
吹出口とは、空調設備において空調機から送られた冷暖気を室内へ供給するための装置です。建築物の空調システムにおいて、吹出口は快適な室内環境を実現するための重要な構成要素として機能します。具体的には、冷房時には冷たい空気を、暖房時には温かい空気を効果的に部屋に送り込み、快適な室温を維持する役割を担っています。
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吹出口から放出される風は室内の空気循環を促進し、室内の温度や湿度の均一化に寄与します。この空気の流れによって、部屋全体が均一な温度環境となり、局所的な暑さや寒さを解消することができます。可動部品を備えた吹出口では、吹出方向を調整できるため、特定の場所に重点的に空気を供給することも可能です。
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吸込口との違いについても理解しておく必要があります。吹出口は給気ダクトと結ばれて室内に空気を取り入れる装置であるのに対し、吸込口は還気ダクトで空調機と結ばれ、室内の空気を空調機に戻すか外に排出する役割を持ちます。この2つの制気口が協働することで、室内の空気を効率的に循環させることができるのです。
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建築物の空調設備に使用される吹出口には、用途や設置場所に応じて複数の種類が存在します。公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)では、主に5つのタイプに分類されています。
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**シーリングディフューザー形(アネモスタット型)**は、天井に取り付ける吹出口として最も一般的に使用されているタイプです。中央のコーンを上下することで気流の拡散方向を変更でき、ダンパーを使用して風量調整も可能です。丸型と角型があり、オフィスビルや商業施設など幅広い建物で採用されています。
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ユニバーサル型は、前面・後面にセットされた風量調整羽により気流の方向を調節できる吹出口です。縦横の可動羽根で風向きを自由に変更でき、シャッター付きで風量の調整も可能なため、吸込口としても兼用されることが多いタイプです。
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ノズル型は、風を遠くまで届けられ、比較的騒音も発生しにくい特徴を持ちます。劇場・ホール・体育館など大空間の天井面やロビーの壁面に取り付けられるほか、厨房や工場などのスポット空調にも使用されます。ノズル形の一種である「パンカールーバー」は、油煙や水蒸気に強いため、厨房や工場などで特に活躍します。
**線状形(ライン型)**は、細長い吹出形状により帯状の気流が得られるため、ペリメータ部分やエアカーテンとして使用されることが多い吹出口です。可動羽根で気流の方向を調節でき、幅広く空気を拡散させることができます。
床吹出口は、フリーアクセスフロアで使用されるタイプで、床下に設置されたダクトから空気を供給します。風量を調整でき、ゴミ受け機能も備えているため、清掃性にも配慮された設計となっています。床暖房と同様の輻射熱効果により、足元からじんわりと温まるため、冬場の寒さ対策に有効です。
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空調施工管理の専門サイト - 吹出口の種類と特長についての詳細解説
吹出口の設置場所は、空調効率と室内の快適性を左右する重要な要素です。通常、吹出口は天井など高いところに設置され、吸込口は床に近い方に配置されることが一般的です。この配置により、暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下降するという空気の性質を活用し、室内の空気を快適に保つことができます。
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外気の侵入が多い場所では、特別な配慮が必要です。飲食店やその厨房、事務所、商業施設やオフィスビルの入り口などでは、外気から侵入する暖気によって吹出口の表面に結露が発生しやすく、ひどい場合は露が滴下してしまう可能性があります。このような場所には、結露防止機構が付いた防露タイプの吹出口を選定することが推奨されます。
参考)建物タイプ別、吸込口・吹出口の種類
吹出口の位置は室温の均一性に大きく影響します。一般的には、部屋の中央部に設置することで、空気が効率よく循環し、室温ムラを抑制できます。ただし、部屋の形状や家具の配置などによって、最適な位置は異なるため、設計段階で十分な検討が必要です。
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設置時の注意点として、照明器具や換気扇などの位置との兼ね合いを考慮する必要があります。また、床吹出口を採用する場合は、床下にダクトを設置するための空間が必要となるため、建物の構造段階から計画することが重要です。大型の家具を吹出口の前に配置すると、空気の流れを妨げ、空調効率の低下につながる可能性があるため、家具配置計画との調整も欠かせません。
吹出口の適切なメンテナンスは、空調効率の維持と衛生的な室内環境の確保に不可欠です。吹出口と吸込口は空調器具の中でもフィルターと同様に汚れが付きやすい箇所であるため、定期的な清掃が推奨されます。
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天井設置型の吹出口の場合、まず電源を切ってコンセントを抜き、ルーバー(風向板)を手で開きます。その後、お掃除棒(割り箸などの棒状の道具にウエットティッシュを巻きつけたもの)を使って、吹出口の内部を丁寧に拭き取ります。表面上の汚れを取り除いた後には、消毒用エタノールや無水エタノールを使用して除菌・殺菌を行うことが重要です。
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床吹出口の場合は、室内からのホコリなどが落ちてたまりやすいため、定期的な清掃が特に重要です。清掃方法は、床吹出口のカバーを外して、掃除機のノズルを床下へ挿し込みホコリなどを吸い取ります。先端がブラシ状になっているノズルを使用すると効果的で、ノズルにライトがついている掃除機は床下の清掃に特におすすめです。
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金属製の吹出口の場合、水濡れや常に多湿な環境(脱衣所、トイレなど)ではサビが発生する可能性があるため、水がかかった場合には乾いた布で速やかに拭き取る必要があります。金属製床吹出口の想定耐用年数は約30年とされていますが、適切なメンテナンスを行うことで長期間の使用が可能となります。
業務用空調機の場合、結露や異臭の防止のため、年1回程度の専門業者による分解清掃の実施が推奨されます。また、断熱材の見直しや風量バランスの最適化、湿度管理なども予防策として有効です。
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給排気口清掃の実際の施工事例と清掃方法
建築物に最適な吹出口を選定するには、複数の要素を総合的に考慮する必要があります。吹出口の選定において重要なのは、吹き出した気流がどのように流れるのか、その範囲と実際の到達距離を計算に入れることです。
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吹出口のサイズ計算では、必要風量と気流の到達距離を考慮して適切な製品を選定します。温度調節機能や風量調整機能の有無も、建物の用途や使用環境に応じて検討すべき重要な要素です。特に温度センサー付きの自動調整機能を持つ吹出口は、季節や時間帯による温度変化に自動的に対応できるため、省エネ効果が期待できます。
建物のタイプ別に最適な吹出口を選定することも重要です。オフィスビルや商業施設では、視覚的にすっきりとしたアネモスタット型が好まれる一方、工場や倉庫などの大空間ではノズル型が効率的です。また、外気の侵入が多い場所では結露防止型を選定するなど、設置環境に応じた適切な選択が求められます。
省エネ対策の観点からは、置換換気吹出口の採用が注目されています。混合空調方式と比較して風量を最大65%程度まで削減でき(全外気方式の場合)、消費電力量やCO2排出量の低減に役立ちます。建築設備の消費エネルギー量の約1/4は空調用のファンとポンプを中心とする搬送用のエネルギーと言われており、効率的な吹出口の選定は省エネに直結します。
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オフィスビルにおける研究では、適切な吹出口の選定により天井付近の熱だまりを解消し、上下温度差を0.5℃〜1℃程度に抑えることができることが確認されています。このような空調効率の向上は、エネルギー消費の削減だけでなく、居住者の快適性向上にも貢献します。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2021.3/0/2021.3_33/_pdf/-char/ja
吹出口のタイプ | 主な設置場所 | メリット | デメリット |
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アネモスタット型 | オフィス・商業施設 | 視覚的にすっきり、室温均一 | 直下で風を感じやすい |
床吹出口 | フリーアクセスフロア | 足元から温まる、風が穏やか | 床下空間が必要、施工が複雑 |
ノズル型 | 工場・体育館 | 遠くまで届く、騒音が少ない | 設置場所が限定される |
ライン型 | ペリメータゾーン | 幅広く拡散、エアカーテン効果 | 風の流れが弱くなる傾向 |