

ベアリングはめあい公差を決める最初の分岐は、「荷重の性質(回転荷重/静止荷重/方向不定)」です。内輪回転荷重・外輪静止荷重のように、荷重方向に対して回転する側の軌道輪には、原則としてしまりばめを与えて相対すべりを防ぎます。
この原則を外すと、はめあい面にすきまが出た瞬間に、微小な繰返しすべり(フレッチング)や円周方向の有害な滑り(クリープ)が起点になり、摩耗・振動・異常発熱へ連鎖しやすくなります。これは「内輪回転荷重で、荷重・粗さ・温度でしめしろが減少し、すきまが生じるとクリープが発生しやすい」という説明が典型です。
実務では「回転荷重=必ず強い圧入」と短絡しがちですが、負荷の大きさや衝撃の有無でも適正域が動きます。重荷重になるとしめしろが減少しやすく、軽荷重より“かたい”はめあいが必要になるという整理もあり、荷重条件は公差選定の前提です。
一方で、しまりばめを強くしすぎると別の事故モードに移ります。過大なしまりばめで内輪に応力集中が起きると、内輪割れが発生しやすいこと、さらに内輪膨張で内部すきまが減って異常発熱につながる可能性があることは、設計レビューで必ず共有したい論点です。
箇条書きで、現場で判断に使える「荷重→はめあい」の目安を置きます。
参考(荷重の性質とはめあい、温度影響、最大応力の考え方まで一連で確認できる)。
はめあい選定の考慮項目と、荷重条件別の推奨はめあい記号がまとまっています。
https://koyo.jtekt.co.jp/support/bearing-knowledge/9-3000.html
ベアリングはめあい公差で“怖い”のは、図面上は成立していても、運転で有効しめしろが減って「すきまばめ化」し、クリープが発生するケースです。クリープは、少ないしめしろで取り付けられた軌道輪が、荷重を受けながら回転することで、はめあい面に円周方向の滑りが出る現象として整理されています。
特に内輪回転荷重では、内輪と軸の間にすきま(c)ができると、内輪側の円周長さが軸側より長くなり、結果として回転に対して遅れが生まれて相対移動する、という説明は、現象理解に役立ちます。
ここで大事なのは「すきまが発生する理由」が1つではない点です。運転中にしめしろが減少する要因として、少なくとも次が挙げられています。
つまり、図面上は「しまりばめ」でも、運転すると「すきまばめ」へ落ちる可能性がある、というのが設計の落とし穴です。ここを押さえると、はめあい公差の議論が“公差記号の丸暗記”から、“運転状態の見積り”へ進みます。
また、フレッチングは「二面間の相対的繰り返し微小滑りによる摩耗」と説明されており、クリープより軽く見られがちですが、最終的には摩耗→すきま増加→さらに滑りが増える、という悪循環の起点になりやすいので、初期の兆候(赤錆粉、当たり面の光沢変化)を保全と共有しておくと安全です。
参考(クリープ・フレッチング、しめしろ減少の理由、内部すきまの考え方までまとまっている)。
https://www.nsk.com/jp-ja/tools-resources/abc-bearings/fits-and-internal-clearance/
ベアリングはめあい公差で、設計者が見落としやすいのが「温度分布」で、これは単純に“熱膨張する”で終わりません。一般に、軸受が荷重を受けて回転すると内輪温度は軸より高くなり、熱膨張で内輪と軸の有効しめしろが減少する、と整理されています。
つまり「冷間で適正」でも「温間でゆるい」側へ動くことがあるので、稼働温度(周囲温度だけでなく、内輪・外輪・ハウジングの温度差)を前提条件として置く必要があります。
さらに厄介なのは外輪側で、外輪とハウジングの間では温度差や膨張係数の差によって、逆にしめしろが増大することがある、とされています。ここは建築設備系(ファン、搬送、ポンプ、ローラ)でも起きやすく、ハウジング材質(鋼、鋳鉄、アルミ鋳物など)や肉厚で挙動が変わるため、現物条件のヒアリングが重要です。
「軸の熱膨張を外輪とハウジングのはめあい面の滑りで逃がす」ような構想をとる場合、温度でしめしろが増えると“逃げ”が効かなくなる可能性があるので注意が必要、という指摘も実務的です。
温度要因の対策を、設計・製造・保全で分解すると整理しやすくなります。
温度での設計ミスは、運転開始後しばらくして症状が出るため、初期不良と経時劣化が混同されやすいのもポイントです。図面だけでなく「実際の温度差がどれくらい出る装置か」を工程・現場に確認するのが、はめあい公差の精度を一段上げます。
ベアリングはめあい公差は、寸法だけでなく表面粗さの影響も受けます。はめあい面の塑性変形を考慮すると、はめあい後の有効しめしろは仕上げ(粗さ)によって影響を受ける、という整理があり、実務では「圧入したら思ったより入った/ゆるんだ」を説明する根拠になります。
特に、粗い軸表面に対して、なめらかな内輪がしまりばめで固定されると、軸表面の凸部が変形しやすく、その結果しめしろが減少する、という考え方は、加工品質と軸受トラブルが直結していることを示します。
この論点は、建築設備の現場で起きがちな「現地旋盤」「簡易研磨」「再使用シャフト」などの条件で効いてきます。寸法公差が図面通りでも、面が荒れていると“有効しめしろ”が設計値より小さくなり、運転後にクリープ・フレッチングへ繋がる可能性があります。
逆に言えば、寸法公差の議論だけで対策しようとせず、粗さ・真円度・当たりの均一性をセットで管理すると、過剰にしめしろを増やさずに安定させられます。これは内輪割れリスク(締めすぎ)も同時に下げられるので、トータルで安全です。
現場で使えるチェック項目を、入れ子なしで置きます。
「寸法は合っているのに壊れる」系のトラブルは、粗さ・塑性変形・温度の組合せで説明できることが多いので、品質記録(測定値)と故障解析(当たり痕、変色、摩耗粉)を結びつけると再発防止が進みます。
ベアリングはめあい公差は“固定の話”で終わらず、内部すきま(初期すきま→残留すきま→有効すきま)と寿命に直結します。しまりばめで軌道輪が膨張/収縮するとすきまが減少し、運転中は内外輪の温度差による熱膨張差でもすきまが減少する、という段階整理が示されています。
そして理論的には、有効すきまが「ごくわずかに負」のとき寿命が最長になり、さらに負側に入ると寿命が急激に減少する、という関係が説明されています。ここは“意外”に感じる人が多いポイントで、すきまゼロが最善とは限らない、という設計上のクセが出ます。
独自視点として強調したいのは、建築設備でよくある「静かさ(低騒音・低振動)」要求が、内部すきまの選定を小さく寄せがちで、そこにしまりばめ・温度上昇が重なると、負すきま(予圧状態)に落ちやすい点です。低騒音のためにすきまを攻めるほど、はめあい由来のすきま減少が“効きすぎる”リスクが増え、結果として発熱・寿命低下に繋がることがあります。
このため、静音優先の案件ほど「運転時有効すきまが零よりわずかに大きくなるように選定する」という考え方(各種誤差も含めてプラス側に置く)が効きます。設計レビューでは、寸法公差(はめあい)と内部すきま記号(CN、C3等)の両方を同じ紙面で確認し、単独最適ではなく“組合せ最適”で決めるのが安全です。
最後に、仕様決定のときに上司チェックで刺さりやすい「質問(確認事項)」を置きます。
参考(内部すきまの定義、初期すきま/残留すきま/有効すきま、寿命との関係がまとまっている)。
https://www.nsk.com/jp-ja/tools-resources/abc-bearings/fits-and-internal-clearance/