グラスウール特徴と断熱性能の高い施工方法

グラスウール特徴と断熱性能の高い施工方法

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グラスウールの特徴と性能

グラスウールとは
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環境にやさしい素材

リサイクルガラスを主原料とし、繰り返し再利用可能な環境性能の高い断熱材です。

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優れた不燃性

ガラス由来のため高い不燃性を持ち、火災時も有毒ガスを発生させません。

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断熱性と吸音性

繊維間の無数の空気層により、優れた断熱性能と吸音性能を発揮します。

グラスウールの基本的特徴と製造方法

グラスウールは、ガラスを主原料とする人造繊維で、断熱材として広く使用されています。その名前の通り、ガラスから作られた「ウール(羊毛)」のような見た目と質感を持っています。

 

製造方法は、以下のプロセスで行われます。

  1. 原料調合: リサイクルガラスや珪砂などの原料を計量・混合
  2. 溶融: 混合原料を1,200〜1,400℃の高温で溶解
  3. 繊維化: 溶けたガラスを遠心力で繊維状に加工(綿菓子を作る原理と似ています)
  4. バインダー添加: 繊維を固めるための結合剤を吹き付け
  5. 成形: オーブンで乾燥させ、規定の密度・厚さに成形
  6. 切断・梱包: 必要なサイズにカットし、圧縮梱包

グラスウールの最大の特徴は、複雑に絡み合った細かいガラス繊維の間に無数の空気を閉じ込めた構造にあります。この空気の層が断熱性を生み出す鍵となっています。繊維が細ければ細いほど、空気室が細分化され、より高い断熱性能を発揮します。

 

通常のグラスウールの繊維径は平均7〜8μm程度ですが、高性能グラスウールでは平均4〜5μmと非常に細く作られています。繊維が細くなると同じ密度でも繊維本数が約4倍になり、空気室の大きさが約4分の1になるため、断熱性能が大幅に向上します。

 

グラスウールの断熱性能と熱伝導率

断熱材の性能を評価する上で最も重要な指標が「熱伝導率(λ値)」です。熱伝導率は、材料がどれだけ熱を伝えにくいかを示す値で、単位はW/(m・K)で表されます。この値が小さいほど断熱性能が高いことを意味します。

 

グラスウールの断熱性能は、主に以下の要素によって決まります。

  • 密度: 単位体積あたりの重量(kg/m³)で表され、一般的に「10K」「16K」「24K」「32K」などと表記
  • 繊維の太さ: 繊維が細いほど断熱性能が向上
  • 製品の種類: 通常品と高性能品の2種類が存在

グラスウールの種類別熱伝導率の比較。

密度 通常品グラスウール 高性能グラスウール
10K 0.050 W/(m・K) 0.043 W/(m・K)
16K 0.045 W/(m・K) 0.038 W/(m・K)
24K 0.038 W/(m・K) 0.036 W/(m・K)
32K 0.036 W/(m・K) 0.035 W/(m・K)

実際の断熱性能を評価する際には、熱抵抗値(R値)も重要な指標です。熱抵抗値は「厚み÷熱伝導率」で計算され、この値が大きいほど断熱性能が高くなります。

 

例えば、厚さ100mmの高性能グラスウール16K(熱伝導率0.038)の熱抵抗値は。
R = 0.1m ÷ 0.038W/(m・K) = 2.63(m²・K)/W
コストパフォーマンスの観点から見ると、高性能グラスウール16Kが最もバランスが良いとされています。24Kは16Kと比較して価格が高い割に、熱伝導率の差が小さいため、費用対効果の面では16Kが優れています。

 

グラスウールの種類と用途別選び方

グラスウールは形状や密度によって様々な種類があり、用途に応じて最適なものを選ぶことが重要です。主な種類と特徴は以下の通りです。
1. 形状による分類

  • マット状グラスウール
    • 最も一般的な形状
    • 柔軟性があり、壁や天井の断熱に適している
    • 施工が容易で様々な厚さや密度が用意されている
    • 主な用途:木造住宅の壁内断熱、天井裏の断熱
  • ボード状グラスウール
    • マット状より密度が高く、圧縮強度がある
    • 形状が安定しており、取り扱いが容易
    • 表面に化粧材を貼ることも可能
    • 主な用途:床下の断熱、屋根裏の断熱、外壁の外張り断熱
  • 吹込みタイプ
    • 専用の機械で吹き込むタイプ
    • 複雑な形状の空間にも対応可能
    • 既存住宅のリフォームにも適している
    • 主な用途:天井裏や壁内の断熱改修

    2. 密度による分類
    グラスウールは密度(kg/m³)によって性能が異なります。

    • 低密度タイプ(10K)
      • 軽量で扱いやすい
      • コストが低い
      • 主に天井断熱などに使用
    • 中密度タイプ(16K、24K)
      • バランスの良い断熱性能
      • 一般的な壁内断熱に最適
      • 16Kは費用対効果が高く、最も一般的
    • 高密度タイプ(32K以上)
      • 高い断熱性能と防音性能
      • 価格も高め
      • 特に断熱性能を重視する場所に使用

      3. 用途別の選び方

      • 住宅の壁内断熱: 高性能グラスウール16Kが最もバランスが良い
      • 天井断熱: 10K〜16Kが一般的(天井は広い面積を確保できるため)
      • 床下断熱: 24K以上の高密度タイプが適している(圧縮強度が必要なため)
      • 防音対策: 24K以上の高密度タイプが効果的
      • 外張り断熱: 専用のボード状グラスウールを使用

      用途に応じた適切な選択をすることで、コストを抑えながら効果的な断熱・防音対策が可能になります。

       

      グラスウールのメリットと環境性能

      グラスウールは様々な優れた特性を持ち、住宅用断熱材として広く支持されています。その主なメリットを詳しく見ていきましょう。

       

      1. 優れたコストパフォーマンス
      グラスウールは高い断熱性能を低コストで実現できる断熱材です。同等の断熱性能を持つ他の断熱材と比較すると、グラスウールのコストは約半分程度と言われています。特に大量に使用する住宅の断熱では、この価格差が総工事費に大きく影響します。

       

      2. 高い不燃性と安全性
      グラスウールの原料であるガラスは本質的に不燃性の素材です。そのため。

      • 火災時に燃えることがない
      • 有毒ガスを発生させない
      • 延焼を防ぐ効果がある

      この特性は、建物の火災安全性を高める重要な要素となっています。

       

      3. 優れた耐久性
      ガラスを原料とするグラスウールは、経年劣化が少ない特徴があります。

      • 長期間にわたって断熱性能を維持
      • 形状変化が少ない
      • 腐食や腐敗がない

      適切に施工されたグラスウールは、建物の寿命と同等の期間、性能を維持することが可能です。

       

      4. 環境にやさしい素材
      グラスウールは環境面でも優れた特性を持っています。

      • リサイクル素材の活用: 建築現場や家庭から回収される資源ごみのリサイクルガラスを主原料としている
      • 再利用可能: 製造時の端材、施工時の端材、使用済みのグラスウールも原料としてリサイクル可能
      • グリーン購入法対象: 環境省の「グリーン購入法」の特定調達品目に該当
      • 省エネルギー効果: 建物の断熱性能を高めることで、冷暖房エネルギーの削減に貢献

      5. 健康面での安全性
      かつてはグラスウールの健康への影響が懸念されていましたが、現在では安全性が確認されています。

      • 国際がん研究機関(IARC)により、発がん性リスクが低いグループ3に分類
      • 現代のグラスウール製品は、皮膚への刺激を軽減する処理が施されている
      • ホルムアルデヒドやアスベストを含まない製品も多数開発されている

      特に近年は、バインダー(結合剤)に天然原料を使用したノン・ホルムアルデヒドタイプのグラスウールも普及しており、健康面での安全性がさらに向上しています。

       

      グラスウールの施工方法と注意点

      グラスウールの性能を最大限に発揮させるためには、適切な施工方法と注意点を理解することが重要です。ここでは、施工のポイントと一般的な注意事項について解説します。

       

      1. 施工前の準備と保管

      • 乾燥状態の確保: グラスウールは必ず乾燥した状態で保管・施工する
      • 保管場所: 湿気の少ない場所で保管し、地面に直接置かない
      • 開封タイミング: 施工直前まで包装を開封しない

      2. 壁内への充填施工のポイント

      • 適切なサイズ選択: 柱間寸法より10mm程度大きいサイズを選ぶ
      • すきま無く充填: 柱と柱の間にすきまなく充填する
      • 圧縮しすぎない: 過度に圧縮すると断熱性能が低下する
      • 継ぎ目処理: 断熱材同士の継ぎ目はぴったりと合わせる
      • 配線・配管周り: 電気配線や配管の周囲もすきまなく充填する

      3. 防湿・気密対策
      グラスウールの最大の弱点は「水に弱い」ことです。湿気対策は施工の要となります。

      • 防湿シートの設置: 室内側に必ず防湿シートを設置する
      • シートの重ね代: 防湿シートの継ぎ目は100mm以上重ねる
      • テープ処理: 継ぎ目や開口部周りは専用テープでしっかり密閉
      • コンセントボックス周り: 気密パッキンなどを使用して気密性を確保

      4. 施工時の安全対策
      グラスウールを扱う際の安全対策も重要です。

      • 防護具の着用: 長袖・長ズボン、手袋、マスク、ゴーグルを着用
      • 作業後の処置: 作業後は肌を洗い流し、作業着は分けて洗濯する
      • 粉じん対策: 切断時は粉じんが飛散しないよう注意する

      5. よくある施工ミスと対策
      施工ミスによって断熱性能が大幅に低下することがあります。

      • すきまの発生: わずか5%のすきまでも、断熱性能は最大50%低下する可能性がある
      • 圧縮しすぎ: 厚さを半分に圧縮すると、断熱性能は約35%低下する
      • 防湿シートの不備: 防湿シートの破れや施工不良は内部結露の原因になる

      6. 施工後の確認ポイント

      • 充填状況: すべての壁・天井でグラスウールがすきまなく充填されているか
      • 防湿シート: 破れや穴がないか、継ぎ目のテープ処理は適切か
      • 配線・配管周り: 配線・配管周りの断熱材充填状況と気密処理

      適切な施工を行うことで、グラスウールの優れた断熱性能を最大限に引き出し、快適な室内環境を実現することができます。特に防湿対策は、グラスウールの性能維持に不可欠な要素です。

       

      グラスウールと他の断熱材との比較

      住宅の断熱材には様々な種類があり、それぞれに特徴があります。ここではグラスウールと他の主要な断熱材を比較し、その特性を明らかにします。

       

      1. グラスウールとロックウールの比較
      グラスウールと同じ無機繊維系断熱材であるロックウールとの比較。

      項目 グラスウール ロックウール
      原料 リサイクルガラス 玄武岩などの天然鉱石
      熱伝導率 0.038〜0.050 W/(m・K) 0.038〜0.045 W/(m・K)
      密度 10〜32kg/m³が一般的 30〜150kg/m³が一般的
      耐熱性 約200℃まで 約1,000℃まで
      価格 安価 グラスウールより若干高め
      特徴 軽量で施工性が良い 耐熱性・耐火性に優れる

      ロックウールは耐熱温度が高く、防火区画などの用途に適していますが、一般的な住宅断熱ではグラスウールの方がコストパフォーマンスに優れています。

       

      2. 発泡プラスチック系断熱材との比較
      発泡スチレンやウレタンフォームなどの発泡プラスチック系断熱材との比較。

      項目 グラスウール 発泡プラスチック系
      熱伝導率 0.038〜0.050 W/(m・K) 0.022〜0.040 W/(m・K)
      防湿性 低い(防湿シート必要) 高い(一部は防湿層不要)
      不燃性 高い(不燃材料) 低い(燃焼時に有毒ガス発生の可能性)
      施工性 柔軟性があり複雑な形状に対応 硬質で加工が必要
      価格 安価 グラスウールより高価
      環境負荷 低い(リサイクル可能) 比較的高い

      発泡プラスチック系は断熱性能が高く防湿性に優れていますが、価格が高く、燃焼時の安全性や環境負荷の面でグラスウールに劣ります。

       

      3. セルロースファイバーとの比較
      木質繊維系断熱材であるセルロースファイバーとの比較。

      項目 グラスウール セルロースファイバー
      原料 リサイクルガラス 古紙などの再生紙
      熱伝導率 0.038〜0.050 W/(m・K) 0.038〜0.040 W/(m・K)
      施工方法 マット状、ボード状、吹込み 主に吹込み工法
      調湿性 低い 高い(湿度調整効果あり)
      価格 安価 グラスウールと同程度
      特徴 不燃性が高い 調湿性に優れる

      セルロースファイバーは調湿性に優れ、室内環境を快適に保つ効果がありますが、防火性能ではグラスウールに劣ります。

       

      4. コストパフォーマンス比較
      同じ断熱性能(熱抵抗値)を得るために必要なコストを比較すると、グラスウールが最も経済的です。

      • グラスウール:100(基準)
      • ロックウール:約120
      • 押出法ポリスチレンフォーム:約180
      • 硬質ウレタンフォーム:約200
      • フェノールフォーム:約220

      5. 用途別の最適な断熱材選択
      建物の部位や要求性能によって、最適な断熱材は異なります。

      • 壁内断熱: グラスウールが最もコストパフォーマンスが高い
      • 外張り断熱: 防水性が求められるため、発泡プラスチック系が適している
      • 床下断熱: 防湿性が重要なため、発泡プラスチック系や高密度グラスウール
      • 天井断熱: グラスウールやセルロースファイバーが適している
      • 防火区画: ロックウールが最適

      グラスウールは総合的なバランスに優れ、特に一般住宅の壁内断熱や天井断熱において、コストパフォーマンスの高い選択肢となっています。ただし、建物の構造や要求性能、予算に応じて、最適な断熱材を選択することが重要です。

       

      マグ・イゾベール株式会社のグラスウール製品情報(グラスウールの詳細な特性と製造方法について)
      硝子繊維協会のグラスウール断熱性能解説(断熱性能の詳細なメカニズムについて)