電気めっき原理と仕組み建築業における防食効果

電気めっき原理と仕組み建築業における防食効果

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電気めっき原理と仕組み

電気めっきの基本構造
電気エネルギーによる金属皮膜形成

めっき液中で直流電流を流し、陰極表面に金属イオンを還元して皮膜を成長させる技術

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陽極と陰極の電気化学反応

陽極では酸化反応で金属が溶解し、陰極では還元反応で金属が析出する仕組み

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建築部材への防食効果

亜鉛めっきによる犠牲防食作用で鉄鋼材料を長期間腐食から保護

電気めっきの原理における陰極反応の仕組み

電気めっきは、めっきしたい金属イオンを含む水溶液中で電気エネルギーを利用して金属皮膜を形成する技術です。基材(めっきをつける製品)を陰極(カソード、マイナス極)、めっきをつけたい金属を陽極(アノード、プラス極)にセットし、めっき液中で直流電流を流します。
参考)電気めっきのメカニズム|めっきの知識|株式会社遠州クロム

陰極では還元反応が起こり、めっき液中の金属イオン〔Mn+〕が電子〔ne-〕を受け取って金属〔M〕として表面に析出します。この還元反応により、陰極(めっきしようとする製品)の表面で金属イオン(金属がめっき液に溶けている状態)が直流電流(電子)によってイオンから電荷を失って金属になり、めっき膜として成長していきます。
参考)電気めっきとは?簡単にわかる「めっきの仕組み」を解説します …

整流器から流れ出る電子によって基材の表面で金属イオンが金属原子に戻り、基材の表面で皮膜を形成するという仕組みです。この電気化学的プロセスが電気めっきの基本原理となっています。
参考)電気めっきの原理と適用 【通販モノタロウ】

電気めっき原理における陽極の酸化反応

陽極では陰極とは逆の酸化反応が起こり、めっき液中に陽極の金属が溶解してめっき液中の金属イオンが補給されます。この陽極の金属がめっき液に溶解する性質から、可溶性電極と呼ばれています。
参考)http://mekki.ishikawa-kumiai.j…

陰極と陽極での反応は同時に起きており、陽極側の金属が溶けてめっき液中に金属イオンを供給し続けることで、めっき処理が継続的に行われます。この二つの反応(陰極での還元反応と陽極での酸化反応)がバランスよく進行することで、安定した電気めっき処理が実現されます。​
めっきしたい金属を陽極にする場合は可溶性電極となりますが、めっき液に溶解しない不溶性電極も使用される場合があります。電気めっきでは基本的に直流で加工を行い、交流を直流に変換する整流器(直流電源装置)が必要となります。
参考)電気めっきに必要な電気設備はどういったものですか?|プレス表…

電気めっき原理と電流密度による成膜速度の制御

電気めっきの成膜速度は流す電流の強さによって制御できます。流す電気が強いと金属皮膜の形成速度は上がりますが、粗い仕上がりとなるため、良質なめっきのためには形成する金属の種類に合わせた電流の設定が重要です。
参考)https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/surface_treatment_technology/st01/c1878.html

ファラデーの法則により、電気を流すとめっきが析出し、流す電気が全て金属イオンを還元する反応に使われる場合、流す電気量=析出するめっきの量となります。単位面積にかかる電流値(電流密度)を計算すれば、電気を流した時間で制御可能です。
参考)電解めっきと無電解めっきの原理

例えば亜鉛めっきの場合、電流密度2A/㎠で1200秒(20分間)電流を流すと、ファラデーの法則により約11.4μmの膜厚が理論上得られます。ただし実際の膜厚は、めっき金属やめっき浴の種類(酸性かアルカリ性か)、電流効率などを考慮する必要があり、理論値と異なる場合があります。
参考)[ブログ] めっき速度 ー ファラデーの法則(亜鉛めっきの場…

電気めっき原理を活用した建築業における防食処理

建築業では鉄鋼材料の防食処理として電気亜鉛めっきが広く使用されています。亜鉛めっき鋼板は鉄に比べ卑な電位を有する金属のため、亜鉛と鉄を接触させた場合に亜鉛のアノード酸化が優先して起こる犠牲防食作用により鉄の酸化を防止します。
参考)無機高分子をベースにした亜鉛系めっき鋼板用クロメートフリー商…

亜鉛は鉄よりイオン化傾向が大きいので、めっき皮膜にピンホールがあっても亜鉛が犠牲となって素地の錆を防ぎ高い防食効果を得ることができます。この犠牲防食作用に加えて、亜鉛の腐食により生成した亜鉛酸化物皮膜によるバリア型防食作用の複合により長期的に高耐食性を示します。
参考)Zn系めっき鋼板の防食技術

電気亜鉛めっきは自動車、OA機器、家電、建築用材など幅広い分野で使用されており、建材用途では屋外使用に適応した高耐食性、耐候性を有する処理として採用されています。国土交通省「公共建築工事標準仕様書」でもクロメートフリー商品の使用が推奨され、環境配慮型の防食処理が求められています。
参考)亜鉛,亜鉛合金めっき技術の動向と課題

電気めっき原理に基づく装置構成と管理のポイント

電気めっき装置は、めっき液を入れるめっき槽、直流電源を供給する整流器、電力を伝達するブスバーやキャプタイヤケーブルなどで構成されます。整流器は交流を直流に変換する装置で、めっきは基本的に直流で加工を行います。
参考)表面処理用直流電源 - - NF千代田エレクトロニクス

ブスバーは一般的に銅帯(銅バー)を意味し、導電性が良く絶縁被覆がないので放熱も良く、大電流化に対応しやすい特徴があります。キャプタイヤケーブルは通電状態のまま移動可能な電線で、導体(銅線など)とその周りを包む絶縁体で構成されています。
参考)https://www.monotaro.com/g/04913033/

めっき液の管理では、成分バランスの維持が重要です。めっき液の組成を適切に調整し、定期的な成分分析を実施する必要があります。また無電解ニッケルめっきの処理温度は一般的に85〜95℃に管理され、この温度域で還元剤が安定して作用し均一な析出が得られます。建築現場で使用する電気めっき部材を選定する際は、これらの管理状態が適切な製品を選ぶことが耐久性確保のポイントとなります。
参考)無電解ニッケルメッキの処理温度は?

電気めっき原理における不具合対策と品質管理手法

電気めっき処理では様々な不具合が発生する可能性があり、適切な対策が必要です。めっきの剥離は主な不具合の一つで、基材表面の洗浄不足や油分・酸化物の残留、めっき液の成分バランス不良、過剰な電流密度や電圧の設定が原因となります。
参考)★ めっきトラブルを未然に防ぐ!代表的な不具合と対処法まとめ…

対策としては、表面洗浄を徹底し異物や油分、酸化物を確実に除去すること、めっき液の組成を適切に調整し定期的な成分分析を実施すること、電流密度・電圧を適正範囲内に管理することが重要です。めっきの仕上がりをよくするには、めっきする製品の金属表面の状態が非常に重要で、製品の表面に少しでも異物があるとその部分はめっきされません。
参考)めっき液の分析・解析・管理について

めっき液の分析・解析・管理については、月に1〜2回機器を用いて分析、解析を行い日常管理の是非を確認することが大切です。建築部材として使用する電気めっき製品では、これらの品質管理が適切に行われていることを確認し、長期的な防食性能を確保することが求められます。めっき不良には変色・腐食、ピンホール、はがれ、クラック、異物付着などがあり、それぞれに適切な対処が必要です。
参考)めっき不良の種類・原因と観察・評価の課題解決

建築業従事者向けの参考情報として、一般社団法人日本溶融亜鉛鍍金協会や各種表面処理技術協会のウェブサイトには、めっき処理の技術情報や品質基準が掲載されており、実務での参考になります。

 

MonotaROの技術情報:電気めっきの原理と適用について詳しく解説されており、めっき処理の基礎知識が得られます
日本表面技術協会:亜鉛および亜鉛合金めっき技術の動向と要求について、学術的な観点から詳細な情報が提供されています