厚板規格と板厚の選定基準

厚板規格と板厚の選定基準

記事内に広告を含む場合があります。

厚板規格の種類と板厚の基準

厚板規格の基本知識
📏
板厚による分類

中板(3mm以上6mm未満)、厚板(6mm以上)、極厚板(150mm以上)の3つに区分されます

⚙️
主なJIS規格

SS400、SM400、SN400などが代表的で、用途に応じた材質規格が定められています

🔧
許容差の重要性

板厚や幅によって異なる公差が規定され、設計時の精度管理に不可欠です

厚板規格における板厚の定義と分類

厚板はJIS規格において板厚3mm以上の鋼板として定義されており、その中でも詳細な分類が存在します。 3mm以上6mm未満のものを中板、6mm以上を厚板と呼び、さらに150mm以上の製品は極厚板として区別されています。
参考)https://www.jisf.or.jp/kids/shiraberu/atsutyu.html

日本の主要メーカーでは、最大で厚さ360mm、幅5,350mm、長さ30mといった超大型の厚板製造も可能であり、造船や建築、橋梁など多様な用途に対応しています。 このような板厚の分類は、加工方法や使用目的によって異なる機械的性質や溶接性能が求められるためです。
参考)https://www.jfe-steel.co.jp/products/atuita/catalog/c1j-001.pdf

厚板規格の主要なJIS材質と特徴

厚板の材質規格として最も代表的なものにSS400(一般構造用鋼板)があり、板厚の上限は定められていないものの、実用的には450mm以下までが一般的です。 SS400は汎用性が高い一方、溶接性に課題があるため、溶接構造用途にはSM400シリーズが推奨されます。
参考)https://kouzaiya.com/kouhan.htm

SM400は、JISG3106に規定される溶接構造用圧延鋼材で、SM400A、SM400B、SM400Cの3グレードがあり、炭素やマンガンの含有量が厳密に管理されています。 特にSM400Cは、リンや硫黄の含有量がより低く抑えられた高品質材として、エネルギープラント分野で採用されています。
参考)sm400とは?1分でわかる規格、特徴、成分、材質、ss40…

建築構造用にはSN400シリーズも広く使用されており、降伏比などの追加規定によってより高い安全性が確保されています。
参考)建築|製品情報|JFEスチールJFEスチール株式会社

厚板規格の板厚公差と許容差の基準

厚板の板厚公差はJIS G3193によって厳格に規定されており、板厚と幅の組み合わせによって異なる許容差が設定されています。 例えば、板厚6.00mm以上6.30mm未満で幅1,600mm未満の場合、許容差は±0.50mmとなります。
参考)http://www.ishiharashouji.jp/pdf/QA-Ver2-C002.pdf

実際の市場では、鋼板の板厚は呼称値よりも薄い傾向にあることが多く、これは製造コストや重量管理の観点から製造されるためです。 ステンレス鋼板では、呼称板厚4.0mmに対して実測値3.83mmといった例もあり、設計段階から板厚公差を考慮した重量計算が必要です。
参考)金属板の板厚許容差 href="https://wakaiss.com/top/cp/technical/page-5263" target="_blank">https://wakaiss.com/top/cp/technical/page-5263amp;#8211; 若井製作所

特にエネルギー分野では、板厚公差マイナスゼロ指定鋼(公称断面寸法を確保するため下限値を小さく規定した鋼板)の需要が高く、協定仕様による厳しい公差管理が行われています。​
厚鋼板の板厚公差(JIS G3193)について - 板厚・母材の幅による詳細な公差表を掲載

厚板規格の用途別サイズと製造範囲

厚板の標準サイズは用途によって異なり、建築・土木用では3×6(914×1,829mm)、4×8(1,219×2,438mm)、5×10(1,524×3,048mm)が主流となっています。 造船用途では、より大型の5×20(1,524×6,096mm)以上のサイズが標準的に使用されます。
参考)https://www.jisf.or.jp/sunpo/html/05.html

各メーカーの製造能力を見ると、日本製鉄は厚さ200mm・幅5,300mm・長さ28,000mm、JFEスチールは厚さ360mm・幅5,350mm・長さ27,000mmまで製造可能です。 板厚が増すほど、製造可能な幅や長さには制約が生じるため、設計時には製造限界を考慮した寸法設定が重要です。
参考)鋼板|東京機材工業株式会社

極厚板(150mm超)の受注に関しては、製造条件や納期について事前の詳細な協議が必要となり、特殊な熱処理や加工が必要な場合もあります。​

厚板規格の選定における建築事業者向けの実務ポイント

建築構造用厚板の選定では、まず使用箇所の荷重条件と溶接の有無を確認することが基本となります。溶接接合を行う場合は、溶接性に優れたSM材やSN材の選定が推奨され、特に耐震性能が求められる建築物ではSN材の採用が増加しています。​
板厚の決定においては、構造計算による必要板厚に加えて、板厚公差のマイナス側を考慮した安全率の確保が不可欠です。 また、建築構造用鋼板では表面に社章と規格記号の全面マーキングが実施されており、品質管理やトレーサビリティの確保に役立っています。
参考)https://www.kobelco.co.jp/products/steel-aluminum/plate/pdf/plate.pdf

意外な情報として、厚板の板厚規格(1.2mm、1.6mm、2.3mm、3.2mmなど)は、かつてのインチサイズをミリメートル単位に変換した名残であり、現在も営々と受け継がれています。 このため、設計時にはこれらの標準板厚を基準とすることで、調達コストや納期の面で有利となります。
参考)厚板 - 厚板プレス工業株式会社

造船や橋梁など大規模構造物向けには、板継を不要とするLP鋼板(長手方向に板厚を直線的に変化させた厚鋼板)など、施工効率を高める特殊な厚板製品も開発されています。 こうした高機能厚鋼板の活用により、建設現場での溶接工数削減や構造物の軽量化が実現できます。
参考)JFEスチール

JFEスチール厚鋼板カタログ - 各種規格材の化学成分と機械的性質の詳細データ