電気設備一覧と種類|建築事業者向け保守点検ガイド

電気設備一覧と種類|建築事業者向け保守点検ガイド

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電気設備の種類と機能

💡 電気設備の主要3分類
発電設備

火力・水力・太陽光など電力を生み出す設備群

🔌
送配電設備

発電された電気を適切な電圧で送る設備

🏢
構内電気設備

建物内で実際に電気を使用するための各種設備

電気設備の発電系統における設備構成

建築物で使用される電気は、まず発電設備で作られます。発電設備には火力発電、水力発電、風力発電、原子力発電、そして近年注目されている太陽光発電および蓄電設備が含まれます。特に太陽光発電は再生可能エネルギーとして環境負荷の低減やエネルギー自給自足の観点から導入が進んでおり、住宅用から大規模な発電所まで様々な規模での設置が可能です。発電設備は都心部から比較的離れた場所に設置され、数十万ボルトの超高圧で発電されています。これは送電損失を最小に抑えるための方式です。
参考)電気設備について詳しく解説|種類一覧からトラブル事例、業者の…

電気設備の送配電系統と変電機能

送配電設備は、発電設備で作られた電気を変電所や配電線などの電力設備を通して利用者に届ける役割を担います。送電方法には「架空送電」と「地中送電」の2つがあり、架空送電は鉄塔に電線を張って送る方法、地中送電は地中に電線を設置する方法で、市街地など鉄塔が立てられない場所で用いられます。一般家庭には低圧にして届け、工場・ビルなどの建物には規模により特別高圧または高圧などで供給されます。変電設備では交流電流の電圧を変える装置が備えられ、高圧で受電した電力を建物内で使用する低圧電力(100V・200V)に変換します。
参考)電気設備とは?その種類や受変電設備の耐用年数・よくあるトラブ…

電気設備の構内利用における各種設備

構内電気設備は送られてきた電気を利用するための設備を指します。具体的には幹線、動力設備、電灯、コンセント設備、電話設備、放送設備、防災設備、自動火災報知設備などが該当します。建築電気設備には照明設備、電源設備、配電設備、動力設備、警報設備、防災・防犯設備、避雷針設備、中央監視設備などが大別され、それぞれが建築物の運用に不可欠な役割を果たしています。これらの設備が適切に設計・施工されることで、建物内のすべての電気機器に安定した電力供給が可能となります。
参考)電気設備工事とは?電気工事との違いから、種類や必要な資格まで…

電気設備の受変電設備とキュービクル方式

受変電設備は、電力会社から供給される高圧電力(通常6,600V)を建物内で使用する低圧電力(100V・200V)に変換する設備の総称です。受変電設備には「受電」と「変電」の二つの機能があり、高圧電力の受電と配電、電圧の変換(降圧)、電力の監視・制御、事故時の保護・遮断といった役割を担います。キュービクル式は構成をすべてパッケージにして収容した箱型のもので、建物の省スペースのため屋外に設置されることが多く、標準化されているためコストパフォーマンスが良いのが特徴です。一方、開放形はフレーム鋼の基礎に遮断器や継電器などが付いた据え付け型の受電設備で、大容量の場合はキュービクル式よりも低コストとなります。
参考)受変電設備の基礎知識や仕組みの解説

電気設備の照明・配線系統の設計手法

照明設備は快適な室内環境を作るためのもので、光源としてはLED照明や蛍光灯、水銀灯などがあり、近年は省エネと環境負荷低減の観点からLEDのニーズが高まっています。照明設備の設計では、どのような照度分布にするか、どんな照明を何台どこに設置するかなど、照明器具の配置計画が重要です。配線設備では、屋内外の配線ルートを計画し、各部屋に適切な位置と容量のコンセントを設置します。分岐回路の過負荷にならないように設計することが求められ、幹線は電気が建物に引き込まれる引込口から各分電盤、または配電盤から分電盤までの配線を指します。分岐回路は分電盤から各電気機器や照明などへ直接接続される配線部分で、特定の機器へ電力を供給します。
参考)電気設備設計とは?初心者にもわかる仕事内容と図面の基本

電気設備の防災設備とその法的要件

防災設備は建築基準法消防法の二つの法律により規定された設備で、災害発生時のリスクを踏まえ設置義務があります。防災設備には自動火災報知機、ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報器、消防機関に通報する火災報知設備、非常警報装置(非常ベル)、非常警報器具(拡声装置、警鐘)などが含まれます。火災などの災害が発生したときに常用電源が使用できなくなると、防災設備の電源を予備電源、非常電源にスイッチして一定時間以上、防災設備の機能を保持する電源の設置が義務付けられています。防災電源設備は「自家用発電設備」「蓄電池設備」「非常用電源専用受電設備」の三つの総称のことを指します。
参考)防災設備とは?種類や防火設備との違いを解説

電源の種類 用途 電圧レベル 法的根拠
常用電源 通常時の電力供給 AC100V程度 -
予備電源 防災用機器のバックアップ 各機器に応じる 建築基準法
非常電源 消防用設備の電源供給 各機器に応じる 消防法

電気設備工事の資格要件と作業範囲

電気工事士は、電気工事士法という法律で定められている国家資格です。電気工事士の資格には第一種と第二種の2種類があり、第二種は低圧で受電する一般家庭、商店等の屋内配線設備や小規模な太陽電池発電設備などの工事の作業に従事でき、第一種は第二種の範囲に加えて、高電圧で受電する小規模なビル、工場などの電気設備などの工事の作業に従事できます。電気工事の欠陥による災害の発生防止に寄与するために、一定範囲・規模の電気工作物について電気工事の作業に従事する者の資格が定められています。試験は第一種も第二種も、四肢択一方式でマークシートに記入する学科試験と、実技による技能試験との2段階で行われます。
参考)電気工事士の資格概要

電気設備におけるコスト最適化の独自視点

建築事業者が電気設備を導入する際、初期コストだけでなくライフサイクルコスト全体を考慮することが重要です。受変電設備ではキュービクル式と開放形の選択において、大容量の場合は開放形が低コストになるという意外な事実があります。また、LED照明の導入は初期費用が高くても、省エネ効果により長期的には大幅なコスト削減につながります。太陽光発電設備の導入では、自家消費型の場合は電気代の単価削減に加え、蓄電設備との組み合わせでピークカット効果も期待でき、BCP対策としても機能します。設備選定の際は、メンテナンス費用や耐用年数も含めた総合的な評価が欠かせません。特に受変電設備は保安点検が法定義務化されているため、点検費用も含めた運用コストの試算が必須です。
参考)受変電設備って何?配電盤と分電盤の違いも解説

電気設備のトラブル事例と予防策

電気設備のトラブルは、適切な保守点検を怠ることで発生するケースが多く見られます。実際の事故事例として、高圧引込みケーブルの水トリーによる絶縁低下が原因で短絡し、波及事故に至ったケースがあります。この事故では供給支障電力1,384kW、供給支障時間63分という大きな影響が出ました。また、地下電気室内の天井から漏水した水滴が受電用断路器にかかり地絡し、出迎え方式で事故点が保護範囲外であったため波及事故に至った事例もあります。感電負傷事故では、各作業間の情報共有ができておらず作業計画書もなかったため、低圧発電機が高圧系統と繋がることに気づかず感電したケースが報告されています。
参考)https://www.safety-kinki.meti.go.jp/electric/accident/r5/index.html

これらのトラブルを防ぐためには、定期的な絶縁抵抗測定、トランスの絶縁油の劣化試験、引き込みケーブルの水トリー劣化判定、停電時の非常用発電設備の切替シーケンス試験などが有効です。専用機器や電気を流す点検作業は感電などの危険があるため、電気工事の資格を持った人しか行うことができません。
参考)TOTAL SOLUTION

近畿経済産業局の電気事故情報(令和5年度)では、実際の波及事故や感電事故の詳細な原因分析が掲載されており、事故防止対策の参考になります

電気設備の法定点検の種類と実施内容

事業用電気工作物・自家用電気工作物を使う事業者は定期的な自主点検をすることが電気事業法第42条で義務付けられています。電気設備の保守点検には主に4つの種類があります。月次点検は毎月1回、運転している電気工作物の配線や保安装置を目視にて点検する必要があり、電圧や電力測定により過負荷が発生していないかなども確認します。年次点検は毎年1回、設備を停電させることで電気工作物に異常がないかを確認する点検で、機器の信頼性が高い場合は3年に1回以上の頻度となることもあります。臨時点検は設備に異常が疑われる場合や特殊な状況下で実施され、事故対応は電気事故が発生した際の緊急対応を指します。
参考)電気設備は法定点検や安全点検の義務がある!有効な資格とは?

年次点検では、絶縁抵抗測定や機器内部の点検を行うほか、部分放電や温度なども測定し、関係する法律の基準を満たしているかも確認します。この停電を伴う点検は「法定停電」と呼ばれ、電気事業法の第42条と保安規程により規定されています。キュービクルでは、変圧器ブレーカーを含む複数の電気設備の点検を行い、漏電やその他の異常がないかを確認します。もし不具合が発見された場合、予期せぬ全館停電や感電事故、火災、波及事故などの重大なリスクが発生する可能性があります。
参考)電気設備点検とは?点検作業の課題とIoT化による解決策をご紹…

点検の種類 頻度 主な内容 停電の有無
月次点検 毎月1回以上 目視点検、電圧・電力測定
年次点検 年1回(最大3年に1回) 絶縁抵抗測定、機器内部点検 有(法定停電)
臨時点検 必要時 異常発生時の緊急点検 場合による
事故対応 事故発生時 事故原因調査と復旧作業 場合による

日本電気協会の自家用電気設備の定期点検解説では、接地抵抗測定や保護継電器装置の動作試験など具体的な点検ポイントが詳しく説明されています

電気設備の設計段階での重要な考慮事項

電気設備設計では、負荷計算が最も基礎的かつ重要な作業となります。幹線設計とケーブルの選定方法では、電圧降下の計算を基礎とした選定が必要で、配線器具の計画ではA~D種接地工事の使い分けが求められます。電動機の保護リレー・配線用遮断器の選定方法、電灯分電盤や動力制御盤の設計手法など、初学者がつまづきやすい分野を理解することが重要です。建築電気設備である照明・コンセント設備、動力・幹線設備、雷保護、受変電・発電設備、通信・情報設備、防犯・防災設備などの屋内配線設計について、方式などの基礎知識、手順、具体的な技術計算方法、考慮点を押さえる必要があります。
参考)電気設備設計の基礎知識

埋設配管の基準とハンドホール設計の基礎知識など、大規模施設にも対応できる全般知識も必要です。ケーブルラックや電線管、ワイヤリングダクトなど、配線ルートの構築に関わる手法のほか、法的な規制事項や合理的な選定方法も重要な要素となります。電気設備は建築物に付帯する設備であり、建築物にはこれらがなければその建築物を運用することはできません。照明設備を点灯させるには電源が必要であり、その電源を電源供給会社から受電する設備と建物内を配電する幹線設備、そして照明器具を点灯させるための二次側配線設備が必要です。
参考)設計と積算

電気設備の強電設備と電圧区分の実務知識

強電設備は使用電圧が48V以上のエネルギーに関連していて、電圧のレベルによって低圧、高圧、特別高圧の3つのカテゴリーに分類されます。低圧電気設備は交流で600V以下、直流で750V以下を範囲としていて、主に工場のプラントや家庭用のコンセント、エアコン設備などに用いられ、日常生活に欠かせない電気機器の動力源として重要な役割を果たしています。高圧電気設備は交流で600Vから7000V、直流で750Vから7000Vの範囲で、電柱の送配電線設備や高圧キュービクル設備などに使用されます。これらは電力を効率的に輸送し、広域に分配するために不可欠な設備です。特別高圧電気設備は7000V以上の電圧を必要とする大規模工場や発電所、変電所で利用されており、大量の電力を発電・管理するために設計されて国の重要なインフラの一部となっています。​

電圧区分 交流電圧範囲 直流電圧範囲 主な用途
低圧 600V以下 750V以下 家庭用コンセント、エアコン、工場プラント
高圧 600V~7000V 750V~7000V 電柱の送配電線、高圧キュービクル
特別高圧 7000V以上 大規模工場、発電所、変電所

電気設備のメンテナンス体制構築のポイント

電気設備の保守管理をうまく運用するためには、定期点検を実施する保守計画を立てることが必要です。保守には電気設備の清掃や設備周辺の整理整頓など誰でも対応が可能な内容もありますが、電気の専門業者に依頼しないと点検できない内容もあります。電気保安点検では、担当の保安業務従事者に連絡を取り、点検の種類や頻度を事前に確認し、必要な準備を整える必要があります。定期的な点検により、電気設備の異常や劣化を早期に発見することができ、適切な対策を講じることができます。これにより電気設備の長寿命化や安定した運用が可能となり、事業活動の継続性や安全性の向上に大きく貢献します。
参考)電気設備の安全点検「電気保安点検」とは?具体的な内容から、事…

点検で異常が見つかれば補修をする必要があり、専用機器や電気を流す点検作業は感電などの危険があるため電気工事の資格を持った人しか行うことができません。停電状態にするため、機器のバックアップなどをしておく必要があり、配線の状態や劣化の度合いなども定期的に点検します。電気は点検をしないと漏電や火災のリスクがあるため、法定点検が義務付けられており、定期的な点検を行うことで安定的に受電したり、停電や火災のリスクから守ることができます。保安規定に記載のある日常の試験や点検、巡視点検などは法定点検内で行ってもらうことができます。​
TOTAL SOLUTIONの電気設備保守管理ガイドでは、月次点検と年次点検の具体的な内容と実施方法が実務的に解説されています