性能検査とクレーンと荷重試験と定格荷重

性能検査とクレーンと荷重試験と定格荷重

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性能検査とクレーン

性能検査 クレーン:押さえる全体像
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性能検査の目的

経年劣化で強度・性能が下がる特定機械等を、第三者検査で定期確認して危害を防ぐ(制度の狙いを理解)。

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定期自主検査との線引き

性能検査=検査証の有効期間更新に直結、定期自主検査=事業者の安全管理として継続実施(頻度・責任主体が違う)。

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荷重試験・定格荷重の扱い

年次の荷重試験、性能検査の荷重試験、落成検査の荷重試験は倍率・目的が異なるため混同しない。

性能検査 クレーンの法令と検査証の有効期間


現場で最初に押さえるべきは、性能検査が「点検の一種」ではなく、クレーン検査証の有効期間更新に直結する制度だという点です。クレーン等安全規則では、性能検査に合格したクレーンについて、登録性能検査機関がクレーン検査証の有効期間を更新すると定めています(結果により2年未満、または2年を超え3年以内で更新期間を定められる)。
逆に言えば、検査証の有効期間が切れた状態で特定機械等を使い続けることは法令違反になり得ます。ボイラー・クレーン安全協会のFAQでも、有効期間満了までに性能検査を受けて更新しないと「引き続き使用することが出来なくなります」と説明されています。
また「どのクレーンが性能検査対象か」を曖昧にすると、発注者・元請・協力会社の間で責任の押し付け合いが起きがちです。ボイラー・クレーン安全協会の整理では、つり上げ荷重が3トン以上のクレーン、3トン以上の移動式クレーンなどが性能検査を受ける対象(特定機械等)として挙げられています。


参考)https://jcmanet.or.jp/bunken/wp-content/uploads/2024/2024-08.pdf

建築・設備工事では、現場持ち込みの移動式クレーンだけでなく、工場や施設の天井クレーンが工事に絡むケースもあります。作業計画の段階で「対象機械か」「検査証の有効期間はいつまでか」を確認し、必要なら更新時期を工程に織り込むのが安全側です。

参考:クレーン等安全規則(性能検査・定期自主検査・検査証の有効期間の条文が確認できます)
厚生労働省:クレーン等安全規則(条文)

性能検査 クレーンの荷重試験と定格荷重(倍率・目的の違い)

「荷重試験」と一口に言っても、落成検査・定期自主検査・性能検査で意味が変わります。クレーン等安全規則では、性能検査は各部の構造・機能の点検に加えて荷重試験を行うとされ、荷重試験の実施方法は定期自主検査(年次)の規定を準用しています。
この“準用”がポイントで、年次の荷重試験は「定格荷重に相当する荷重」をつり、つり上げ・走行・旋回・トロリ横行等を「定格速度」により作動させる試験として書かれています。
一方、設置直後の落成検査では荷重試験の倍率が別で、定格荷重の1.25倍相当の荷重をつって作動させることが明記されています。


参考)https://www.ffpri.go.jp/koukaijouhou/hyouka/documents/jikohyouka-sheet-h24.pdf

ここを混同すると、「性能検査も1.25倍を必ずやるはずだ」「年次も1.25倍でやった方が安全だ」といった誤解が現場に持ち込まれ、準備する試験荷や玉掛用具、立入規制、工程の見積りがズレます。まずは“どの検査の荷重試験か”を言葉で揃えるのが、手戻り防止として効きます。

実務上の注意点として、荷重試験を現場で行う場合は「試験用の荷の準備」そのものがリスクとコストになります。クレーン等安全規則では、落成検査や性能検査を受ける者は、荷重試験のための荷及び玉掛用具を準備しなければならないと規定されています。

つまり、検査に“人が来る”だけでは終わらず、「試験の段取り(荷・玉掛・立会い・周囲規制)」までが検査受検側の責任範囲に入ってきます。

性能検査 クレーンと定期自主検査(年次・月次・作業開始前)の切り分け

性能検査と並行して必ず整理したいのが、定期自主検査(年次・月次)と作業開始前点検です。クレーン等安全規則では、設置後1年以内ごとに1回の定期自主検査(年次)を事業者に義務付け、原則として荷重試験も行うことが求められています。
さらに、クレーンについて1月以内ごとに1回(いわゆる月次)の自主検査項目が列挙され、ワイヤロープやつり具、ブレーキ・クラッチ、電気系統などの異常有無を確認することが求められています。
そして見落としやすいのが、作業開始前の点検です。クレーン等安全規則では、その日の作業を開始する前に、巻過防止装置、ブレーキ、クラッチ、コントローラーの機能、レール状態、ワイヤロープが通る箇所の状態などを点検することが定められています。

この3階層(開始前・月次・年次)を“性能検査”と混ぜて運用すると、記録が欠落して事故後に説明不能になります。年次・月次(開始前点検を除く)については、結果を記録し3年間保存する義務も規定されています。

また、年次の荷重試験には例外もあります。直近2か月以内に性能検査に基づく荷重試験を行ったクレーン、または自主検査日後2か月以内に検査証の有効期間が満了するクレーンなどは、年次の荷重試験を省略できる旨が規定されています。

この例外規定は「性能検査の前後で年次荷重試験を二重にやってしまう」無駄を減らせますが、逆に“省略できる条件”を満たしていないのに省略してしまう事故が起きやすいので、検査証の満了日と実施日を紙で突合する運用が現実的です。

性能検査 クレーンの申請・立会い・準備(当日の段取り)

性能検査は「登録性能検査機関」等が行い、合格すれば検査証の有効期間更新につながる、という流れが制度の骨格です。
ボイラー・クレーン安全協会の説明でも、性能検査は第三者検査機関による定期的な検査として義務づけられた趣旨が述べられています。
段取り面で重要なのは、当日の現場が“検査しやすい状態”になっているかです。クレーン等安全規則では、性能検査を受ける場合も(準用により)荷重試験のための荷および玉掛用具の準備が求められ、また必要があると認めるときは安全装置の分解、塗装の一部剥離、リベットの抜き出しや穴あけ、ワイヤロープの一部切断などを命じ得る旨も規定されています。

この条文は、現場的には「検査のために想定外の分解・再組立て・復旧が発生し得る」ことを意味します。

そのため、性能検査の“当日”だけを押さえるのではなく、工程計画としては次の余裕を見込みます。条文上、命じ得る措置が広いので、復旧の材料・手配・作業者の確保まで含めて「検査日=作業停止日」になり得ると見ておく方が安全側です。

また、検査に立ち会う義務も規定されているため、現場代理人や設備担当など、判断できる人員をあらかじめ配置しておくと、当日判断の停滞が減ります。

参考:性能検査が必要な理由・対象(特定機械等の整理、受けない場合の扱いがまとまっています)
ボイラー・クレーン安全協会:性能検査等制度 FAQ

性能検査 クレーンの独自視点:検査を“工程リスク”として管理する(強風・地震後点検も含む)

検索上位の記事は「性能検査と定期自主検査の違い」や「点検項目」に寄りがちですが、建築従事者にとって本質的なのは、性能検査を“工程リスク”として扱うことです。性能検査に合格し検査証の有効期間が更新されなければ、特定機械等は継続使用できないとされているため、工程終盤で期限切れが発覚すると、クレーンを使う作業が止まり、クリティカルパスに直撃します。
したがって、現場配車や揚重計画の段階で「検査証の満了日」と「性能検査の受検予定」を、作業計画書・機械搬入計画のチェック項目に組み込むのが、事故防止だけでなく納期リスクの低減にも直結します。
さらに、現場は“定期”だけでなく突発事象でも点検が走ります。クレーン等安全規則では、屋外設置のクレーンは瞬間風速毎秒30メートルを超える風が吹いた後に作業する場合、また中震以上の震度の地震の後に作業する場合、あらかじめ各部分の異常有無の点検を行うことが定められています。

この規定は、台風・地震の多い日本では実務に刺さります。性能検査・年次・月次をきちんと回していても、強風・地震後点検の記録が抜けると「なぜ再開したのか」を説明できません。

工程管理の小技としては、強風・地震後点検を“現場日報のテンプレ”に入れてしまうのが効きます。条文に沿って「事象(強風/地震)」「点検者」「点検箇所」「異常の有無」「補修の要否」を固定欄にし、異常があれば補修する義務があることも合わせて明文化しておくと、属人化しにくくなります。

また、性能検査の意義は「更新のため」だけではありません。ボイラー・クレーン安全協会の説明にもある通り、使用期間の経過に伴う強度・性能の劣化による危害を防止するため、第三者の性能検査が必要とされています。

現場感覚で言い換えるなら、定期自主検査が“日常の体調管理”、性能検査が“外部の精密検査”に近い位置づけです。両方が揃って初めて、機械・人・工程の安全側の余裕が作れます。




臨床検査 2016年 5月号 今月の特集1 体腔液の臨床検査/今月の特集2 感度を磨く 検査性能の追求