

電気工事業法(正式には「電気工事業の業務の適正化に関する法律」)では、「電気工事」を一般用電気工作物または自家用電気工作物を設置・変更する工事としつつ、電気工事士法施行令で定める「軽微な工事」などは除外されます。
このため、建築現場で「配線を少し触るだけ」「器具を付け替えるだけ」と見えても、軽微に当たるかは別問題で、発注範囲や作業内容の整理が重要になります。
電気工事業者の区分は、ざっくり言うと「登録電気工事業者」「通知電気工事業者」「みなし登録電気工事業者」「みなし通知電気工事業者」といった類型に分かれます。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/files/kouzi-gyo-QA201803.pdf
特に建築系の会社は、建設業許可を持つことで「みなし登録」「みなし通知」側の手続きになる場面があるため、“登録不要=何もしなくてよい”と誤解しないことが肝心です。
また、電気工事業の手続きの所管は、営業所が1都道府県内なら原則として都道府県、複数都道府県なら国(経済産業省側)という整理が示されています。
営業所の追加・廃止・移転があると、建設業許可と電気工事業法の手続き先が一致しないことも起きるため、総務・工務・現場の情報連携が事故予防になります。
参考:手続き・業者区分・よくある誤解(単発受注、更新失効、標識、帳簿電子化等)がQ&A形式でまとまっています。
電気工事業の登録等をせずに電気工事業を営んだ場合、罰則が明記されており、例えば登録を受けずに営んだ者は「1年以下の懲役(※資料では懲役表記)または10万円以下の罰金(併科あり)」とされています。
一方で、届出を行わずに営んだ者、通知を行わずに営んだ者については、それぞれ「2万円以下の罰金」と整理されています。
現場で現実に怖いのは「うっかり届出・通知漏れ」のように、工事品質は真面目でも書類・体制面で違反に寄ってしまう点です。
手続きは一度やれば終わりではなく、更新忘れで登録が失効し、新規登録が必要になるケースも明示されています。
さらに、軽視されがちですが、工事の“技術”だけでなく“体制”も見られます。
例として、営業所で一般用電気工事の業務を行う場合には「主任電気工事士」を設置する必要がある旨や、その要件(第一種または第二種+実務経験など)が示されています。
実務での予防策としては、次のような「罰則に直結しやすい管理項目」を、月次で棚卸しすると効果が高いです。
「今回だけの単発だから登録はいらないはず」と考えたくなる局面がありますが、Q&Aでは、他者から依頼を受けて自ら電気工事の全部または一部の施工を“反復・継続”する場合(有償・無償を問わない)に登録が必要という整理が示されています。
そして、単発であることが確実でない限り、保安確保の観点から登録を求める方向で案内されています。
建築現場の実態に当てはめると、例えば「設備工事のついでに電源を触る」「改修案件が増えてきた」など、最初は単発でも“営業として受ける状態”に自然に移行しがちです。
その移行点を言語化できずに走ってしまうと、後から見れば反復継続と判断される余地が出て、法務・総務が苦しくなります。
意外に見落としやすいのが、“販売に付随する工事”の扱いです。
家電販売に付随して認められる範囲は局部的な工事に限られ、幹線に係る工事、分岐回路の増設、容量変更等を伴う工事、屋側配線・屋外配線に係る工事は含まれないと明示されています。
また、販売に付随する工事を委託する場合、受託側は登録が必要になると示されています。
ここは元請・下請・協力会社の関係が絡むと、責任分界が曖昧になりやすいので、契約書や注文書の段階で「施工主体は誰か」「登録等は誰が満たすか」を文字で残すのが安全です。
登録の有効期間について、Q&Aでは「満了の日の翌日から起算する」という考え方が例示されており、カウントの仕方を誤ると更新手続きのタイミングを外しやすい点が注意事項になります。
さらに、更新手続きを忘れて有効期限が過ぎた場合、1日でも失念していたら登録が失効し、新規登録が必要になる旨が明記されています。
この“失効”は、現場にとっては稼働停止級のダメージになり得ます。
なぜなら、失効期間中に受注・施工を続けると、結果として「登録等を受けないで電気工事業を営んだ」状態に近づき、罰則リスクの土台を自ら作ってしまうからです。
更新トラブルを防ぐには、次のような運用が効きます(意味のない形式化ではなく、現場の止血のための実務です)。
検索上位で語られがちな“無登録”だけでなく、現場の管理品質を左右するのが「標識」と「帳簿」の運用です。
Q&Aでは、標識の大きさについて登録電気工事業者・みなし登録電気工事業者は縦35cm以上・横40cm以上が規定されている一方、通知系も同程度が望ましいとされています。
さらに、帳簿は電子媒体でも、立入検査等で求められたときに直ちに表示・開示できる状態で保存していれば差し支えない、ただし5年間保存が必要と示されています。
ここは「紙か電子か」より、「検査時にすぐ出るか」が本質で、ファイル名の命名規則・権限設計・バックアップまで含めて“監査対応できる電子化”が重要になります。
独自視点として、建築会社・サブコンで効くのは「電気工事業法の遵守を、協力会社管理のスコアに組み込む」運用です。
こうした“書類の整流化”は、単に違反回避のためだけではありません。
万一の事故・クレーム時に、誰がどの権限でどの手順を踏んだかを説明でき、元請・発注者側の損害拡大を抑える現実的な防波堤になります。