

ベイト工法は、シロアリの生態を利用して巣(コロニー)ごと根絶させる、非常に合理的かつ科学的な駆除および予防の手法です。従来の薬剤を散布するバリア工法とは異なり、遅効性の毒餌(ベイト剤)を働きアリに食べさせ、それを巣に持ち帰らせることで効果を発揮します 。
参考)http://siroari.iinaa.net/kujobeit.html
この工法の核となるのは、薬剤に含まれる「脱皮阻害剤(IGR剤:Insect Growth Regulator)」です。具体的には、ビストリフルロンやヘキサフルムロンといった成分が使用されます 。シロアリは脱皮を繰り返して成長する昆虫ですが、この薬剤を取り込むと新しい外骨格(殻)を形成できなくなり、脱皮のタイミングで死亡します。
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建築従事者として押さえておくべき最大のメリットは、建物の構造に依存せず設置が可能である点です。特に、既存住宅のリフォーム案件や、床下点検口がない建物、あるいは地下室がある物件など、物理的に床下への薬剤散布が不可能なケースにおいて、ベイト工法は唯一の確実な解決策となり得ます 。また、薬剤を空中に散布しないため、施工中の臭気が全くなく、居住者が在宅のままでも安全に施工を進めることができる点も、施主への提案における大きな強みとなります 。
参考)ベイト工法ならシロアリをまるっと撃退できる!ベイト剤の特徴と…
公益社団法人 日本しろあり対策協会:防除施工標準仕様書(ベイト工法の定義と手順について詳述されています)
施主へ提案する際、最もネックになりやすいのが費用の問題です。ベイト工法は、高度な管理と定期的なモニタリングが必要となるため、一般的なバリア工法と比較してコストが高くなる傾向があります。ここでは、建築のプロとして説明できるように、具体的なコスト構造と施工特性の違いを整理します。
バリア工法は、一度の施工で薬剤を散布し、約5年間の保証期間中はメンテナンスフリーであることが一般的です。一方、ベイト工法は「管理型」の手法であり、初期導入費(イニシャルコスト)に加えて、年間の管理費(ランニングコスト)が発生する場合が大半です 。
参考)【プロが監修】バリア工法とベイト工法を徹底比較|シロアリ駆除…
| 比較項目 | ベイト工法(管理型) | バリア工法(薬剤散布) |
|---|---|---|
| 初期費用目安 | 15万円〜(外周長による) | 10万円〜(床面積による) |
| 坪単価(目安) | 費用算出は外周m単価が主 | 4,000円〜8,000円/坪 |
| 維持管理費 | 年間3〜5万円程度が必要 | 基本的になし(5年後再施工) |
| 施工場所 | 建物外周の土壌またはコンクリート | 床下木部および土壌 |
| 建物への影響 | 穿孔不要(土壌の場合)で無傷 | 木部穿孔や床下進入が必要 |
| 即効性 | なし(数ヶ月かかる) | あり(接触直後に死亡) |
※費用は一般的な戸建て住宅(30坪程度)を想定した概算であり、業者や使用するステーション(器材)によって大きく変動します 。
参考)シロアリ駆除の費用や相場の仕組みをプロが徹底解説!|シロアリ…
特に注意が必要なのは、バリア工法が「平米(坪)単価」で計算されるのに対し、ベイト工法は「外周の長さ(メートル)」や「ステーションの設置個数」で見積もりが決まる点です 。したがって、建物の面積が小さくても、形状が複雑で外周が長い建物の場合、割高になる可能性があります。
また、施工面での違いも重要です。バリア工法では床下に作業員が潜る必要があるため、配管や配線の損傷リスクがゼロではありませんが、ベイト工法は屋外作業が中心となるため、建物内部の設備を傷つけるリスクは極めて低いです 。一方で、犬走り(建物周囲の通路)が全面コンクリートで覆われている場合は、コアドリルを用いてコンクリートに穴を開けてステーションを埋設する必要があり、このハツリ工事費が追加で発生することも見積もり作成時に考慮すべきポイントです 。
参考)狭山市のシロアリ駆除業者4選!ベイト工法とバリア工法の違いも…
近年、健康志向の高まりやペットブームにより、施主から「化学物質過敏症」や「ペットへの安全性」に関する質問を受ける機会が増えています。この点において、ベイト工法はバリア工法よりも圧倒的に推奨しやすい工法です。
前述の通り、使用される薬剤(脱皮阻害剤)は、昆虫特有の「脱皮」という生理現象に作用するものです。人間や犬、猫などの哺乳類は脱皮を行わないため、万が一薬剤に触れたり、誤って微量を摂取してしまったとしても、生理的な影響は極めて低いとされています 。毒性試験においても、普通物(劇物や毒物に該当しない)として扱われるレベルの安全性が確認されています。
ただし、いくら安全といっても「殺虫剤」であることに変わりはありません。建築従事者としては、「絶対に安全」と言い切るのではなく、「哺乳類には作用しにくいメカニズムであり、容器に封入されているため曝露リスクが極限まで低い」という論理的な説明が求められます。特に、井戸水を使用している現場や、池で鯉などを飼育している現場では、土壌処理剤の流入事故が懸念されますが、ベイト工法であれば薬剤が土壌に溶け出すリスクも極めて低いため、水質汚染を気にする施主に対しても強力な解決策となります 。
参考)新築のシロアリ対策は必須!工法の種類や保証期間を徹底解説!
住化エンバイロメンタルサイエンス:日本しろあり対策協会認定のベイト工法に関する技術資料(認定番号や製品詳細)
ここからは、一般的なウェブ検索ではあまり語られない、建築現場の施工管理や設計視点での「独自の採用基準」について解説します。特に、近年の高気密・高断熱住宅で標準となりつつある「基礎断熱工法」において、ベイト工法は必須の選択肢となりつつあります。
国土交通省の補助事業による調査でも、基礎断熱工法の建物は、従来の床断熱工法の建物と比較して、シロアリ被害のリスクが高いというデータがあります 。これは、基礎の外側または内側に貼り付けられた断熱材自体がシロアリの格好の侵入経路(蟻道)となってしまうためです。シロアリは断熱材の内部を食い進んで土台に到達するため、床下からどれだけ薬剤を散布しても、断熱材の中までは薬剤が届かず、駆除も予防も不完全になりがちです 。
参考)基礎断熱構造のシロアリ被害ケース
また、隣家との境界が極端に狭い狭小地(民地境界まで30cm未満など)では、作業員が入れず、ステーションの埋設も点検もできないため、ベイト工法が採用できないケースがあります 。この「施工不可条件」を事前に把握しておかないと、着工後にトラブルになるため注意が必要です。
参考)【プロが監修】シロアリ駆除のベイト工法|注意すべき7つのデメ…
国土交通省:施工管理・工事監理に関する留意事項集(木造建築における劣化対策の工程管理について言及あり)
ベイト工法を採用する上で、施主に対して最も丁寧に説明し、合意形成を図らなければならないのが、効果が現れるまでの期間と、その後の点検プロセスです。ここを曖昧にすると、「施工したのにまだ羽アリが出た」というクレームに直結します。
ベイト工法は、設置してからシロアリが餌を見つけ、巣に持ち帰り、巣全体に薬剤が蔓延して根絶に至るまで、通常1ヶ月〜3ヶ月、冬場など活動が鈍い時期を含めると半年近くかかることもあります 。この「タイムラグ」は工法の欠点ではなく、巣を全滅させるために必要なプロセスです。施工直後に羽アリが発生した場合でも、それは駆除失敗ではなく「薬剤が効き始めている最中」である可能性が高いことを、事前にアナウンスしておく必要があります 。
もし、施主が「今すぐ目の前の羽アリをどうにかしてほしい」という即効性を求めている場合は、ベイト工法単独ではなく、部分的な薬剤処理(穿孔注入など)を併用するハイブリッドな提案も視野に入れるべきです。建築のプロとして、工法の特性(時間軸)と施主のニーズ(心理的安心)のギャップを埋める説明能力が問われます。
シロアリ110番:ベイト工法の注意点とデメリットの詳細(期間や点検頻度に関するリスク説明の参考に)

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