

電気工作物とは、電気事業法第2条で定義される用語で、発電、蓄電、変電、送電、配電または電気の使用のために設置する機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路その他の工作物を指します。具体的には、発電所、変電所、屋内配線、受電設備などの電気供給に必要な設備の総称です。不動産従事者にとって重要なのは、管理する建物の電気設備がどの分類に該当するかを理解することです。
参考)https://www.shiken.or.jp/shiken/qualification/
電気工作物には、電気と直接関連のある機械や発電所だけでなく、電気を供給するための水路や管路も含まれます。ただし、政令により船舶、車両、航空機に設置されるもの、および電圧30ボルト未満の電気的設備(30ボルト以上の設備と接続されているものを除く)は除外されます。この定義は電気工事の適正化を目的として制定された電気事業法において公式に規定されています。
参考)https://www.safety-kinki.meti.go.jp/electric/jikayou/jikayoudennkikousakubutu.html
電気工作物は大きく「一般用電気工作物」と「事業用電気工作物」の2種類に分類され、事業用電気工作物はさらに「電気事業用電気工作物」と「自家用電気工作物」に細分化されます。この分類体系は、設備の規模、受電電圧、用途によって決定され、それぞれに異なる保安規制が適用されます。
参考)https://www.pref.kanagawa.jp/docs/a2p/denki/denkikousakubutu.html
一般用電気工作物は、主に一般住宅や小規模な店舗など、低圧(電圧600V以下)で受電している施設等に設置される電気工作物を指します。具体的には分電盤や屋内配線などが該当し、他の者から600V以下の電圧で受電し、その受電の場所と同一の構内において電気を使用するための設備です。また、出力20kW未満の太陽電池発電設備や風力発電設備などの小型出力発電設備も一般用電気工作物に含まれます。
参考)https://fujii-katsu.net/archives/769
事業用電気工作物は、一般用電気工作物以外の電気工作物を指し、電力会社が使用する大規模な変電所や発電所などが該当します。自家用電気工作物は事業用電気工作物のうち、電気事業用以外のもので、例えば工場やビルなどの高圧以上の電圧で受電している事業場等の電気工作物(需要設備等)を指します。
参考)https://www.systems.nakashima.co.jp/setsubi/takumi/densyou/column/categoires/knowledge/denki9/
一般財団法人電気技術者試験センター:電気工作物の概要
電気工作物の定義と分類について、資格制度との関連も含めて詳しく解説されています。
電気工作物の分類を決定する最も重要な要素の一つが受電電圧です。一般用電気工作物は600V以下の低圧で受電する設備であるのに対し、自家用電気工作物は600Vを超える電圧(高圧または特別高圧)で受電するものが該当します。
低圧は一般用電気工作物または小規模事業用電気工作物に分類され、家庭用コンセントの交流100Vや、エアコンなどで使用される交流200Vがこれに該当します。一方、大規模マンション、ビル、オフィス、工場などは高圧以上で受電するため、自家用電気工作物として扱われ、より厳格な保安規制の対象となります。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/tebiki_term.html
不動産管理の現場では、この受電電圧の違いによって必要な手続きや管理体制が大きく変わります。例えば、小規模な店舗や住宅は一般用電気工作物として比較的シンプルな管理で済みますが、高圧受電のビルや工場では電気主任技術者の選任や保安規程の届出など、複雑な保安体制の構築が必要になります。
参考)https://www.safety-kinki.meti.go.jp/electric/jikayou/hoankitei.html
令和5年3月20日の電気事業法改正により、従来の「小出力発電設備」が「小規模発電設備」に名称変更され、新たに「小規模事業用電気工作物」という区分が創設されました。この新区分は、出力10kW以上50kW未満の太陽電池発電設備と出力20kW未満の風力発電設備が対象となります。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2022/10/20221003.html
小規模事業用電気工作物は自家用電気工作物として扱われ、技術基準適合維持義務、基礎情報の届出、使用前自己確認の届出という3つの新しい制度の対象となりました。これにより、これまで一般用電気工作物として扱われていた一部の太陽光発電設備や風力発電設備に対して、より厳格な保安管理が求められるようになっています。
参考)https://denken.joho.info/hoki/denken3-shokibojigyoyodenkikosakubutsu/
不動産業界においても、屋上に設置する太陽光発電設備の出力が10kW以上50kW未満の場合、小規模事業用電気工作物として届出が必要になるため、注意が必要です。設置者には、使用開始前に設置者の氏名・住所、原動力の種類・出力等を記載した書類を経済産業大臣に届け出る義務が課されています。
参考)https://www.eei.or.jp/view.php?UID=494amp;file=file3amp;type=update
小規模発電設備等保安力向上総合支援事業
小規模事業用電気工作物の新制度に関する詳細情報と届出方法について、専用サイトで確認できます。
自家用電気工作物を設置する者は、電気事業法第43条により、電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、電気主任技術者を選任し、届け出る義務があります。電気主任技術者は、事業用電気工作物の保安の監督を行う国家資格者であり、その配置は法律で義務付けられています。
参考)https://www.jeea-kanto.com/seminar-movie/pdf_r3/R3fy_00.pdf
電気主任技術者の選任は、自家用電気工作物の使用開始前に行わなければならず、所轄の産業保安監督部に届け出る必要があります。選任方法には、自社で電気主任技術者を雇用する「専任」と、外部の保安管理業務を行う法人に委託する「外部委託」の2つがあります。
参考)https://www.rn-j.com/business/om/denken/denken-sennin-gaibu/
一方、一般用電気工作物については電気主任技術者の選任義務はありませんが、電気工事を行う際には電気工事士の資格が必要です。不動産管理会社が自社管理物件のコンセントやスイッチ交換を行う場合でも、第二種電気工事士の資格が必要であり、さらに事業として継続的に行う場合は電気工事業の登録も必要になります。
参考)https://sora-ie.jp/remodeling/qualification-of-electrician/
電気事業法第39条では、事業用電気工作物の設置者に対して、経済産業省令で定める技術基準に適合するように電気工作物を維持する義務を課しています。この技術基準適合維持義務は、電気工作物の安全性を確保し、公共の安全と環境保全を図るための基本的な義務です。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/setsubi_hoan.html
主な技術基準としては、①電気設備に関する技術基準、②発電用火力設備に関する技術基準、③発電用風力設備に関する技術基準、④発電用水力設備に関する技術基準が定められています。これらの基準は、電気工作物の構造、機能、性能に関する詳細な要件を規定しており、設置者はこれらを遵守する責任があります。
参考)https://www.safety-shikoku.meti.go.jp/03_electric/jikayou_denki/tebiki/tebiki.pdf
令和5年3月の制度改正により、小規模事業用電気工作物も技術基準適合維持義務の対象となりました。これにより、出力10kW以上50kW未満の太陽電池発電設備と20kW未満の風力発電設備についても、設置者は技術基準への適合を維持する義務を負うことになり、不動産管理においても該当設備の保安管理がより重要になっています。
参考)https://www.safety-chubu.meti.go.jp/denryoku/syoukibo/index.html
電気事業法第42条に基づき、自家用電気工作物を設置する者は、保安規程を定め、自家用電気工作物の使用開始前(使用前自主検査を伴う場合はその工事の開始前)に届け出なければなりません。保安規程は、電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の確保を目的として、電気主任技術者を中心とする保安管理組織や保安業務の分掌、指揮命令系統などを定めるものです。
参考)https://store.denki.or.jp/products/%E8%87%AA%E5%AE%B6%E7%94%A8%E9%9B%BB%E6%B0%97%E5%B7%A5%E4%BD%9C%E7%89%A9%E4%BF%9D%E5%AE%89%E7%AE%A1%E7%90%86%E8%A6%8F%E7%A8%8B
保安規程には、電気工作物に係る保安教育、電気工作物の工事・維持・運用に関する業務、保安のための巡視・点検・検査の実施方法、異常時の措置などを具体的に記載する必要があります。また、保安規程を変更した場合は、遅滞なく変更した事項を電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長に届け出なければなりません。
参考)https://e-sysnet.com/%E4%BF%9D%E5%AE%89%E8%A6%8F%E5%AE%9A/
保安規程の策定にあたっては、「自家用電気工作物保安管理規程(JEAC8021-2023)」が参考となります。この民間規格は、高圧または低圧の自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関し、設置者、電気主任技術者、保安管理業務受託者等が保安管理の適切性を確認できる要件を詳細に規定しています。
経済産業省:電気工作物の保安
電気工作物の保安に関する各種手続きや技術基準について、経済産業省の公式情報が確認できます。
不動産管理の現場で電気工作物の種類を正しく判断するには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。まず最も重要なのは受電電圧で、600V以下の低圧受電であれば一般用電気工作物、600Vを超える高圧または特別高圧受電であれば自家用電気工作物となります。
次に考慮すべきは、構内の電気工作物が構外の電気工作物と電気的に接続されているかどうかです。600V以下で受電していても、構外にわたる電線路を有する場合は自家用電気工作物として扱われます。また、受電設備容量が500kW以上の需要設備も自家用電気工作物に該当します。
太陽光発電設備や風力発電設備を有する建物の場合、その出力にも注意が必要です。出力20kW未満の太陽電池発電設備(ただし10kW以上は小規模事業用)、出力20kW未満の風力発電設備、出力10kW未満の水力発電設備などは特定の条件下で一般用電気工作物として扱われますが、これを超える出力の場合は事業用電気工作物として届出や保安体制の整備が必要になります。
電気工作物の種類によって、管理コストは大きく異なります。一般用電気工作物の場合、電気主任技術者の選任や保安規程の届出が不要なため、管理コストは比較的低く抑えられます。一方、自家用電気工作物では、電気主任技術者の選任、保安規程の届出、定期的な点検や検査など、多くの保安管理業務が発生し、それに伴うコストも増大します。
コスト最適化の一つの方法として、電気主任技術者の外部委託制度の活用があります。自社で電気主任技術者を雇用する代わりに、保安管理業務を専門の法人に委託することで、人件費を変動費化し、専門的な保安管理を確保できます。ただし、外部委託を行う場合でも、設置者としての責任は残り、保安規程の遵守義務は継続します。
また、受電電圧の見直しによるコスト削減も検討の余地があります。例えば、電力使用量が減少した建物で高圧受電を継続している場合、低圧受電に切り替えることで、自家用電気工作物から一般用電気工作物へと分類が変わり、保安管理費用を大幅に削減できる可能性があります。ただし、電力基本料金や使用料金とのバランスを考慮した総合的な判断が必要です。
参考)https://solar-frontier.com/jpn/blog/pages/electricity-business-law/
不動産取引において、電気工作物の種類は重要な確認事項です。特に商業ビルや工場など自家用電気工作物を有する物件を取引する際には、電気主任技術者の選任状況、保安規程の届出状況、定期点検の実施記録などを詳細に確認する必要があります。これらの法定義務が適切に履行されていない場合、購入後に追加の費用や手続きが発生する可能性があります。
また、太陽光発電設備を有する物件では、その出力と設置時期を確認し、小規模事業用電気工作物に該当するかどうかを判断することが重要です。令和5年3月以降に設置された10kW以上50kW未満の太陽光発電設備は、基礎情報の届出と使用前自己確認の届出が義務付けられているため、これらの手続きが完了しているかを確認する必要があります。
参考)https://shoushutsuryoku-saiene-hoan.go.jp
さらに、電気工作物の種類変更を伴うリノベーションやテナント変更の計画がある場合、事前に電気設備の容量や受電方式の変更可能性を検討しておくことが望ましいです。一般用電気工作物から自家用電気工作物への変更は、保安体制の整備に時間とコストがかかるため、取引価格や引き渡し時期に影響を与える可能性があります。
参考)https://www.safety-kanto.meti.go.jp/electric/jikayou/e_jikayou01.html

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