ステンレス鋼板規格
ステンレス鋼板規格の基本知識
📊
JIS規格体系
冷間圧延(G4305)と熱間圧延(G4304)規格の違いを理解
🔧
表面仕上げ種類
No.1からBA仕上げまでの特性と用途を把握
🏗️
建築適用基準
構造・外装・内装での規格選択ポイント
ステンレス鋼板JIS規格体系と分類
ステンレス鋼板の規格は、主にJIS G 4304(熱間圧延)とJIS G 4305(冷間圧延)の2つが基本となります。これらの規格は建築業界での材料選択において極めて重要な指標です。
JIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)
- 65種類の鋼種を規定
- オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系に分類
- 建築用途では表面仕上げの良さから最も多用される規格
JIS G 4304(熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)
- 65種類の鋼種を規定
- 厚板製品(6mm以上)で主に採用
- 化学プラント、大型構造物に適用
建築現場では、薄板(3mm未満)は冷間圧延品、厚板(6mm以上)は熱間圧延品が一般的に使用されます。中板(3-6mm未満)は用途に応じて選択されます。
鋼種分類の特徴
- オーステナイト系:36規格材質(SUS304、SUS316など)
- フェライト系:15規格材質(SUS430など)
- マルテンサイト系:6規格材質(硬度重視)
- 析出硬化系:2規格材質(高強度用途)
ステンレス鋼板表面仕上げ種類と建築用途
表面仕上げは建築の美観と機能性を決める重要な要素です。各仕上げには特有の特性と適用場面があります。
基本仕上げの種類
- No.1:銀白色で光沢なし、コスト重視の構造材
- 2B:やや光沢のある一般的仕上げ、市販品の大部分
- BA:光沢のある仕上げ、自動車・家電部品向け
- HL(ヘアライン):連続した研磨目、建材の最も一般的な仕上げ
建築用途別の最適選択
- 外装材:HL仕上げが最も多用、耐候性と美観のバランス良好
- 内装材:2B仕上げが基本、コストパフォーマンス重視
- 装飾用:No.7、No.8(鏡面)で高級感演出
- 構造材:No.1仕上げで十分、表面光沢不要な部位
建築現場では、表面粗さ(Ra値)と光沢度も重要な選定基準となります。特に外装材では、清掃性と汚れの付着しにくさを考慮した仕上げ選択が求められます。
ステンレス鋼板材質記号と成分特性
建築用ステンレス鋼板の材質記号には、性能を示す重要な情報が含まれています。SUS(Steel Use Stainless)記号の理解は、適切な材料選択に不可欠です。
主要材質記号と特性
- SUS304:最も汎用的、優れた耐食性と加工性
- SUS316:モリブデン添加、海岸地域での高耐食性
- SUS430:フェライト系、磁性あり、コスト優位
- SUS301:高強度、ばね特性良好
調質記号の意味
- 1/4H、1/2H、3/4H、H:冷間加工による硬化度を表示
- 数字が大きいほど硬度・強度が向上
- 建築用では一般的にアニール材(O材)を使用
建築現場での材質選択ポイント
- 海岸地域:SUS316またはSUS316L推奨
- 一般地域:SUS304で十分な耐食性
- 磁性が問題となる場合:SUS300系(オーステナイト系)選択
- コスト重視:SUS430(フェライト系)検討
意外な特徴として、SUS430は磁石に付くため、建築現場での材料識別が容易である点が挙げられます。これは現場管理において実用的なメリットとなります。
ステンレス鋼板寸法規格と標準サイズ
建築設計では、標準寸法の理解が材料調達とコスト管理の鍵となります。市場流通サイズと特注サイズの違いを把握することが重要です。
標準板厚(mm)
- 薄板:0.3、0.4、0.5、0.6、0.8、1.0、1.2、1.5
- 中板:2.0、2.5、3.0、4.0、5.0、6.0
- 厚板:8.0、10.0、12.0、15.0、20.0以上
標準板サイズ(mm)
- 1000×2000(基本サイズ)
- 1219×2438(4×8尺サイズ)
- 1524×3048(5×10尺サイズ)
重量計算の実務
SUS304の比重7.93を用いた重量計算例:
- 1.0t×1000×2000:15.86kg/枚
- 2.0t×1219×2438:47.4kg/枚
- 3.0t×1524×3048:111.0kg/枚
調達上の注意点
- 縞鋼板は滑り止め効果があるが、重量が約5%増加
- HL仕上げは2Bからの二次加工品のため、納期・コストに影響
- 特殊サイズは最小ロット制約あり
建築現場では、標準サイズを基準とした設計が材料コストを大幅に削減できる隠れたポイントです。
ステンレス鋼板建築構造用途における耐震性能
建築構造材としてのステンレス鋼板は、従来の炭素鋼とは異なる特性を持ち、特に耐震設計において独特の優位性を発揮します。
構造用ステンレスの耐震特性
- 高い延性と靭性による優れた地震エネルギー吸収能力
- 疲労特性の向上により、繰り返し荷重に対する耐久性が良好
- 温度変化による特性変化が小さく、年間通じて安定した性能
建築構造での適用例
- 橋梁と歩道:塩害環境での長期耐久性
- 鉄筋コンクリート支持構造:アルカリ環境での耐食性
- 屋根構造とスペースフレーム:軽量化と強度確保の両立
- 階段と手すりの支柱:安全性と美観の両立
耐震設計における設計係数
従来の構造用鋼材と比較して、ステンレス鋼の特徴的な応力-ひずみ曲線を考慮した設計が必要です。特に、明確な降伏点を持たないため、0.2%耐力を設計基準強度として採用します。arxiv
コスト対効果の評価
初期コストは炭素鋼の3-5倍ですが、以下の要因でライフサイクルコストは優位。
- メンテナンス周期の延長(約3-5倍)
- 塗装工程の省略
- 解体時のリサイクル価値
建築構造用途では、特に沿岸部や工業地域において、ステンレス鋼板の採用が長期的な経済性をもたらす意外な事実があります。