
ダンパー(Damper)は建築分野において極めて重要な役割を担う装置です。建築基準法によって設置が義務付けられているものもあり、建物の安全性確保に欠かせない存在となっています。建築業従事者にとって、各種ダンパーの特性を理解することは、適切な建物設計と法令遵守のために不可欠です 。
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制震ダンパーは地震の揺れを吸収し、建物の損傷を軽減する装置として住宅建築において広く採用されています。主にオイルダンパー、鋼材ダンパー、ゴムダンパーの3種類に分類されます 。
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オイルダンパーは筒状のシリンダー内にオイルとピストンを内蔵し、地震の揺れによってピストンが動くことでオイルの粘性抵抗を利用して振動エネルギーを吸収します。コンパクトで小さな揺れにも反応し、繰り返しの地震に対しても効果を発揮するという特徴があります 。
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鋼材ダンパーは銅・金・アルミ・合金などの金属材料を使用し、鋼材に力が加わって変形する際に発生するエネルギーを利用して揺れを吸収する仕組みです。高層ビルや学校など大規模な建築物での使用例が多く、コストが比較的安価であることも利点の一つです 。
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ゴムダンパーは特殊な粘弾性のあるゴムを制震材として活用し、ゴムの伸縮性を利用してエネルギーを吸収します。繰り返される地震に対して特に効果が期待できますが、気温変化による性能への影響や大型化による施工制約があることも考慮する必要があります 。
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防火ダンパー(FD)は建築基準法施行令第112条第16項により設置が義務付けられており、火災時の延焼防止という重要な役割を担っています 。
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防火ダンパーは火災による温度上昇を感知する温度ヒューズ(通常72℃設定)を内蔵し、設定温度に達すると自動的に羽根が閉鎖してダクト内の延焼拡大を防ぎます。設置箇所は防火区画をダクトが貫通する部分と、厨房など火気を使用する排気ダクト部分が主な対象となります 。
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防煙ダンパー(SD)は煙感知器と連動して作動し、火災時に発生する煙の拡散を防止する機能を持ちます。防煙・防火ダンパー(SFD)として両方の機能を兼ね備えた製品も多く採用されています 。
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建築基準法では防火ダンパーの材質に鉄製で1.5mm以上の厚さがある鋼板を使用し、一辺45cm以上の点検口や検査口の設置も義務付けています。定期的な保守点検も重要で、12条点検として年1回の実施が求められています 。
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空調用ダンパーは建物内の快適な空調環境を実現するために設置され、空気の流れを制御する重要な役割を果たします。風量調節用ダンパー(VD)は最も一般的で、ハンドル操作による手動式とモーター駆動による自動式があります 。
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モーターダンパー(MD)は遠隔操作による風量調節が可能で、気密・高気密仕様、耐圧仕様、防食仕様など建物の用途に応じた高機能製品が開発されています 。
逆流防止ダンパー(チャッキダンパー)は外部からの空気流入を遮断し、一方向のみの空気流れを確保する機能を持ちます。これらの空調用ダンパーは建物の省エネ性能向上にも寄与しており、適切な選定と設置が重要です 。
制震・免震・耐震構造の比較において、地震対策効果は「免震→制震→耐震」の順となりますが、コスト面では制震ダンパーが最も現実的な選択肢となっています 。
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制震ダンパーの設置費用は約50万円程度で、免震構造と比較して大幅にコストを抑えることができます。また、制震ダンパーはリフォームでの後付けも可能で、基礎部分に触れることなく柱や壁への設置により短期間での工事が実現できます 。
制震効果は震度5以上の大きな地震で特に威力を発揮し、繰り返し発生する地震や台風・強風による建物の揺れにも効果があることが実証されています 。ただし、小さな地震に対しては効果が限定的であることも理解しておく必要があります。
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建築基準法においてダンパー設置は安全確保の観点から厳格に規定されており、特に防災用ダンパーについては設置義務と定期点検が法的に義務付けられています 。
参考)防火ダンパーは何のために設置するの?
異種用途区画と竪穴区画を貫通するダクト、延焼のおそれがある部分を貫通するダクト、さらに油脂を含む蒸気を発生させる厨房設備の排気ダクトには防火ダンパーの設置が必須です 。
ガス系消火設備の防護区画における開口部には、消火剤放射前に閉鎖するための専用ダンパーも設置する必要があります。これらの法的要件を満たすためには、建築設計段階からダンパーの種類と設置位置を適切に計画することが不可欠です 。
建築業従事者は各種ダンパーの特性を十分に理解し、建物の用途・規模・構造に応じた最適な選定を行うことで、安全で快適な建築空間の実現に貢献できます。定期的なメンテナンスと点検体制の確立も含めて、総合的なダンパーシステムの構築が求められています 。
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