高圧配管設備工事における接続方法と溶接施工技術の基礎

高圧配管設備工事における接続方法と溶接施工技術の基礎

記事内に広告を含む場合があります。

高圧配管施工における基礎技術

高圧配管施工の重要ポイント
🔧
接続方法の選択

溶接・フランジ・ねじ込みから最適な接続方法を選定

溶接施工技術

高圧環境に対応した信頼性の高い溶接技術

🏭
プレファブ製作

現場作業効率化のための事前組立技術

高圧配管接続方法の種類と特徴

高圧配管システムでは、使用圧力や設置環境に応じて最適な接続方法を選択することが重要です。主要な接続方法には溶接接続、フランジ接続、ねじ込み接続があり、それぞれ異なる特性を持っています。

 

溶接接続の特徴
溶接接続は高圧配管において最も信頼性が高い接続方法とされています。管同士や配管部材が一体化するため、極めて高い気密性を実現できます。特に1MPaを超える高圧環境や、10MPa、20MPa、さらには70MPa、80MPaの超高圧ガス配管では溶接接続が必須となります。

 

  • 長所:漏れがなく信頼性が極めて高い、どんな高圧でも使用可能、接続部が小さくシンプル
  • 短所:施工が難しい、前処理や準備に工数がかかる、溶接検査が必要な場合がある

フランジ接続の適用場面
フランジ接続は機器の取り換えが必要な箇所や、定期的なメンテナンスが想定される部分に適用されます。ボルト締めにより分解・組立が可能で、配管部材の交換作業を効率化できます。

 

ねじ込み接続の用途
比較的低圧の配管や小径管において使用される接続方法です。施工が簡単で特別な技能を必要としませんが、高圧環境では使用が制限されます。

 

高圧配管溶接施工技術のポイント

高圧配管の溶接施工では、高い技術力と品質管理が要求されます。溶接方式は主に「差し込み溶接」と「突き合わせ溶接」の2つに分類されます。

 

差し込み溶接の技術要点
差し込み溶接は、ソケットやフランジなど管外径より大きな内径を持つ継ぎ手に管を挿入してから溶接する方式です。挿入深さの管理と適切な溶接棒の選定が重要なポイントとなります。

 

突き合わせ溶接の施工手順
突き合わせ溶接では、管同士の接続端面を精密に加工し、突き合わせて溶接を行います。開先加工の精度が溶接品質に大きく影響するため、専用の切断・研磨機械を使用した高精度な前処理が必要です。

 

材質別の溶接技術
SUS316L BA材などのステンレス鋼配管では、炭素の拡散を防ぐための適切な熱管理が重要です。特に3/8インチ径の細管では、入熱量の制御により歪みを最小限に抑える技術が求められます。

 

溶接後の熱処理と検査
高圧配管では溶接後の熱処理が必要となる場合があります。応力除去焼鈍により残留応力を軽減し、長期使用における信頼性を確保します。また、X線検査や浸透探傷検査による非破壊検査により、溶接部の健全性を確認することが重要です。

 

高圧配管プレファブ製作の効率化手法

プレファブ(prefabricated)とは、本来現地で組み立てる配管部材を事前に工場で組み立て、完成品として現地に納入する手法です。高圧配管工事においてプレファブ技術を活用することで、大幅な工期短縮と品質向上を実現できます。

 

プレファブ製作の利点
工場での製作環境は現場と比較して温度・湿度が安定しており、高精度な溶接作業が可能です。また、専用の治具や検査設備を使用することで、現場施工では困難な複雑な形状の配管ユニットも効率的に製作できます。

 

電力会社向けプレファブの特殊技術
電力会社向けの高圧配管では、電事施工法に適合する短い鋼管部分も含めたプレファブ製作が行われています。調達困難な特殊部材についても自社製作により対応し、一体的な品質管理を実現しています。

 

ガス会社向けプレファブの技術要素
ガス会社向けでは、袖管と配管ピグ誘導用のバーを取り付けたバー袖付ティーや、分岐部からノズル管までを一体化したノズル付ティーなどの特殊なプレファブ製品が製作されています。配管ピグとは圧力で配管内を通すクリーニングや検査機器であり、これらの機能を考慮した設計が重要です。

 

内外面塗装を含む一体管理
プレファブ製作では、溶接から内外面の特殊塗装まで一貫した管理が可能です。現場での塗装作業と比較して、工場での塗装は環境条件が安定しており、より高品質な仕上がりを実現できます。

 

高圧配管設備工事における安全管理

高圧配管設備工事では、作業者の安全確保と周辺環境への影響防止が最重要課題となります。特に14.7MPaの高圧ガスボンベから1MPa未満に減圧する過程や、超高圧環境での施工では、厳格な安全管理体制が必要です。

 

圧力管理と安全装置
高圧配管システムでは、各段階で適切な圧力調整を行います。14.7MPaから0.1~0.3MPa程度への減圧過程では、多段階減圧弁システムにより段階的に圧力を下げ、急激な圧力変化による配管への負荷を防ぎます。

 

作業環境の安全対策
溶接作業では換気設備の設置により、溶接ヒュームや有害ガスの除去を徹底します。また、高圧ガス取扱作業では、ガス検知器の設置により作業環境の安全性を常時監視します。

 

緊急時対応手順
高圧配管からのガス漏れや圧力異常が発生した場合の緊急遮断手順を明確化し、作業者全員に周知徹底します。緊急遮断弁の位置確認と操作訓練を定期的に実施することで、迅速な対応を可能にします。

 

個人保護具の適切な選定
高圧環境での作業では、耐圧性能を持つ保護具の着用が必要です。特に顔面保護具や耐切創手袋については、使用圧力に応じた適切な性能のものを選定し、定期的な点検・交換を実施します。

 

高圧配管耐圧試験と品質保証手順

高圧配管設備の安全性と信頼性を確保するため、施工完了後の耐圧試験と気密試験は必須の工程です。これらの試験により、設計圧力での長期使用に耐えうる品質を検証します。

 

耐圧試験の実施手順
耐圧試験では、使用圧力の1.5倍以上の試験圧力を段階的に加圧し、規定時間保持します。SWL継手を使用したベンダー曲げ配管では、曲げ部での応力集中を考慮した試験圧力の設定が重要です。

 

気密試験による微小漏れの検出
気密試験では、試験圧力下での微小な圧力降下を測定することで、肉眼では確認できない微小漏れを検出します。特に70MPa、80MPaの超高圧配管では、わずかな漏れも重大な事故につながる可能性があるため、高精度な圧力計による厳密な測定が必要です。

 

検査記録と品質保証書類
耐圧試験・気密試験の結果は詳細に記録し、品質保証書類として保管します。試験圧力、保持時間、圧力降下量、環境温度などのデータを記録し、将来のメンテナンス計画立案に活用します。

 

非破壊検査との組み合わせ
溶接部の健全性確認では、耐圧試験に加えて放射線透過試験や超音波探傷試験を実施します。内部欠陥の有無を確認することで、より高い品質保証レベルを実現します。

 

長期品質保証体制
配管設備の供用開始後も、定期的な点検と再試験により品質を維持します。使用環境や運転条件の変化に応じて、点検頻度や試験項目の見直しを行い、継続的な安全性確保を図ります。