

コンクリート打設後に発生する現象として、ブリーディングとレイタンスは混同されがちですが、明確に異なるものです。ブリーディングは、コンクリート打設後に質量の大きい骨材が沈降し、水などの質量が軽いものが浮き上がる「現象」そのものを指します。一方、レイタンスはブリーディングに伴って浮上したセメントや骨材の微粒子が、コンクリート表面に形成する多孔質で脆弱な「薄層」を意味します。
参考)https://www.sekoukyujin-yumeshin.com/learn/23229/
つまり、ブリーディングは「水が浮上する現象」であり、レイタンスは「その結果できた弱い層」という関係性にあります。ブリーディングによって浮上する水は「ブリーディング水」と呼ばれ、この水とともに粘土やセメントといった軽量な微粒子が表面付近に移動することでレイタンスが生成されます。両者はほぼ同時に発生するため混同されやすいですが、現象と結果という本質的な違いを理解しておくことが重要です。
参考)https://aippearcloud.com/bleeding/
レイタンスは、コンクリートが打設されると重力の影響で砂など重量のある粒子が下方へ沈み、逆に粘土やセメントといった比較的軽量な粒子がブリーディング水とともに表面付近に浮上することで形成されます。この軽量な微粒子がコンクリートの上層に作る層がレイタンスであり、その組成はセメントや砂の微粒子、泥などの混合物です。
参考)https://towa-seisakusho.com/%E3%80%8C%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%87%A6%E7%90%86%E6%96%B9%E6%B3%95%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F%E6%89%93%E3%81%A1%E7%B6%99%E3%81%8E%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%86/
レイタンスの特徴は、多孔質で脆弱な構造を持つことです。強度がほとんどない弱い層であるため、コンクリート同士の打ち継ぎを行う際には必ず除去しなければなりません。レイタンスを除去せずに打ち継ぐと、コンクリート同士の付着が阻害され、後になってひび割れなどを起こす原因となります。ダムコンクリートやトンネル、道路擁壁などの土木構造物では一般的に無筋コンクリートで施工するため、レイタンスの除去が必須作業となっています。
参考)https://bonperson-civil.com/laitance/
ブリーディングは、コンクリートに含まれるセメントや骨材の密度が関係して生じる現象です。コンクリートを打設した後、すべてのブリーディング水が表面に浮き上がってくることが理想的ですが、一部は残ってしまうことが多く、これが様々な問題を引き起こします。
ブリーディング量が増える主な原因として、単位水量の過多、細骨材率の不足、単位粉体量の不足などが挙げられます。また、施工面では打上り速度が速すぎたり、1層の打込み高さが大きすぎたり、締固めが過剰になったりすることもブリーディングを増加させる要因となります。
参考)https://concom.jp/contents/countermeasure/vol061/
ブリーディング水が表面に浮上すると、コンクリート内部で水分の移動に伴う沈下が発生します。この沈下が不均一になると、表層にひび割れが生じる可能性があり、特に気温や湿度の変化が激しい環境では、乾燥収縮も加わってひび割れが広がるリスクが高まります。コンクリート構造物の打ち継ぎ部分では、ブリーディングとレイタンスの双方に適切な対応を行わないと、施工不良につながる可能性があるため注意が必要です。
参考)https://www.engineeringworks-management.com/tobecome/bleeding.html
コンクリートが硬化する前にレイタンスを除去する方法は「グリーンカット(GC)」と呼ばれます。コンクリートを打設してすぐの新しい部分(グリーン)を取り除くことから命名されたこの方法は、ブラシで表面を擦ったり、水で高圧洗浄してレイタンスを除去する方法が一般的です。
参考)https://www.sekoukyujin-yumeshin.com/learn/22989/
グリーンカットの実施時期は季節によって異なります。冬期(12月〜3月)は打設終了後約16〜17時間、夏期(7月・8月)は約3〜4時間、その他の時期は約6〜7時間が目安とされています。夏場の施工では硬化が早すぎると作業ができないため、凝結遅延材を使用して時間調整した上でグリーンカットすることもあります。
参考)https://www.rinya.maff.go.jp/chubu/gijyutu/pdf/s56_211.pdf
硬化前の除去には大きなメリットがあります。作業自体がスムーズで、広範囲のレイタンスを効率的に取り除くことが可能です。ただし、打設後の適切なタイミングを見極める必要があり、タイミングが早すぎると必要以上にコンクリート表面を削ってしまったり、遅すぎるとほとんど固まってしまいレイタンスを僅かしか除去できないというデメリットもあります。場合によっては、除去の必要がない部分を削ったり、除去すべき部分を削り残したりしてしまうおそれがあるため、経験と技術が求められます。
コンクリートが硬化した後にレイタンスを除去する場合は、コンクリート表面にブラスト噴射を行うのが一般的です。この方法は効率的に表層を除去することができ、コンクリート硬化後であればいつ行っても構わないため、工程上の縛りがなくスケジュール管理がしやすいというメリットがあります。
ブラスト噴射によるレイタンス除去は、圧縮空気などで研削材を高速で吹き付けてコンクリート表面のレイタンス層を削り取る工法です。コンクリート表面をざらざらにすることができるため、次の打ち継ぎ時の付着性を高めることができます。ただし、コンクリート硬化前にレイタンス除去するのに比べて余計に時間がかかるため、全体の工程を考慮して計画を立てる必要があります。
また、コンクリート打設後の1日〜2日後程度であれば、ワイヤーブラシでこすることで簡単に除去できる場合もあります。このような簡易的な方法は小規模な工事や補修工事などで活用されることがあります。硬化後の除去方法は、工事の規模や工期、コストなどを総合的に判断して選択することが重要です。
参考)https://www.sekoukyujin-yumeshin.com/learn/19786/
ブリーディングを抑制するには、配合設計の段階から対策を講じることが効果的です。試験練りのときなどにブリーディングが過大であることが懸念された場合は、細骨材率の増加、単位粉体量の増加(セメント量の増加、石灰石微粉末の使用など)、ブリーディング抑制型の混和剤の使用などの配合修正を検討すべきです。
施工面での対策も重要です。コンクリートのブリーディングが多い場合には、打上り速度や1層の打込み高さをなるべく低減したり、締固めが過剰とならないように配慮して作業を行うことが求められます。具体的には、落下高さを1500mm以下にすること、一層は400mm〜500mmにすること、打つ速度は30分で1m〜1.5mにすることなどが推奨されています。
参考)https://seko-kanri.com/reitance/
さらに、型枠の継ぎ目に発生する砂すじを防止するため、特に柱のように打上り速度が速く、打込み高さが大きい部材では、大きな側圧による継ぎ目の開きを抑制するため、型枠および支保工を強固に組み立てることが重要です。型枠を組み立てる際に継ぎ目に隙間テープを貼り付けるような工夫も効果的で、これらの総合的なアプローチにより、ブリーディングとレイタンスの発生を最小限に抑え、高品質なコンクリート構造物を実現することができます。レイタンス処理を適切に行うことで、コンクリートの打ち継ぎ面を一体化し、構造物の耐久性と安全性を確保できます。
コンクリート工事におけるブリーディングの詳細と対策事例
レイタンス除去の具体的な施工手順と注意点