引きバネ規格の基本から寸法公差まで完全解説

引きバネ規格の基本から寸法公差まで完全解説

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引きバネ規格の基礎知識

引きバネ規格の重要ポイント
📏
JIS規格による標準化

JIS B 2704-2による仕様表示で品質統一

⚙️
寸法公差の重要性

ばね指数による3段階の公差区分システム

🔧
材料選定の基準

用途に応じたステンレス・硬鋼線の使い分け

引きバネ規格の概要とJIS規格

引きバネの規格は、JIS B 2704-2「コイルばね-第2部:仕様の表し方」とJSMA規格(日本ばね工業会規格)によって詳細に規定されています。これらの規格は、引きバネの品質統一と互換性確保を目的として策定されており、建築業界でも広く活用されています。
JIS規格では、引きバネの寸法や特性に関する表示方法が明確に定められており、線径、外径、自由長などの基本寸法から、ばね定数、荷重特性まで包括的に規定されています。特に建築現場では、このJIS規格に準拠した引きバネを使用することで、安全性と信頼性を確保できます。

引きバネ規格の寸法公差と分類

引きバネの寸法公差は、ばね指数(D/d)によって3つの区分に分類されます。ばね指数とは、コイル平均径Dを材料直径dで割った数値で、この値によって公差の精度が決まります。
ばね指数4以上8以下の場合:

  • 1級:±1.0%(最小値±0.2mm)
  • 2級:±2.0%(最小値±0.5mm)
  • 3級:±3.0%(最小値±0.7mm)

ばね指数8以上15以下の場合:

  • 1級:±1.5%(最小値±0.5mm)
  • 2級:±3.0%(最小値±0.7mm)
  • 3級:±4.0%(最小値±0.8mm)

ばね指数15以上22以下の場合:

  • 1級:±2.0%(最小値±0.6mm)
  • 2級:±4.0%(最小値±0.8mm)
  • 3級:±6.0%(最小値±1.0mm)

公差は、パーセントと最小値の2種類が定められており、比較して絶対値の大きい方が適用されます。

引きバネ規格における材料選定基準

引きバネの材料選定は、使用環境と要求性能によって決定されます。主要な材料としては、ステンレス鋼線(SUS304-WPB)と硬鋼線(ピアノ線)があり、それぞれ異なる特性を持っています。
ステンレス鋼線の特徴:

  • 耐食性に優れ、湿気の多い建築環境に適している
  • YSK実用標準ばねでは線径0.2mm~2.0mmで規格化
  • 外径範囲は2.0mm~20.0mmで212種類が標準化

硬鋼線の特徴:

  • 高い弾性と耐久性を持つ
  • コスト効率に優れ、一般建築用途に適している
  • 線径0.3mm~5.0mm、外径3.0~46.0mmで規格化

材料選定時は、標準線径規格を外すと材料入手が困難になったり、コストが上昇するリスクがあるため注意が必要です。例えば、ピアノ線で線径2.0mmの次に太い標準線径は2.3mmであり、中間サイズを指定すると調達に時間がかかる場合があります。

引きバネ規格の荷重特性と公差

引きバネの荷重特性は、初張力の存在により押しばねとは異なる計算が必要です。指定長さでの荷重公差は、初張力のバラツキを考慮した特別な計算式で求められます。
荷重公差の計算式。
±{初張力×初張力のバラツキα+(指定長さの荷重-初張力)×たわみに対する荷重のバラツキβ}
初張力のバラツキα:

  • 1級:0.10
  • 2級:0.15
  • 3級:0.20

有効巻数による荷重バラツキβ:
有効巻数3以上10以下:

  • 1級:0.05、2級:0.10、3級:0.15

有効巻数10を超える場合:

  • 1級:0.04、2級:0.08、3級:0.12

ばね定数の公差も有効巻数によって区分されており、有効巻数が少ないほどバラツキが大きくなる傾向があります。

引きバネ規格品の建築現場での独自活用術

建築現場では、規格品の引きバネを意外な用途で活用する技術があります。特に1m規格品は、現場での緊急対応や特殊用途に重宝されています。
現場での独自活用例:

  • 仮設足場の調整機構としての応用
  • 建築資材の一時固定用張力調整
  • 測量機器のバランス調整装置
  • 建築現場の安全ネット張力維持

1m規格品は密着巻きでフックがないため、現場で自由にカットして必要な長さに調整できます。テンパー処理をしていない生地仕上げのため、フック部分の加工も容易で、建築現場の多様なニーズに対応可能です。
規格品を複数組み合わせることで、特注品と同等の性能を実現する技術も存在します。線径0.3mm~5.0mm、外径3.0~46.0mmの豊富なバリエーションから最適な組み合わせを選択し、コスト削減と納期短縮を同時に実現できます。
このような独自活用により、建築現場では規格品でありながら、現場特有の要求に柔軟に対応する解決策を見出しています。規格の理解を深めることで、標準品の可能性を最大限に引き出すことが可能になるのです。