

向心力は物体が円運動をするために必要な力で、実際に物体に働いている実在の力です。円の中心に向かう方向に作用し、物体を曲線軌道で動かす役割を果たします。例えば、ひもで重りを結んで回転させる場合、ひもの張力が向心力となります。
参考)https://butsurimemo.com/circular-motion/
一方、遠心力は回転座標系における見かけの力であり、物体と一緒に円運動している観測者が感じる力です。静止系から見れば実際には存在せず、慣性力の一種として分類されます。車が急カーブを曲がるときに乗客が外側に押し付けられるように感じるのは、この遠心力によるものです。
参考)https://qo.phys.gakushuin.ac.jp/~kikuchi/toy/toy/ensinryoku.htm
向心力と遠心力の大きさは等しく、向きは正反対です。質量m、半径r、角速度ωの円運動において、どちらの力の大きさもF = mrω²または F = mv²/rで表されます。
参考)https://media.suke-dachi.jp/glossary/unit-indicators-plans/centripetal-force/
円運動における遠心力と向心力の計算には、共通の公式が用いられます。質量m[kg]の物体が半径r[m]の円上を速度v[m/s]で等速円運動している場合、向心力および遠心力の大きさは以下の式で求められます。
参考)https://juken-mikata.net/how-to/physics/centrifugal_force.html
基本公式
ここでω[rad/s]は角速度を表し、物体が単位時間あたりに回転する角度を示します。速度vと角速度ωの関係はv = rωで表されるため、どちらの公式も同じ結果を導きます。
参考)https://w3e.kanazawa-it.ac.jp/math/physics/category/mechanics/motion/rotational_motion/henkan-tex.cgi?target=%2Fmath%2Fphysics%2Fcategory%2Fmechanics%2Fmotion%2Frotational_motion%2Fcentrifugal_force.htmlamp;pcview=2
計算において重要なのは、遠心力が速度の二乗に比例して増加する点です。つまり回転速度が2倍になれば、遠心力は4倍になります。この性質は、高速回転する機械や装置の設計において特に注意が必要な要素となります。
参考)https://mecha-basic.com/enshinryoku/
建築現場で使用される回転機械の場合、作業半径や回転速度を把握することで、発生する遠心力を正確に予測できます。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000627864.pdf
建築業界では遠心力を利用した様々な機械や装置が活用されています。最も身近な例が遠心分離機であり、液体中に分散した固体を遠心力によって効率的に分離します。洗濯機の脱水機能も同じ原理で、高速回転によって衣類から水分を外側に押し出して分離・排出する仕組みです。
参考)https://www.tanabewilltec.co.jp/column/about-centrifuge
建設現場において、遠心力の影響を強く受けるのがクレーンの旋回操作です。荷をつった状態でクレーンを旋回させると、荷は遠心力により旋回中心に対して外側に出ようとし、円運動の半径が大きくなります。旋回速度が速くなるほど外側への力が増大し、クレーンの転倒リスクが高まるため、向心力と遠心力を理解した慎重な操作が求められます。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001513163.pdf
回転工具や高速回転部品においても、遠心力による変形や部品の外れを想定した設計が不可欠です。遠心力は「見かけの力」ですが、設計や安全対策では無視できない重要な要素となります。
クレーン作業における遠心力と向心力の詳細な解説(クレーンに関する知識テキスト)
円運動において物体が曲線軌道を維持するには、常に中心方向への力が必要です。この力が向心力であり、物体の速度方向を絶え間なく変えて直線運動から引き離します。静止系(慣性系)から観測すると、円運動する物体には円の中心に向かって向心力が作用しており、これが回転運動を実現させています。
一方、物体と共に回転する回転座標系(非慣性系)から見ると、物体は静止しているように見えます。この回転座標系では、向心力と釣り合う力として遠心力が作用しているように感じられます。実際には物体は慣性の法則により等速直線運動をしたがっており、向心力によって強制的に円運動させられている状態です。
参考)https://humans-in-space.jaxa.jp/faq/detail/000706.html
物体が円運動する際、接線方向に進もうとする慣性と、中心方向に引っ張る向心力が常に働いています。この2つの力のバランスによって円運動が維持され、どちらかが変化すると物体の軌道も変化します。建築機械における回転部品の設計では、このメカニズムを正確に理解することが安全性の確保につながります。
参考)https://www.jsme-fed.org/experiment/2012_4/005.html
建築現場では、クレーンや移動式クレーンなどの旋回装置を扱う機会が多く、遠心力と向心力の理解が作業安全に直結します。ジブクレーンで荷をつって旋回させる際、旋回速度が速いほど遠心力が増大し、荷が外側に振り出されて作業半径が変化します。この現象を理解せずに操作すると、クレーンの転倒や荷の落下といった重大事故につながる危険性があります。
回転機械の設計においても、遠心力による影響を考慮することが不可欠です。高速で回転する部品には遠心力が働き、バランスの乱れがわずかでも大きな振動や破損の原因となります。自動車のタイヤやホイールと同様に、建築機械の回転部品も厳密なバランス調整が必要です。
フォークリフトの運転においても、旋回時の遠心力が荷物や車体を外側に押し出す力として作用します。この力は速度の二乗に比例して大きくなるため、速度管理が安全運転の鍵となります。物体の運動に関する力学知識は、建築業従事者にとって必須のスキルといえます。
参考)https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13316762913
小型移動式クレーンにおける遠心力と向心力の解説(厚生労働省資料)