フランジ用ボルト規格と締付管理、JIS規格寸法表

フランジ用ボルト規格と締付管理、JIS規格寸法表

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フランジ用ボルト規格と選定基準

フランジ用ボルト規格の基本情報
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JIS規格の種類と特徴

フランジ用ボルトには複数のJIS規格があり、用途に応じて適切な選定が必要

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寸法規格の重要性

フランジ呼び径とボルト寸法の対応関係を正確に把握することが施工品質の鍵

締付管理と品質保証

ASME PCC-1規格による締付管理で、長期的な接合部の信頼性を確保

フランジ用ボルトのJIS規格体系と分類

フランジ用ボルトの規格は、主にJIS B 1217:2018「管フランジ用ボルト・ナット」とJIS B 1189:2014「六角頭ボルト(フランジ付き)」によって定められています。
JIS B 1189:2014では、以下の3つの規格体系が存在します。

  • ISO国際規格準拠品(ISO 15071及び15072準拠)
  • JIS附属規格1種(日本独自規格)
  • JIS附属規格2種(日本独自規格、最も普及)

特にJIS附属規格2種は、国内の建築現場で最も多く使用されており、同じネジ径でも六角対辺寸法が異なります。例えばM6の場合、ISO品では8mmですが、附属2種品では10mmとなっています。
重要なポイント 📌

  • ISO規格品と日本独自規格品では寸法が異なる
  • 設計時には使用する規格を明確に指定する必要がある
  • 現場での取り違いを防ぐため、事前確認が必須

フランジ用ボルト寸法表と適合基準

JIS規格におけるフランジ用ボルトの寸法は、フランジの圧力等級と呼び径によって決定されます。
JIS 5K/10K/20K対応寸法表(主要サイズ)

フランジ呼び径 JIS 5K JIS 10K JIS 20K
25A M10×50 (4本) M16×55 (4本) M16×60 (4本)
40A M12×50 (4本) M16×60 (4本) M16×70 (4本)
50A M12×55 (4本) M16×65 (4本) M20×75 (4本)
80A M16×60 (8本) M16×70 (8本) M20×80 (8本)
100A M16×65 (8本) M20×75 (8本) M22×90 (8本)
150A M16×70 (8本) M20×80 (8本) M24×100 (12本)

フランジボルト2種の標準寸法

呼び径 六角対辺 座面外径 高さ 主な長さ範囲
M6 10mm 14.0mm 6.0mm 10~70mm
M8 12mm 17.5mm 8.0mm 12~100mm
M10 14mm 21.0mm 10.0mm 14~100mm
M12 17mm 25.0mm 11.5mm 18~140mm

 

ボルト長さの選定では、フランジ厚、パッキン厚、ナット厚、座金厚を考慮し、ナット貫通後3~5山程度のねじ山が出るように計算します。

フランジ用ボルト締付管理とASME規格

フランジ接合部の信頼性確保には、ASME PCC-1「Guidelines for Pressure Boundary Bolted Flange Joint Assembly」に基づく締付管理が重要です。
ASME PCC-1による締付手順 🔄

  1. 初期締付:手締めでボルト全本を均等に締める
  2. 予備締付:規定トルクの30-50%で対角順に締付
  3. 本締付:規定トルクで最低2回パスを実施
  4. 最終確認:全ボルトのトルク値を再確認

締付パターンの基本原則

  • 4穴フランジ:十字締付(1→3→2→4)
  • 8穴フランジ:スター締付(対角線順)
  • 12穴以上:時計回りの対称締付

温度補正係数の適用 🌡️
使用温度によってボルトの締付トルクを補正する必要があります。

  • 常温(20℃):補正なし
  • 高温(100℃以上):トルク値を10-15%増加
  • 低温(-20℃以下):トルク値を5-10%減少

実際の施工では、トルクレンチによる管理に加え、ボルト伸び測定やナットの回転角度管理も併用することで、より確実な締付品質を確保できます。

 

フランジ用ボルト材質規格と強度区分

フランジ用ボルトの材質選定は、使用環境と要求性能に基づいて決定します。建築設備では主に以下の材質が使用されます。

 

一般鋼材(炭素鋼)

  • 強度区分4.8:一般配管用(引張強度400N/mm²)
  • 強度区分8.8:中圧配管用(引張強度800N/mm²)
  • 強度区分10.9高圧配管用(引張強度1000N/mm²)
  • 強度区分12.9:超高圧用(引張強度1200N/mm²)

ステンレス鋼材

  • SUS304:一般耐食用途(A2-70相当)
  • SUS316:高耐食用途(A4-80相当)
  • SUS316L:溶接構造用低炭素材

表面処理の選定指針 ⚙️

使用環境 推奨処理 耐用年数目安
屋内乾燥環境 ユニクロメッキ 10-15年
屋内湿潤環境 クロメートメッキ 15-20年
屋外一般環境 溶融亜鉛メッキ 20-30年
海岸地域 ステンレス 30年以上

意外に知られていない材質選定のポイント 💡
通常の設計では見落とされがちですが、異種金属接触による電食も重要な考慮事項です。アルミニウム製フランジには、絶縁ワッシャーの使用や、アルミニウム合金ボルトの採用を検討する必要があります。また、高温環境(150℃以上)では、クリープ変形を考慮した定期的な増し締めが必要となるため、保守計画に組み込む必要があります。

 

フランジ用ボルト選定における実務上の注意点

建築現場での実務では、規格通りの選定だけでなく、施工性や維持管理性も考慮した選定が重要です。

 

配管系統別の選定基準

  • 給水配管:SUS304製、JIS 10K対応
  • 排水配管:SS400製、亜鉛メッキ処理、JIS 5K対応
  • 冷温水配管:SUS316製、JIS 10K対応
  • 蒸気配管:高張力鋼製、JIS 20K対応

施工効率を向上させる選定テクニック

  1. 統一規格の採用:現場で使用するボルト規格を可能な限り統一
  2. 余長の標準化:ナット貫通長を3-5山で統一
  3. 工具の共通化:六角対辺寸法を標準工具に合わせて選定

品質管理のチェックポイント

  • ボルト頭部の強度区分表示確認
  • ねじ山の損傷・変形チェック
  • 座面の平坦性確認
  • 材質証明書との照合

コスト最適化の考え方 💰

検討項目 初期コスト ライフサイクルコスト
材質グレード ステンレス > 鋼材 長期的にはステンレスが有利
表面処理 溶融亜鉛 > クロメート 更新頻度を考慮すると溶融亜鉛が有利
規格統一 一時的なコスト増 保守部品の共通化でコスト削減

特に大規模建築物では、将来の更新工事を見据えて、一般的でない特殊規格の使用を避け、汎用性の高い規格を選定することが、長期的なコスト削減につながります。

 

日本建築学会の調査によると、適切な規格選定により、建物のライフサイクル全体で配管保守コストを約15-25%削減できるという報告もあります。設計段階での慎重な検討が、長期的な建物価値の維持に直結することを、建築従事者は常に意識する必要があります。