やコストがかかり、風量が減少した際に室内の空気質が悪化する可能性があります。
参考)CAV方式の空調制御とは|仕組みやVAVとの違いを解説

空調設備のファンコイルユニット方式の特性

ファンコイルユニット方式は、ファン(送風機)とコイル(熱交換器)をユニット化したファンコイルユニットを室内に置いて冷暖房を行う方式です。中央機械室から冷水または温水を供給し温度調整するユニットを各室に設置することで、ユニットごとに風量を調節できるため個別制御が容易です。
参考)独学で二級建築士資格取得を目指す! −空気調和設備− - さ…

この方式は病室やホテルの客室の空調に用いられることが多く、外壁の室内側の窓下に床置型ファンコイルユニットを設置し上向きの吹出しとすることで、コールドドラフトの防止に有効です。ダクト併用ファンコイルユニット方式では、定風量単一ダクト方式に比べて必要とするダクトスペースが小さくなるメリットがあります。​
個別制御性が高く、各室で異なる温度設定が可能なため、使用者の快適性を重視する施設に適した空調方式といえます。また各ユニットが独立して動作するため、故障の影響が限定的である点も特徴です。
参考)https://www.yanmar.com/jp/energy/knowledge/energy_issues/case_60.html

空調設備のパッケージエアコン方式の選定基準

パッケージエアコン方式は、室外機と室内機で構成されるヒートポンプによる個別分散方式の空調システムです。中央熱源方式と異なり、各室や空調対象エリアごとに小型の空調機を設置し個別制御性を高めた方式となります。​
最適な能力・形状のエアコンを選ばなければ、冷暖房効率が悪く電気代がかさみ、効きも悪くなります。業務用エアコン選びのポイントとして、室内機の形状は設置場所のスペースや形状・室内デザインなどに考慮して選定し、馬力(能力)は床面積に加え建物の構造・形状・窓の位置、人員・熱源量などによって判定する必要があります。
参考)業務用エアコンの形と馬力の選び方

業務用エアコンの形と馬力の選び方が詳しく紹介されています
省エネ効率についてはイニシャルコスト・ランニングコストなどを考慮し、省エネでムダのない機種を選ぶことが重要です。また空調機器や施工に精通した優良施工業者の提案と施工を受けることで、長期的に安定した運用が可能になります。​

空調設備のマルチユニット方式の運用効率

マルチユニット方式は、屋上などに設置した1台の室外機に容量やタイプの異なる複数台の室内機を接続することが可能で、各室やゾーンごとの個別制御や運転に対応したヒートポンプによる空調方式です。ビル用マルチエアコンとも呼ばれ、室外機1台で能力の異なる複数の室内機を個別に運転できる異容量接続・個別運転マルチエアコンです。
参考)302 Found

部屋ごとにエアコンの運転調節が必要な建物に最適で、ワイドセレクトマルチでは室外機1台で最大7台(7室)まで室内機が接続できる全館空調向け大容量のマルチエアコンもあります。各階や各室で異なる温度設定が可能なため、オフィスビルや商業施設など多様な用途に対応できます。​
室内機の形状には天井カセット形、天井吊り形、床置形などがあり、設置場所の条件に応じて選択できます。天井カセット形は本体が天井内に埋め込まれ化粧パネルだけが表面に出ている設置方式で、吹出口が4方向・2方向・1方向のタイプがあります。​

空調設備選定時の建築事業者向け独自視点

建築事業者が空調設備を選定する際は、建物のライフサイクル全体を見据えた総合的な判断が求められます。イニシャルコストだけでなく、ランニングコストやメンテナンスコストを含めた総所有コスト(TCO)の観点から評価することが重要です。
参考)全館空調の費用まとめ!導入費・電気代・メンテナンス費の相場を…

空調負荷計算を行う際には、換気量についても考慮する必要があります。過剰な換気量で必要以上に外気が室内に流入すると冷暖房する空調の負荷も高くなり、反対に換気量が足りず空気の入れ替えが不十分な場合は汚れた空気による健康被害が起こるリスクがあります。
参考)空調負荷計算の方法は?負荷計算の必要性や最適な空調能力目安に…

空調負荷計算の方法と最適な空調設備選定のポイントが解説されています
また業種の特徴を踏まえて機器を選定することも大切で、メーカー担当者などプロに相談することで、空間に適したエアコンを選定できます。空調設備工事の品質は依頼する業者の技術力と提案力に大きく左右されるため、飲食店や高層ビル、公共施設などの施工実績がある業者を選ぶことが推奨されます。
参考)空調工事に強い業者19社を厳選!失敗しない業者選びのポイント…

建物の用途や規模に応じて、中央熱源方式と個別分散方式のハイブリッド構成を検討することも有効です。例えばオフィスビル内の大きな建物では、インテリアゾーンは単一ダクト方式で冷暖房と換気を行い、ペリメータゾーンでは天井や床に小型の空調機を設置して局所的に冷暖房を行うシステムがよく見られます。このような組み合わせにより、建物全体のエネルギー効率を最大化できます。​
さらに将来的な増改築や用途変更の可能性も考慮に入れ、フレキシブルに対応できる空調システムを選択することで、長期的な投資効果を高めることができます。省エネ関連施策として空調機メンテナンスが補助金や減税の対象となるケースもあるため、導入時にこれらの制度を活用することで実質的なコストをさらに抑えられます。
参考)年末の予算申請に最適!空調機メンテナンスでコスト削減と効率化…