クレーン種類と特徴:建築業従事者の選び方

クレーン種類と特徴:建築業従事者の選び方

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クレーン種類と特徴

クレーンの基本分類
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固定式クレーン

工場や倉庫、港湾に設置される定位置タイプ。天井クレーン、ジブクレーン、橋形クレーンなど

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移動式クレーン

車両搭載型で不特定の場所へ移動可能。トラッククレーン、ラフテレーンクレーン、クローラークレーンなど

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用途別選定

現場環境、吊り上げ荷重、作業範囲に応じて最適なクレーンを選択することが作業効率向上の鍵

クレーン種類の固定式と移動式の違い

クレーンは大きく「固定式クレーン」と「移動式クレーン」の2種類に分類されます。固定式クレーンは工場や倉庫、港湾などに設置され、定位置で荷物の吊り上げと運搬を行う機械装置です。基礎工事を施した固定式で設置されるため、広い作業範囲を確保でき、鉄骨で構成された強靭な構造により重い荷重を支えられます。
参考)https://tokuworld.co.jp/blog/647

一方、移動式クレーンは車両にクレーン装置が搭載されており、タイヤまたはクローラー(履帯)で不特定の場所へ移動できることが特徴です。動力を用いて荷を吊り上げ水平に運搬する目的は同じですが、固定式は移動できず、移動式は原動機を内蔵し様々な現場へ移動可能な点が根本的な違いです。
参考)https://www.tgkk.or.jp/column/009/

建築現場では作業内容や設置場所に応じて、これら2つのタイプから最適なクレーンを選定する必要があります。固定式は長期的な作業に適し、移動式は機動性が求められる短期工事や頻繁な移動が必要な現場に適しています。
参考)https://news.build-app.jp/article/33773/

クレーン種類の天井クレーンとジブクレーン特徴

天井クレーンは建物内の柱や天井梁に走行レールを取り付けるタイプで、天井梁下までの空間を最大限に活用できる点が大きなメリットです。工場や倉庫での機械・部品の運搬作業に広く使用されており、床面を有効活用できるため作業スペースを広く確保できます。ホイスト式、クラブトロリ式、ロープトロリ式など、トロリの構造によって複数の種類に分けられます。
参考)https://arav.jp/column/type-of-crane/

ジブクレーンは荷を吊り上げるための腕「ジブ」を持つクレーンで、低床ジブクレーンや塔形ジブクレーン(タワークレーン)など種類が豊富です。タワークレーンはビル建設、吊橋・斜張橋・鉄塔などの高い構造物の架設に適したクレーンで、垂直に伸びた塔状の構造が特徴です。スイングジブクレーン(壁取付形)は建屋の柱や壁に固定でき、180°旋回が可能で比較的容量が小さいため天井クレーンの補助として使われることが多いです。
参考)https://www.rent.co.jp/media/track/crane-name-part/

ポスト形ジブクレーン(自立形・通称キャンチレバー)は固定した柱だけで支える構造で、簡単な基礎工事で建屋内外場所を選ばず設置できます。300°旋回し、スリップリング式の採用により360°旋回にも対応可能です。
参考)https://www.kamiuchi.co.jp/pages/53/

クレーン種類の橋形クレーンとケーブルクレーン用途

橋形クレーン(門形クレーン)は天井クレーンの両端に脚を設け、地上に敷設された2本の走行レールの上を移動するクレーンです。作業内容および設置場所に最適な高さ・スパン・容量の組み合わせが可能で、屋外はもとより屋内でも天井クレーンと組み合わせることができます。片側を建屋側壁に取り付けた走行レール上を走行する「片脚橋形クレーン」も存在します。
参考)https://www.ikaijob.jp/trivia/interview/968/

港湾施設では橋形クレーン(ガントリークレーン)が大型貨物の取り扱いに使用され、広い範囲での利用が可能です。アンローダーは橋形クレーンの片方の先端が海側へ飛び出した形状で、船からコンテナを陸揚げする専用のクレーンとして機能します。​
ケーブルクレーンは2つの塔に張り渡したロープ上をトロリーが走行する形式で、ケーブルカーのような構造をしています。比較的長距離のものが多く、山間部で谷の深い所や河川上など他の手段がない橋梁架設工事、ダムの工事や河川の改修などに使用されます。道の無い現場に材料やコンクリートなどを運ぶ施設として、建設土木工事において重要な役割を果たします。
参考)http://library.jsce.or.jp/Image_DB/committee/steel_structure/book/27295/27295-0082.pdf

クレーン種類のトラッククレーンとラフテレーンクレーン比較

トラッククレーンは自走して別の場所へ移動できる移動式クレーンで、シャシー、クレーンブーム、旋回装置、そして2つの運転席を備えています。道路走行用の運転席とクレーン操作専用の運転席が分かれている点が大きな特徴で、最高時速90kmで高速走行が可能です。機動力と走行性能に優れており、高所への資材搬入や大型重量物の運搬、柱の設置など幅広い作業に対応できます。
参考)https://shima-corp.com/labo/kenki/what-rough-terrain-crane

ラフテレーンクレーン(通称ラフタークレーン)は悪路や狭い場所での高い走行性能を持つクレーン車です。全輪駆動と大型タイヤにより未舗装地や狭い工事現場でも安定して作業ができ、4つの操舵モードがあるため狭い場所での操作もスムーズです。運転室が1つで走行操作とクレーン操作を同一の運転席で行えますが、最高時速は50km程度とトラッククレーンより遅いです。​
両者の主な違いは運転席の数と走行性能にあり、トラッククレーンは舗装道路や都市部での使用に適し、ラフテレーンクレーンは未舗装の現場や不整地での作業に向いています。吊り上げ荷重はラフテレーンクレーンが多くの場合100t未満なのに対し、トラッククレーンはより大型の荷物に対応可能です。
参考)https://arav.jp/column/truck-crane/

クレーン種類のオールテレーンクレーンとクローラークレーン利点

オールテレーンクレーンはトラッククレーンの高速走行機能とラフテレーンクレーンの不整地走行機能を併せ持った移動式クレーンです。全輪駆動と全輪操舵を備え、舗装路から不整地まであらゆる地形でスムーズに走行できる「全地形対応」の汎用性が特徴です。最高速度は時速60〜70kmで、吊り上げ荷重は100tを超えるケースが一般的であり、大規模な建設現場や橋梁工事でオールマイティに使用されます。運転室は道路走行用とクレーン操作用の2つに分かれています。
参考)https://arav.jp/column/all-terrain-crane/

クローラークレーンはクローラー(履帯・キャタピラ)で移動するタイプで、軟弱地盤や悪路での作業に最適です。地面への接地面積が広く安定性が高いため、泥や砂利などの不整地でも効果的に作業が行えます。重い荷物を持ち上げながら移動でき、不整地や泥地などの悪条件でも安定して作業できる点が大きな利点です。
参考)https://arav.jp/column/crawler-crane/

360度回転が可能で周囲の作業領域に対して柔軟なアクセスができ、狭いスペースや限られた操作スペースでも効率的な作業が行えます。最大級のクローラークレーンは約800トンまで持ち上げることが可能で、高層ビルや橋などの建設、港湾荷役、基礎工事の掘削作業など幅広い用途に対応します。ただし走行速度は時速1〜3kmと非常に遅く、公道を走行できないため、現場まで解体して持っていき組み立てる必要がある場合もあります。
参考)https://www.steerlink.co.jp/truckinfo/column/features-of-crawler-crane/

クレーン種類における資格と免許要件

クレーン運転には吊り上げ荷重や運転方式に応じた資格が必要で、5種類の免許が存在します。「クレーン・デリック運転士免許(限定なし)」は全てのクレーンとデリックの運転が可能な最上位資格で、機上運転・無線操作式から床上運転式、床上操作式まで全ての運転方式に対応します。「クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)」はクレーンのみの運転が可能で、「床上運転式クレーン限定免許」は床上運転式と床上操作式クレーンに限定されます。
参考)https://www.witc.co.jp/blog/blog-20230113/

移動式クレーンには専用の「移動式クレーン運転士免許」が必要で、吊り上げ荷重5トン以上の移動式クレーン運転に使用されます。吊り上げ荷重1トン以上5トン未満の場合は「小型移動式クレーン運転技能講習」、1トン未満の場合は「移動式クレーン運転のための特別教育」が必要です。
参考)https://www.konan-crane.or.jp/menkyo.html

固定式クレーンと移動式クレーンは基本的に別の資格体系となっており、天井クレーンの資格では移動式クレーンの運転はできません。18歳以上の男女が受験可能で、クレーン運転は玉掛け作業者との共同作業が一般的です。玉掛け作業者がワイヤーロープチェーンで吊り具の取り付け・荷物の固定を行い、その合図に従ってクレーンオペレーターが操作する連携が重要です。​

クレーン種類の選定基準と建築現場での活用法

建築現場でのクレーン選定は、吊り上げ荷重、作業範囲、現場環境の3つの要素を総合的に判断する必要があります。吊り上げ能力は数トンから数百トンまで幅広く、取り扱う資材の重量に応じた選択が不可欠です。天井クレーンは工場内での機械組み立てや部品運搬に適し、床面を有効活用できるため作業効率が向上します。
参考)https://kito.co.jp/blog/6

狭小現場や不整地では機動性が重視され、ラフテレーンクレーンの4つの操舵モードによる取り回しの良さが活かされます。トラック搭載型クレーン(ユニック車)は資材運搬とクレーン作業を同時に行えるため、小規模工事での利便性が高いです。大規模な橋梁工事や高層ビル建設ではオールテレーンクレーンやクローラークレーンの大容量吊り上げ能力が必要となります。​
近年のコンパクト化に対する需要が高まっており、限られたスペースでも作業可能な小型クレーンの需要が増加しています。💡意外な活用法として、クローラークレーンは建屋内の機械組み立て工事や造園工事、石材工事にも使用されており、建築分野以外への応用が広がっています。フロントアタッチメントを取り替えることで様々な作業に対応できる汎用性も、現代の建築現場で重視される要素です。
参考)https://www.cema.or.jp/general/industry/machines/crawlercranes.html

クレーン種類 主な用途 吊り上げ能力 移動性 適用現場
天井クレーン 工場内運搬 中〜大容量 固定式 工場・倉庫
ジブクレーン 高所作業 小〜中容量 固定/移動 ビル建設・港湾
橋形クレーン 大型貨物 大容量 レール走行 港湾・屋外作業
トラッククレーン 資材搬入 中〜大容量 高速走行可 都市部・舗装道路
ラフテレーンクレーン 不整地作業 小〜中容量 全輪駆動 未舗装現場
オールテレーンクレーン 大規模工事 大容量 全地形対応 橋梁・大型建築
クローラークレーン 重量物移動 超大容量 不整地特化 軟弱地盤・基礎工事

一般社団法人日本建設機械施工協会の建設機械紹介ページでは、各種クレーンの詳細な仕様と写真が掲載されており、クレーン選定の参考資料として有用です
参考)https://www.cema.or.jp/general/industry/machines/index.html

一般社団法人日本クレーン協会のクレーン等安全規則の解説ページでは、クレーンの分類と安全基準について詳細な情報が提供されており、資格取得や安全管理の参考になります
参考)https://cranenet.or.jp/tisiki/crane.html