
フランジ用ボルトの規格は、主にJIS B 1217:2018「管フランジ用ボルト・ナット」とJIS B 1189:2014「六角頭ボルト(フランジ付き)」によって定められています。
JIS B 1189:2014では、以下の3つの規格体系が存在します。
特にJIS附属規格2種は、国内の建築現場で最も多く使用されており、同じネジ径でも六角対辺寸法が異なります。例えばM6の場合、ISO品では8mmですが、附属2種品では10mmとなっています。
重要なポイント 📌
JIS規格におけるフランジ用ボルトの寸法は、フランジの圧力等級と呼び径によって決定されます。
JIS 5K/10K/20K対応寸法表(主要サイズ)
フランジ呼び径 | JIS 5K | JIS 10K | JIS 20K |
---|---|---|---|
25A | M10×50 (4本) | M16×55 (4本) | M16×60 (4本) |
40A | M12×50 (4本) | M16×60 (4本) | M16×70 (4本) |
50A | M12×55 (4本) | M16×65 (4本) | M20×75 (4本) |
80A | M16×60 (8本) | M16×70 (8本) | M20×80 (8本) |
100A | M16×65 (8本) | M20×75 (8本) | M22×90 (8本) |
150A | M16×70 (8本) | M20×80 (8本) | M24×100 (12本) |
フランジボルト2種の標準寸法
呼び径 | 六角対辺 | 座面外径 | 高さ | 主な長さ範囲 |
---|---|---|---|---|
M6 | 10mm | 14.0mm | 6.0mm | 10~70mm |
M8 | 12mm | 17.5mm | 8.0mm | 12~100mm |
M10 | 14mm | 21.0mm | 10.0mm | 14~100mm |
M12 | 17mm | 25.0mm | 11.5mm | 18~140mm |
ボルト長さの選定では、フランジ厚、パッキン厚、ナット厚、座金厚を考慮し、ナット貫通後3~5山程度のねじ山が出るように計算します。
フランジ接合部の信頼性確保には、ASME PCC-1「Guidelines for Pressure Boundary Bolted Flange Joint Assembly」に基づく締付管理が重要です。
ASME PCC-1による締付手順 🔄
締付パターンの基本原則
温度補正係数の適用 🌡️
使用温度によってボルトの締付トルクを補正する必要があります。
実際の施工では、トルクレンチによる管理に加え、ボルト伸び測定やナットの回転角度管理も併用することで、より確実な締付品質を確保できます。
フランジ用ボルトの材質選定は、使用環境と要求性能に基づいて決定します。建築設備では主に以下の材質が使用されます。
一般鋼材(炭素鋼)
ステンレス鋼材
表面処理の選定指針 ⚙️
使用環境 | 推奨処理 | 耐用年数目安 |
---|---|---|
屋内乾燥環境 | ユニクロメッキ | 10-15年 |
屋内湿潤環境 | クロメートメッキ | 15-20年 |
屋外一般環境 | 溶融亜鉛メッキ | 20-30年 |
海岸地域 | ステンレス鋼 | 30年以上 |
意外に知られていない材質選定のポイント 💡
通常の設計では見落とされがちですが、異種金属接触による電食も重要な考慮事項です。アルミニウム製フランジには、絶縁ワッシャーの使用や、アルミニウム合金ボルトの採用を検討する必要があります。また、高温環境(150℃以上)では、クリープ変形を考慮した定期的な増し締めが必要となるため、保守計画に組み込む必要があります。
建築現場での実務では、規格通りの選定だけでなく、施工性や維持管理性も考慮した選定が重要です。
配管系統別の選定基準
施工効率を向上させる選定テクニック ⚡
品質管理のチェックポイント
コスト最適化の考え方 💰
検討項目 | 初期コスト | ライフサイクルコスト |
---|---|---|
材質グレード | ステンレス > 鋼材 | 長期的にはステンレスが有利 |
表面処理 | 溶融亜鉛 > クロメート | 更新頻度を考慮すると溶融亜鉛が有利 |
規格統一 | 一時的なコスト増 | 保守部品の共通化でコスト削減 |
特に大規模建築物では、将来の更新工事を見据えて、一般的でない特殊規格の使用を避け、汎用性の高い規格を選定することが、長期的なコスト削減につながります。
日本建築学会の調査によると、適切な規格選定により、建物のライフサイクル全体で配管保守コストを約15-25%削減できるという報告もあります。設計段階での慎重な検討が、長期的な建物価値の維持に直結することを、建築従事者は常に意識する必要があります。