電線路の種類と分類体系

電線路の種類と分類体系

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電線路の種類と分類

電線路の主要分類
🏗️
施設形態による分類

架空電線路・地中電線路・屋側電線路など7つの基本形態

電圧区分による分類

低圧・高圧・特別高圧の3区分による技術基準の違い

🎯
用途による分類

送電線・配電線・引込線などの機能別区分

電線路の種類は、電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)において施設形態に応じて明確に分類されています 。建築業従事者が現場で取り扱う可能性が高い電線路を理解することは、安全な施工と適切な設計において極めて重要です 。
参考)電気設備技術基準・解釈の解説〔その5〕電線路に関する規制

 

電線路の定義は、電技省令第1条第八号に「発電所、変電所、開閉所及びこれらに類する場所並びに電気使用場所相互間の電線(電車線を除く)並びにこれを支持し、又は保蔵する工作物をいう」と規定されています 。

電線路の施設形態による7つの基本分類

電技解釈では、施設の形態に応じて電線路を以下の7つに分類して規制しています :
主要な施設形態 🏗️

  • 架空電線路: 最も一般的な形態で、支持物に電線を張架した方式
  • 地中電線路: 地下に埋設されたケーブルによる電力供給方式
  • 屋側電線路: 建造物の外壁に沿って施設される電線路
  • 屋上電線路: 建造物の屋上に施設される電線路

特殊な施設形態 🌊

  • トンネル内電線路: トンネル内部に専用に施設される電線路
  • 水上電線路: 河川や水面を横断して施設される電線路
  • 水底電線路: 水底に埋設される特殊な地中電線路

これらの基本分類に加えて、特殊なものとして地上に施設する電線路、橋に施設する電線路、電線路専用橋等に施設する電線路、がけに施設する電線路及び屋内に施設する電線路も規定されています(第147条~第151条)。

電線路の電圧区分による種類と技術基準

電圧区分による電線路の分類は、安全規制と施工方法に直接影響する重要な要素です :
参考)埋設で供給をされる特別高圧電線路に利用される電力用ケーブル

 

低圧電線路(600V以下)
低圧電線路は交流600V以下、直流750V以下の電圧で運用される電線路です 。一般住宅や小規模商業施設への配電に使用され、比較的安全性が高い電圧区分とされています。施工においては絶縁電線やケーブルの使用が義務付けられ、裸電線の使用は特定の条件下でのみ許可されています 。
高圧電線路(600V超7,000V以下) 🔌
高圧電線路は交流600V超7,000V以下、直流750V超7,000V以下の範囲で運用されます 。工場や大型商業施設への電力供給に使用され、より厳格な安全基準が適用されます。高圧架空電線路には高圧絶縁電線、特別高圧絶縁電線又はケーブルの使用が規定されています 。
特別高圧電線路(7,000V超) ⚠️
特別高圧は交流7,000Vを超える電圧区分で、最も厳格な安全規制が適用されます 。大規模工場や変電所間の送電に使用され、建築現場では特に注意が必要な電線路です。特別高圧電線路には基本的に裸電線の使用も可能ですが、市街地等への施設には厳しい制限があります 。

電線路の用途による分類と特徴

電線路を用途別に分類すると、送電線と配電線に大別されますが、建築業従事者が理解すべきより詳細な分類があります :
参考)電線の種類|電線の知識|電線館.com

 

送電線路の種類 🗼
送電線路は発電所から変電所間、または変電所間を結ぶ高電圧の電線路です 。鉄塔によって支持される架空送電線が一般的で、27万ボルトから50万ボルトの超高電圧で運用されます。建築工事においては、送電線路との離隔距離の確保が重要な安全要素となります。
参考)送電線と配電線の違いは?

 

送電線路は電圧レベルに応じてさらに細分化され、超高圧送電線(17万V以上)と特別高圧送電線(3.5万V以上17万V未満)に区分されます 。これらの区分により、建造物との接近規制や施設要件が異なります。
参考)架空送電線の分類と規模|架空送電線(がくうそうでんせん)の話…

 

配電線路の種類 🏘️
配電線路は配電変電所から最終消費者まで電力を配る電線路で、電柱によって支持される架空配電線が主流です 。一般的には6,600Vの高圧で配電され、柱上変圧器によって低圧に変換されて各建物に供給されます。
建築現場でよく遭遇するのは低圧配電線で、これには OW電線(屋外用ビニル絶縁電線)が使用されます 。OW電線は耐候性に優れたビニル絶縁体を持ち、電柱間の配電線として広く使用されています。
参考)電線の『種類』について!用途などを解説! - Electri…

 

引込線の種類 🏗️
建築物への電力供給で最も身近なのが引込線です。高圧引込線には PDC電線(高圧引下用架橋ポリエチレン絶縁電線)、PDP電線(高圧引下用EPゴム絶縁電線)、PDE電線(高圧引下用ポリエチレン絶縁電線)が使用されます 。
低圧引込線には DV電線(引込用ビニル絶縁電線)が使用され、600V以下での建物への電力引込みに特化した設計となっています 。DV電線は耐候性と耐久性に優れ、厳しい環境条件下でも安定した性能を発揮します。

架空電線路と地中電線路の比較分析

建築業において重要な判断要素となる架空方式と地中方式の特性を詳しく分析します :
参考)架空配線とは?架空線方式と地中化方式の違いや無電柱化の動向に…

 

架空電線路の特徴 🌤️
架空電線路は工事の簡便性と経済性において優れた特性を持ちます。災害時の被害発見が容易で、復旧作業も地上で行えるため迅速な対応が可能です 。しかし、自然災害や気象条件の影響を受けやすく、特に台風や着雪による断線事故のリスクがあります。
参考)《電力》〈送電〉[R2:問11]架空送電線路と比較した地中送…

 

架空電線路の電線は地表上の高さについて厳格な規定があり、道路横断部では最低5.5m、その他の場所では4.5m以上の高さを確保する必要があります 。これらの規制は建築工事における重機作業時の安全確保において重要な基準となります。
地中電線路の特徴 🌍
地中電線路は景観保全と安全性の面で優れた特性を持ちます。自然災害による外部事故が少なく、都市部の美観を損なわない利点があります 。また、充電部が露出しないため感電や火災の危険性が低く、通信線への誘導障害も軽減されます。
一方で、地中電線路は建設費が架空方式の3~10倍程度高額になり、工期も長期化する傾向があります 。事故発生時の箇所特定が困難で、復旧作業に時間を要するデメリットもあります。また、放熱性の低下により同一断面積での送電容量が制限される技術的課題もあります 。

建築工事における電線路規制と注意事項

建築業従事者が現場で遭遇する電線路関連の規制と安全要件について解説します。電線路との接近・交差における離隔距離の確保は、労働安全衛生上の重要な要素です 。
接近規制の基準 📏
建造物と架空電線路との離隔距離は電圧区分により異なります。低圧架空電線(600V以下)では水平距離1.5m以上、垂直距離2.5m以上の確保が必要です。高圧架空電線(600V超7,000V以下)では水平距離2m以上、垂直距離3m以上の離隔が要求されます 。
特別高圧架空電線路の場合、電圧に応じてより厳格な離隔距離が設定されており、170kV未満では建造物端部から3m以上の水平距離が必要とされています 。これらの基準は建築計画の初期段階から考慮すべき重要な制約条件となります。
参考)https://jesc.gr.jp/jesc-assent/pdf/quotation/jesc_e2010_21a.pdf

 

保安工事の要件 🛡️
架空電線路が建造物と接近・交差する場合、通常の設備より強化した「保安工事」の実施が義務付けられています 。低圧保安工事、高圧保安工事、および特別高圧保安工事(第1種~第3種)が電圧区分と接近状態に応じて適用されます。
建築工事中の安全確保のため、電線の太さや強度についても特別な基準が設けられています。市街地においては低圧電線で直径2.6mm以上、高圧電線で直径4mm以上の電線使用が義務付けられており、これにより切断や垂れ下がりによる事故を防止しています 。