フライアッシュの効果とコンクリート強度改善への活用

フライアッシュの効果とコンクリート強度改善への活用

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フライアッシュの効果

フライアッシュによるコンクリート改善効果
💪
長期強度の向上

ポゾラン反応により長期間にわたって強度が増進

🌊
流動性の改善

ボールベアリング効果でワーカビリティが向上

🛡️
耐久性の強化

組織の緻密化により物質透過性が低減

フライアッシュによる長期強度発現の改善

フライアッシュがコンクリートの長期強度に与える効果は、ポゾラン反応による独特のメカニズムが関与している 。この反応では、フライアッシュ粒子から溶出したSi、Alイオンが周囲のC-S-H相に固定化され、Ca/Si比の低いC-S-H相に変化することで、セメント水和反応の過程で残存する水隙(毛細管空隙)が縮小し、空隙の微細化・分散化が進行する 。
参考)公益社団法人 日本コンクリート工学会

 

実際のデータによると、フライアッシュは長期にわたって反応を続け、20℃養生の材齢555日のもので42~54%反応することが確認されている 。材齢555日においてもポゾラン反応が進行するためのCa(OH)2は十分に残存しており、フライアッシュの種類によらず養生温度による差が大きいことが報告されている 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/cement/63/1/63_16/_pdf

 

普通セメントを使用したコンクリートと比較した場合、フライアッシュを使用したコンクリートは顕著な強度増進の長期的継続を確認できる 。呼び強度を同一とした場合には同等の初期強度発現性を得ることができ、初期強度が低いという従来の懸念も解消されている 。
参考)https://www.hepco.co.jp/corporate/environment/recycling_society/pdf/flyash_concrete.pdf

 

フライアッシュの流動性とワーカビリティ向上効果

フライアッシュは微細な球形粒子であるため、ボールベアリング効果によりコンクリートの流動性を向上させ、ワーカビリティを改善する 。この効果により、セメントの一部をフライアッシュで置換することで、同一スランプを得るための単位水量を減少させることが可能となる 。
参考)フライアッシュセメント

 

具体的には、良質なフライアッシュはそれ自体が球状な微粒子であり、ボールベアリング的作用により、コンクリートの流動性が改善され、単位水量が低減される 。フライアッシュ粒子の大部分は球形であることから、フライアッシュの混入によって流動性の改善効果が見られ、JISのⅡ種相当の品質であれば顕著な効果が期待できる 。
参考)https://i-const.jp/wp-content/themes/okazaki/images/flyashcement.pdf

 

吹付けコンクリートにおいても、球形微粒子であるフライアッシュI種の微粉末の混入により、材料分離抵抗性を向上し、吹付け作業時の低粉じん、低リバウンドといった施工性の改善効果が報告されている 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsceje/64/4/64_4_650/_pdf

 

フライアッシュによる耐久性向上とアルカリシリカ反応抑制

フライアッシュを混和したコンクリートの塩化物イオンの見掛けの拡散係数および比抵抗の測定結果から、耐久性評価が行われており、フライアッシュの混和により硬化体の緻密性が向上し、物質透過性が低減することにより耐久性が向上することが明らかになっている 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejmcs/67/2/67_2_309/_pdf/-char/ja

 

潜伏期間を被り位置での塩化物イオン濃度の平均値が1.2kg/m³となるまでの期間とした場合、フライアッシュ添加では約22年、普通ポルトランドセメント(OPC)では約14年という結果が得られており、フライアッシュを添加することによりOPCと比較して約30~60%潜伏期間が延びる効果を有している 。
アルカリシリカ反応の抑制効果については、フライアッシュを一定量以上混和したコンクリートがアルカリシリカ反応に対して強い抑制効果を持っていることが確認されている 。フライアッシュには、けい酸ソーダの生成反応を抑制し、アルカリシリカ反応を抑制する性質があり、レディーミクストコンクリートの規格JISA5308にもアルカリシリカ反応抑制対策として採用されている 。
参考)フライアッシュ|日本フライアッシュ協会

 

フライアッシュの水和熱抑制とひび割れ低減効果

セメントの一部をフライアッシュで置換することで、コンクリートの水和熱が減少し、フライアッシュはマスコンクリート工事における温度応力の低減に効果的である 。フライアッシュの量が増加するほど水和熱は減少し、この水和熱抑制効果によって熱応力ひび割れを抑制することができる 。
参考)フライアッシュをコンクリートに混合させた時の効果9個|主な種…

 

乾燥収縮の低減効果についても、フライアッシュを使用したコンクリートは単位水量の低減やポゾラン反応による組織の緻密化により、硬化後の収縮率が小さくなり、ひび割れの発生を抑制する 。フライアッシュの代替率が増加するほど、硬化後の乾燥収縮は減少し、乾燥収縮による拘束応力が緩和されるため、ひび割れの抑制に繋がる 。
低熱型フライアッシュコンクリートでは、管理材齢を56日または91日とすることで、水結合材比一定の条件でフライアッシュ置換率を15%以上とすることが可能であり、セメント代替による水和熱低減効果の向上が期待でき、温度ひび割れリスクを軽減できる 。
参考)https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2015/01/1422264165.pdf

 

フライアッシュ活用による建設コスト削減の独自戦略

建設業界においてフライアッシュを戦略的に活用することで、従来とは異なる角度からコスト削減を実現できる可能性がある。フライアッシュを内割置換した場合においても凍結融解抵抗性は確保されることが報告されており、適切な空気量の連行と所要の強度の付与によって高品質なコンクリートが得られる 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/coj/52/5/52_415/_pdf/-char/ja

 

セメント代替によるCO₂削減効果は、近年の環境規制強化により建設プロジェクトで重要視されている要素である 。フライアッシュを使用することで、環境負荷低減とコスト削減を同時に実現できるため、建設企業の競争力向上に寄与する 。
参考)https://www.skr.mlit.go.jp/etc/kotuzai/pdf/flyash.pdf

 

特に長期プロジェクトにおいては、フライアッシュの長期強度増進効果により、設計上の安全率を最適化することが可能となり、結果的に材料コストの削減につながる可能性がある 。また、施工性の向上により作業効率が改善され、人件費や工期短縮によるコスト削減効果も期待できる 。
フライアッシュのさらなる利用拡大について(詳細な技術解説)
国土交通省フライアッシュコンクリート利用に関するガイドライン(公式指針)
日本フライアッシュ協会による品質と性能基準(品質管理指標)