架橋ポリエチレンとポリブデンの違いと配管特性比較

架橋ポリエチレンとポリブデンの違いと配管特性比較

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架橋ポリエチレンとポリブデンの違い

この記事でわかること
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素材と構造の違い

架橋ポリエチレンは超高分子量の網目構造、ポリブデンはポリオレフィン樹脂を使用した配管材です

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価格と性能のバランス

架橋ポリエチレンは高性能で高価、ポリブデンは柔軟性があり経済的という特徴があります

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施工と用途の選定

集合住宅には架橋ポリエチレン、戸建て住宅にはポリブデン管が適している場合が多い

架橋ポリエチレン管の素材と基本特性

 

架橋ポリエチレン管は、超高分子量ポリエチレンを素材とした給水給湯配管材で、白色の外観が特徴です。「架橋」とは、通常のポリエチレンの分子構造を化学的に強く結びつけ、分子同士を橋渡しするような形にして強度を増す技術を指します。この架橋処理により、分子が網目状に結ばれた立体構造となり、耐熱性(95℃)や耐久性が大幅に向上するのです。
参考)https://www.direct-store.net/category/categoryitem/4270

材質がやや硬いことから、集合住宅など多くの人が暮らす場所で性能を十分に発揮できる設計となっており、ポリブデン管よりも価格が高い傾向にあります。架橋ポリエチレン管工業会の性能表によると、脆化温度は-70℃と極めて低温にも耐えられる仕様となっています。
参考)http://denzai-kanzai.com/polybutene-pipe

施工面では、ワンタッチ式の継手に管を差し込むだけで接続でき、パイプカッターで切断できるため、特別な工具を使わずに手早く組み立てられるという利点があります。​

ポリブデン管の素材と基本特性

ポリブデン管は、ポリオレフィン樹脂を素材にした配管材で、クリーム色に黄色味を帯びた外観をしています。超高分子な分子構造を持っており、平均分子量が約120万という非常に大きな特殊な構造が特徴です。
参考)https://www.dandorie.com/c10110104/38_cont_pori.html

コストの面で架橋ポリエチレン管よりも手頃な価格設定となっており、継手も比較的安価です。また、材質が柔らかく扱いやすいため、主に戸建て住宅での使用を見越して開発が進められてきました。可とう性に優れているため、複雑な形状や設置場所にも適応しやすいという特性があります。
参考)https://kenmaga.com/blog/402092.html

施工方法としては、新築の場合にさや管ヘッダー工法、被覆ヘッダー工法、先分岐工法が用いられ、リフォームの場合は線ぴ(モール)を利用した工法が採用されることが一般的です。耐熱性にも優れており、高温環境でも使用できる設計となっています。​

架橋ポリエチレンとポリブデンの性能比較表

両配管材の違いを具体的に比較すると、次のような差異が見られます。​

比較項目 架橋ポリエチレン管 ポリブデン管
素材 超高分子量ポリエチレン ポリオレフィン樹脂
外観の色 白色 クリーム色(黄色味)
硬さ やや硬い やや柔らかい
価格帯 やや高価 やや安価
脆化温度 -70℃ -18℃
融点 流動せず 125℃
主な用途 集合住宅・公営住宅 戸建て住宅・民間住宅

一言で違いを表すと、架橋ポリエチレンの方が少しだけ性能は高いものの、その分ポリブデン管の方が価格は安いという関係になります。​
呼び径が10Aや13Aの場合は両者の内径と外径は同じですが、16Aや20Aとなるとサイズが異なってくるため、施工時には注意が必要です。架橋ポリエチレン用の管には専用の継手を、ポリブデン用の管にはポリブデン専用の継手を使用することが推奨されています。​

架橋ポリエチレンとポリブデンの施工上の注意点

架橋ポリエチレン管はやや硬い性質を持っており、管を曲げると形が定着しやすいという特性があります。施工する際には管の通り道をていねいに準備し、強い力を加えずに取り付けることが大切です。一方、ポリブデン管は柔軟性があるため、時には無理に曲げて設置されがちですが、力を入れて曲げてしまうと、長期間使用しているうちに配管に亀裂が入ったり、壊れたりするリスクがあります。​
両配管材とも直射日光には耐えられず、屋外での配管作業では保護カバーなどの耐候性を持つ材料を使ってしっかりと保護する必要があります。外側を覆うだけでは太陽の光から完全に守ることはできませんので、遮光する工夫も重要です。​
継手接続時には、管端を管軸に対して垂直に切断し、管を真っ直ぐに挿入することが基本です。袋ナット式継手の場合は、レンチ等で締め付けることで管をインコアに圧縮し水密性を保ちます。スライド式継手では、専用工具でスライドリングをスライドさせる方式が採用されています。
参考)http://www.jxpa.gr.jp/manual1.pdf

加熱されたお湯(70℃以上)が流れ続ける配管や、エコキュートヒートポンプと温水タンクをつなぐ配管には、架橋ポリエチレン管やポリブデン管を使用しないでください。このような管材を間違って使うと水漏れを起こすおそれがあります。​

架橋ポリエチレンとポリブデンの共通メリット

架橋ポリエチレン管とポリブデン管には、多くの共通する優れた特性があります。​
両配管材とも軽量で扱いやすく、ワンタッチ式の継手に管を差し込むだけで施工ができ、パイプカッターで切るだけで、特別な工具を使わずに手早く組み立てられます。可とう性にも優れておりパイプが曲げやすく、地震や災害が起きても管が動き、破損しにくい特性があります。​
保温・保冷効果があるので、効率的に温かさや冷たさを保つことができ、熱伝導率鋼管や銅管と比較して非常に小さいため、放熱ロスが少なく済みます。耐薬品性と絶縁性に優れており、酸やアルカリなどに対する耐性や、電気を通しにくい性質も持っているため、金属管のように腐食したり漏電の心配もありません。
参考)https://nippon-pf.co.jp/wp-content/uploads/w_poributen_all.pdf?v=4

内部が滑らかで水垢や湯垢などの汚れが付きにくいため清潔に保たれ衛生的です。使用温度範囲は、メーカーにより少しの違いはあるものの、0℃から95℃までとなっており、ご家庭の給湯器で使う範囲内の温度であれば、問題なく使用できます。一般的な水道や給湯設備では30年~40年ほどの耐久性があることが実証されています。​

架橋ポリエチレン配管の意外な弱点とメンテナンス

架橋ポリエチレン管は優れた性能を持つ一方で、いくつかの弱点も存在します。金属管や硬質塩ビ管などに比べると、強度・耐久性が劣るという側面があります。また、継手やヘッダーに一度接続すると、取り外すことが出来ないという特性があるため、施工ミスがあった場合の修正が困難です。
参考)http://denzai-kanzai.com/crosslinked-polyethylene-pipe

耐候性が無いため、直射日光に当たる場所での使用は避ける必要があり、やむを得ず露出配管する場合は、紫外線劣化防止のため管や被覆材を覆うように遮光処理を必ず施す必要があります。管の表面は傷がつきやすいため、注意深く扱わないと継手部分から水漏れを引き起こすことがあります。
参考)https://www.onda.co.jp/gateway.php?t=catalogsamp;f=manual_fileamp;i=1915amp;n=1A-234+00.pdf

さや管内を通管する際には、先端部を斜めにカットし、1回の押し込み長さを200mm~300mm位とすることが推奨されています。無理な押し込みで座屈した架橋ポリエチレン管は必ず引き抜いて新たな管で通管し直す必要があります。​
取り外しの際には、メーカーによっては専用の工具を使用して行う必要があり、通常、一度接続したパイプは再利用ができないため、メーカー指定の施工方法で正しく施工することが大切です。配管内の水分や汚れは充分に除去し、管を継手に対して真っ直ぐに挿入することが、水漏れ防止の基本となります。​
架橋ポリエチレン管とポリブデン管の違いについて詳しい比較表と施工上の注意事項が記載されています
架橋ポリエチレン管工業会が発行する設計・施工マニュアルで、継手の種類と正しい施工手順が解説されています