

ボルトクリッパの「種類」を語るうえで外せないのが刃先形状で、代表的なのはセンターカット(両刃)とクリッパカット(片刃)、さらにアンギュラーカッターの3タイプです。センターカットは刃厚があり強度が高く、硬度が高いボルトや太径の鉄筋・チェーンなど、建築現場で負荷が大きい切断に向いています。クリッパカットは片刃形状で、切断面の片側が比較的平坦になり、壁際や床際など障害物近くの番線・ワイヤをギリギリまで切りたい場面に有利です。アンギュラーカッターは刃先が角度を持ったタイプで、狭所や奥まった位置の鉄線・ボルトを差し込むように挟めるため、配筋後のトラス筋内側や設備金物の奥まった部分にも届きやすいという利点があります。
建築従事者にとっては「万能だからセンターカット一択」となりがちですが、仕上がりと干渉リスクを考えると、化粧仕上げ付近ではクリッパカットの方が後工程の手間が減るケースも少なくありません。また、硬い材料を片刃で無理に切ると刃欠けしやすいため、「硬い材料=センター」「仕上がり重視=クリッパ」という棲み分けを基本にすると、1本のボルトクリッパを無理に酷使するよりトータルコストを抑えやすくなります。askul+1
ボルトクリッパの種類を整理するうえで、刃先と並んで重要なのが「長さ」で、JIS B 4643では300・350・450・600・750・900mmといった呼び寸法が定められています。ハンドルが長くなるほどてこの原理で増幅される力が大きくなり、例えば全長300mmクラスでは切断可能径がおおよそ5mm、900mmクラスでは15mm程度まで対応できる製品もあるなど、サイズによって切断能力に大きな差が出ます。市販品ではJISサイズに加え、片手で扱いやすい200mm・250mmクラスの小型ボルトクリッパ(ミニボルトカッタ)も展開されており、持ち歩きや高所作業で重宝されています。
現場目線で見ると、屋内配管・軽量鉄骨・メッシュ筋が中心の改修工事では350~450mmクラスが取り回しと切断力のバランスが良く、新築の躯体工事や外構で太径チェーンを扱う現場では600~750mmクラス以上を1本用意しておくと安心です。一見すると「長いほど有利」に思えますが、脚立上や配筋の隙間など狭い場所では長さが仇になるため、小型+中型or大型の2本持ちでカバーする運用が実際の建築現場では効率的です。inviting+3
用途で種類を選ぶ際は、「何を」「どこで」「どの頻度で」切るのかを分解して考えると、刃先形状・長さ・替刃構造の組み合わせを決めやすくなります。例えば、番線・メッシュ筋・ワイヤメッシュなどの鉄線が主用途であれば、350~450mmクラスのセンターカットかクリッパカットで十分な場面が多く、鉄筋や太径チェーンが絡む場合は600mm以上のセンターカットを併用すると「力不足で切れない」トラブルを減らせます。
ボルト・アンカー・U字ボルトなどを切る場合は、切断面のバリが後工程の支障になりやすいため、ボルトクリッパだけでなく、切断後にディスクグラインダややすりで面取りする手順を見越しておくことも重要です。また、鉄筋カッター(手動・油圧)やレシプロソーなど別種の切断工具と比較すると、ボルトクリッパは「火花が出ない」「電源が不要」「狭所での扱いやすさ」という強みがある一方、硬度の高い材料や大量切断では負荷が大きくなるため、工程全体で工具を組み合わせる発想を持つと現場の生産性が上がります。mirix+3
建築現場では「刃が欠けたら替える」という扱いになりがちなボルトクリッパですが、実際には刃先の隙間調整ボルトやピボット部のガタ、ハンドルの曲がりなど、目立ちにくい劣化が切断力低下の大きな原因になります。特に雨天時やモルタル粉塵が多い現場では、ピボット部に付着したスラリーや微細な砂粒が摺動部を摩耗させ、刃先の芯が微妙に狂うことで「同じ材料を切っているのに、ある日突然切れなくなった」と感じるケースが起こりがちです。
日常メンテナンスとしては、使用後に刃先の汚れを拭き取り、可動部に軽く潤滑油を差し、隙間調整機構付きのモデルであればメーカー推奨値に合わせて両刃のクリアランスを定期的に点検するだけでも、刃持ちと切れ味は大きく変わります。替刃式ボルトクリッパであれば、刃を交換する際にピボットの偏摩耗や固定ボルトの緩みも併せて確認し、切断能力表に示された最大径を超える材料を無理に切らないことが、結果として工具寿命と作業者の安全を守る最も地味で効果的な対策になります。ktc+3
あまり語られないものの、ボルトクリッパの種類選びと運用は、建築ディテールや仕上げの品質にも意外な影響を与えています。例えば、外構フェンスの現場では、メッシュパネルやチェーンを現場合わせで切断する際にセンターカットで一発切りすると、切断面が大きく潰れて亜鉛メッキ層が剥離しやすくなり、錆の起点を増やしてしまうことがあります。こうした場面では、あえて小さめのボルトクリッパで数回に分けて切る、または片刃のクリッパカットで仕上げ側をできるだけ平滑に保つなど、種類と切り方を組み合わせることで長期耐久性を高めることができます。
内装側でも、軽量鉄骨下地やインサートボルトをボルトクリッパで現場調整する際に、天井ボードや鋼製下地を叩いてしまうと、完成後にクラックやビビり音の原因になることがあります。そこで、狭所にはアンギュラーカッターや小型ボルトクリッパを使い、ハンドルを大きく振り回さなくても切れる位置取りを工夫することで、仕上げを守りながら短時間で加工を終えることが可能になります。このように、ボルトクリッパの種類選びを「切れるかどうか」だけでなく、「仕上げの寿命と品質をどう守るか」という視点で捉え直すと、同じ工具でも現場全体のクオリティコントロールに貢献できるようになります。electrictoolboy+2
ボルトクリッパの規格やサイズ区分、選び方の基本を整理した解説です。
ボルトクリッパーとは?使い方や選び方、使用時の注意点を解説
JIS B 4643に基づくボルトクリッパの呼び寸法や表示方法の詳細が確認できます。
JISB4643:1995 ボルトクリッパ
建築からDIYまでを含めたボルトクリッパの選び方とおすすめサイズの解説です。