

エポキシタイル接着剤は「強いから多少汚れていても付く」という誤解が現場で起きやすいのですが、接着は下地表面の状態で決まります。油分がある場合は溶剤で脱脂し、錆はサンドペーパー等で除去、旧塗膜は落とすほど接着性が上がる、という考え方が基本です。特に脆い表面(粉を吹く、指で擦ると白く付く)を残すと、その層ごと剥がれて「接着剤は効いているのに剥落する」事故に繋がります。
下地側で見落としがちなポイントは「水分」と「レイタンス」です。湿った下地は避けるべき、と明記されている製品もありますし、モルタル系下地はレイタンス(表層の弱い膜)を除去しないと密着不良になりやすいです。清掃は“ホコリを払ったつもり”で終えず、削る→吸う→拭くの順で、接着面に「粉が残っていない状態」を作ります。
また、合板など動きやすい下地は“強い接着剤で無理に止める”より、そもそも下地の剛性確保が先です。下地のたわみがあるとタイルや目地に割れが出るため、下地精度と強度が仕上がりに直結する、という整理で段取りすると失敗が減ります。
下地処理の考え方(脱脂・錆・塗膜・脆弱層)を確認したいときの参考。
接着前の下地処理の基本(油は脱脂、錆は除去、塗膜は落とすほど接着性向上)
https://faq.cemedine.co.jp/architecture/detail?site=T5WB9K2B&category=97&id=65
二液性のエポキシタイル接着剤は、主剤と硬化剤を混ぜた瞬間から反応が進み、可使時間(使える時間)が「温度・混練量・容器形状」に強く支配されます。例えば、主剤:硬化剤を重量比1:1で混合し、23℃で混合後30分以内に貼り付け作業を行う、という具体値が提示されている製品もあり、現場では“30分で一区切り”の段取りが必要になります。ここを無視して練り置きすると、塗れているように見えても実際は作業性が落ちてクシ目が立たない、濡れ広がらない、結果として空隙が増える、という流れで不具合が出ます。
混合の注意点として、床や下地の上で直に混ぜるのは避け、別容器で均一になるまで攪拌する、という指摘があります。これは混合ムラが残ると未反応成分が局所的に残り、十分な接着力を得られないリスクがあるためです。混合後の色が均一か(製品によっては色で確認できる)など、簡単な「見える管理」を入れると品質が安定します。
意外に効く小技は「最初から大きい容器で練らない」ことです。エポキシは反応熱が出るため、容器内で塊のまま置かれるほど温度が上がりやすく、可使時間がさらに短くなります。少量多回で練り、貼る面積も“貼れる分だけ”に限定するのが、安全側の運用です。
可使時間・混合比・貼り付け可能時間の具体例を確認したいときの参考。
混合割合1:1、混合後30分以内(23℃)などの目安
https://www.tilelife.co.jp/item/hukusizai/bond/25357/
施工不良の入り口は「塗ったつもり」「押したつもり」です。接着剤の塗りムラがあると空気層が残り、タイルの浮き→時間差で剥がれに繋がる、という説明は外壁タイルの剥落対策でも繰り返し指摘されています。つまり、材料のグレード以前に“塗布の均一性”が最重要です。
塗布方法は、クシ目ゴテで均一なリブを作る方法と、石材等で採用される点付け(だんご状)などがありますが、やってはいけないのは「適用条件を無視した自己流の合わせ技」です。例えば点付け施工では、裏側に4点または5点で配置する、といった指示が施工資料に見られ、点の数や位置には意味があります。点を減らしてしまうと荷重が集中し、熱伸縮や衝撃で“点が支点になって”浮きが起きやすくなります。
品質管理として手堅いのは、貼り付け中に時々タイルを剥がして接着面積を確認することです。製品によっては「接着面積が60%以上」など具体目安が示されているため、監督・職長のチェック項目にしやすいです。面積が取れていない場合は、下地の不陸、クシ目の高さ不足、可使時間超過、圧着不足など原因が絞れます。
塗布・圧着・接着面積チェックの具体例を確認したいときの参考。
貼付後に剥がして接着面積60%以上確認、圧着の重要性
https://www.tilelife.co.jp/item/hukusizai/bond/25357/
剥がれ・浮きが出たとき、原因を「接着剤のせい」にすると再発します。よくあるのは、接着剤の塗りムラ(空隙)による浮き、圧着不足、下地側の汚れや脆弱層、そして温湿度変化による下地の膨張収縮が積み重なって付着力が落ちるケースです。外壁の剥がれは、施工不良だけでなく経年劣化や環境影響も絡むため、“いつ・どこで・どの形で”浮きが出たかの観察が重要になります。
見分けの実務ポイントは、剥がれ面の観察です。
補修の文脈では、浮き部に穴を開けてエポキシ樹脂を注入して接着力を回復させる工法が紹介されています。ただし、これは“症状を止める手段”で、根因が下地の湿気や繰り返しのムーブメントなら、再発や周辺拡大が起きます。だからこそ、新規施工の段階で「空隙を作らない」「下地処理をやり切る」「作業時間を守る」が最も安い対策です。
剥落の原因と、塗りムラ→浮き→剥がれの説明を確認したいときの参考。
接着剤の塗りムラが浮きの原因になり、時間経過で剥がれにつながる
https://kf-tilehold.com/news/tile-flaking-reason-explanation/
検索上位の解説は「下地処理」「接着剤の種類」「剥がれ原因」に寄りがちですが、実際の現場で差が出るのは“段取り設計”です。特に冬場は、気温低下で硬化が遅くなる一方、材料や下地が冷えていると粘度が上がって塗り広がりが悪くなり、クシ目が潰れず空隙が残ることがあります。ここで「硬化が遅い=時間がある」と誤認すると、練り置きや広げすぎで逆に不具合を招きます。
段取りのコツは、作業を「混ぜる人」「塗る人」「貼る人」に分け、混練量を小さく刻むことです。混練量が多いほど反応熱で容器内温度が上がり、可使時間が急に短くなることがあるため、特に二液性は“少量で回転”が安全側です。さらに、貼る前に割付・仮並べ・逃げ(端部の納まり)を決めておくと、混合後に迷う時間が消え、可使時間を品質に使えます。
もう一段踏み込むなら、施工中に「1枚めくり検査」をルール化します。貼り始めの5枚目、区画ごとの最初の1枚、温度が変わったタイミングの1枚など、条件が変わる点で剥がして接着面積と濡れ状態を確認します。これは材料試験より現場再現性が高く、職長の経験を“手順”に落とし込めるため、属人化を減らせます。
下地と接着の基本(混合は別容器、下地湿気が接着力低下、等)を確認したいときの参考。
エポキシ樹脂系は別容器で混合、下地湿気は膨れ・剥がれ原因
https://www.wako-dou.com/netshop/chojaku/lonseal/common/seko_maintenance.pdf