

点検記録を紙で保存しているだけでは、3年後に書類の不備で書類送検されることがあります。
ゴンドラ設備の法定点検は、「ゴンドラ安全規則」(昭和47年労働省令第35号)を中心に、労働安全衛生法の体系のなかで義務づけられています。この規則は、高所作業中のゴンドラ墜落事故を防ぐことを目的として昭和47年に制定されたもので、建築業はもちろんビルメンテナンス業・窓ガラス清掃業など、ゴンドラを使用するすべての事業者が対象です。
ゴンドラ設備の構造を簡単に整理しておきましょう。ゴンドラとは、建物の外壁に設置した突梁(つきりょう)やアームからワイヤロープで吊り下げた作業床(かごの部分)のことです。清掃員や外壁補修の職人がその作業床に乗り込み、建物の側面を上下に移動しながら作業を行います。東京の高層ビルで頻繁に目にする、ビルの壁面をゆっくり移動しているあの設備です。
法定点検を定める大もとは労働安全衛生法第45条であり、そこから「ゴンドラ安全規則第4章(第21条〜第23条)」に点検の具体的な義務が落とし込まれています。ゴンドラは特定機械に分類されるため、製造時や使用開始時の検査証が必要なのに加え、稼働中も継続的な点検義務が課されます。点検の種類が複数あり、かつそれぞれ根拠条文が異なる点が、現場で混乱を招きやすいところです。
つまり「設備を買って設置したら終わり」ではありません。
参考:ゴンドラ安全規則の条文全文(e-Gov 法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000035
ゴンドラ安全規則第21条第1項が定める定期自主検査は、「1ヶ月以内ごとに1回」の実施が義務です。これは文字通り、毎月少なくとも1回は点検を行わなければならないということです。月1回の点検とは、カレンダー1枚ぶんの間隔(最長31日)を超えてはいけない、と理解してください。
検査対象は以下の3つの区分に分かれています。
月1回が原則です。ただし、1ヶ月を超える期間ゴンドラをまったく使用しない場合に限り、その不使用期間中は実施を省略できます(同条ただし書き)。省略が認められるのは本当に「まったく使わない期間」だけです。使用を再開する際には、再開前に必ず上記の3項目を点検しなければなりません。
現場でよくある誤解として、「先月点検したから今月は省略できる」という思い込みがあります。これは完全に誤りです。1ヶ月以内ごとに1回というのはあくまでも「最低ライン」であり、使用頻度や設備の老朽度によって自主的に頻度を上げることは何ら問題ありません。むしろ、毎日使用する現場では月1回では不十分と感じるケースも少なくないため、作業開始前点検(第22条)と組み合わせることで安全性を高めている現場が多いです。
参考:ゴンドラ安全規則 第4章 定期自主検査等(産業安全研究所)
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-20-4-0.htm
月1回の定期自主検査とは別に、ゴンドラを使用する日の「作業を開始する前」にも点検が義務づけられています(ゴンドラ安全規則第22条)。これが作業開始前点検です。
毎日の点検が基本です。点検しなければ、その日の作業を開始することができません。
具体的な点検項目は6項目あります。
さらに、強風・大雨・大雪といった悪天候の後に作業を行う場合は、通常の6項目のうち「取付け部の状態」「安全装置・ブレーキ・制御装置の機能」「ワイヤロープが通っている箇所の状態」の3項目を追加で確認しなければなりません(同条第2項)。
ここで「悪天候」の定義を押さえておく必要があります。労働安全衛生法上の「強風」とは、10分間の平均風速が毎秒10メートル以上の風のことです。体感として、傘が裏返りはじめる風速がおおよそ10m/s前後と言われており、「少し風が強いかな」と感じる程度でも法的な「悪天候」の基準を超えている可能性があります。「大雨」は1回の降雨量が50mm以上、「大雪」は1回の降雪量が25cm以上です。
参考:ゴンドラを使用できる天候条件(日本ビソー)
https://www.bisoh.co.jp/faq/detail/6/
定期自主検査や作業開始前点検を実施するだけでは不十分です。「検査を行ったときは、その結果を記録し、これを3年間保存しなければならない」(ゴンドラ安全規則第21条第3項)という保存義務が別途課されています。
点検の実施と記録の保存は、セットで義務です。
点検記録に含めるべき内容としては、点検日・点検者の氏名・点検箇所・点検結果(良好 / 不具合 / 処置済み)・異常があった場合の処置内容などが求められます。北海道建設業協会が公開している「可搬型ゴンドラ作業開始前点検記録表」では、上部固定部・吊ワイヤロープ・垂直親綱・電線・本体の5区分で合計25項目以上の点検項目が示されており、実務上はこうした既製フォーマットを活用している現場が多いです。
3年間とは、たとえば今日(2026年3月)点検した記録であれば、2029年3月まで保管義務があるということです。段ボール3箱ぶん程度の書類量になる現場もあります。
記録保存の漏れが深刻なのは、事故が発生した際に「過去の点検が適切に行われていたか」の証明が記録のみで行われるからです。点検をしていても記録がなければ、法的には「していない」と同等に扱われるリスクがあります。過去には定期自主検査違反の疑いで書類送検された事例もあります。点検記録をデジタル管理(安全管理クラウドサービスなど)に移行することで、保存漏れと検索性の問題を一度に解決できます。
参考:ゴンドラの点検義務について(日本ビソー)
https://www.bisoh.co.jp/faq/detail/25/
法定点検を怠るリスクは金銭的なものだけではありません。知っておくべき罰則の全体像を整理します。
①定期自主検査・記録保存の不履行
労働安全衛生法第119条に基づき、「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます。点検の未実施だけでなく、記録を残さない・保存期間中に廃棄した場合も同様です。罰則は厳しいですね。
②異常を発見したのに補修しなかった場合
ゴンドラ安全規則第23条は、点検で異常を認めたときは「直ちに補修しなければならない」と定めています。異常を見つけても放置して作業を続けた場合、同じく6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります。
③ゴンドラ取扱い業務特別教育の未実施
ゴンドラの操作業務に労働者を就かせる際、事業者はゴンドラ取扱い業務の特別教育を事前に実施しなければなりません(ゴンドラ安全規則第12条)。特別教育の内容は、学科5時間・実技4時間の計9時間で構成されます。未受講者をゴンドラ作業に従事させた場合も、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が適用されるおそれがあります。
特別教育は事業者責任での実施が条件です。注目すべきは「災害が発生していなくても」処罰対象となる点です。現場では「ベテランだから大丈夫」という判断で特別教育の記録を残していないケースがありますが、これは大きな法的リスクです。
| 違反内容 | 根拠条文 | 罰則 |
|---|---|---|
| 定期自主検査の未実施・記録未保存 | 安衛法第119条、ゴンドラ則第21条 | 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 異常発見後の補修義務違反 | 安衛法第119条、ゴンドラ則第23条 | 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 特別教育の未実施 | 安衛法第119条、ゴンドラ則第12条 | 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
参考:特別教育の未実施に関する罰則(建設現場)
https://www.to-wa.co.jp/2022/09/12/建設現場では特別教育を受講せず、無資格作業をした場合の罰則は/
これは現場で特に見落とされやすいポイントです。多くの建築業従事者は「1ヶ月以上使わなかったら月例点検が省略できる」という部分は知っていますが、その後の「再開前点検」を忘れているケースが散見されます。
再開前に点検しなければ、作業開始は違法です。
ゴンドラ安全規則第21条第2項には、「1ヶ月をこえる期間使用しなかったゴンドラについては、その使用を再び開始する際に」定期自主検査と同じ3項目の点検を行わなければならないと明記されています。たとえば冬季の3ヶ月間ゴンドラを倉庫に眠らせていた場合、春に取り出して「動くかどうか試してみよう」と動かした瞬間に点検義務が発生します。動かすより先に点検が必要なのです。
この「再開前点検」は月例点検と同じ3項目(安全装置・ブレーキ・制御装置 / 突梁・アーム・作業床 / 昇降装置・配線・配電盤)を確認します。再開前点検の結果も記録し、3年間保存する義務が生じる点も忘れてはなりません。
実際の現場では、年1〜2回しか使わない可搬型ゴンドラを倉庫に保管している会社が少なくありません。年1回使うたびに再開前点検 → 使用中は毎日の作業開始前点検 → 月1回の定期自主検査という流れが必要です。使用頻度が低いゴンドラほど点検の流れが抜けやすいため、あらかじめ「ゴンドラ使用チェックリスト」を現場に用意しておくと管理ミスを防ぎやすくなります。チェックリストに「再開前点検」の欄を設けておくだけでも、現場担当者の意識が変わります。
参考:ゴンドラ安全規則 第5章 性能検査(産業安全研究所)
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-20-5-0.htm

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