ロックウールの種類と特徴
ロックウールの基本情報
🏭
原料と製造方法
高炉スラグや玄武岩などの天然鉱物を1,500~1,600℃で溶融し、遠心力で繊維化して製造します。
🔥
優れた特性
断熱性・耐火性・吸音性に優れ、撥水性が高く、シロアリにも強い特徴を持っています。
🏠
主な用途
住宅やビルの断熱材、吸音材、耐火材として幅広く使用されています。
ロックウール種類の基本分類と用途別製品形状
ロックウールは、高炉スラグや玄武岩などの天然鉱物を主原料として製造された人造鉱物繊維です。かつては天然鉱物から製造したものを「ロックウール(岩綿)」、高炉スラグから製造したものを「スラグウール(鉱さい綿)」と区別していましたが、現在は総称して「ロックウール」と呼ばれています。欧米では「ミネラルウール」や「ストーンウール」とも呼ばれることがあります。
ロックウールの製品形状は、用途によって大きく分けると以下のようになります。
- ウール(綿状):繊維状のまま層状または粒状化されたもの
- 保温板:ウールにバインダを用いて板状に成形したもの
- フェルト:ウールにバインダを用いて弾力のあるフェルト状に成形したもの
- ブランケット:保温板の両面または片面を金網で補強したもの
- マット:板状に成形され、住宅用断熱材として使用されるもの
- 吹込み用:天井裏などに吹き込んで使用する粒状のもの
これらの製品形状は、施工対象物の形状や用途に合わせて選定されます。例えば、住宅の壁や天井には主にマットタイプが使用され、工場のパイプや設備にはフェルトやブランケットが使用されることが多いです。
ロックウール断熱材の熱伝導率と断熱性能
ロックウールの断熱性能は、繊維と繊維の間に無数の空気を含む構造によって発揮されます。この空気の層が熱の移動を抑制し、優れた断熱効果をもたらします。ロックウールの熱伝導率は一般的に約0.038 W/(m・K)程度で、この数値が小さいほど断熱性能が高いことを示します。
ロックウールの断熱性能に影響する要素として、以下の点が挙げられます。
- 密度:繊維の密度が高いほど、空気の層が密になり断熱性能が向上します
- 厚さ:製品の厚さが増すほど断熱効果は高まります
- 含水率:水分を吸収すると断熱性能が低下するため、防湿対策が重要です
2025年から全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられることもあり、断熱材の性能はますます重要になっています。ロックウールは、この基準を満たすための有効な選択肢の一つとして注目されています。
熱伝導率による区分では、ロックウールは7種類に分類されることもあり、用途や要求される性能に応じて適切な種類を選択することが重要です。
ロックウール製品の耐火性と安全性について
ロックウールは優れた耐火性を持つ断熱材として知られています。その耐熱温度は約650~700℃と非常に高く、火災時の延焼防止や建物の構造保護に大きく貢献します。この高い耐熱性により、ロックウールは法定不燃材としても認められており、建築基準法における防火規制にも対応しています。
安全性の面では、ロックウールはアスベスト(石綿)と混同されることがありますが、全く異なる物質です。国際がん研究機関(IARC)による発がん性評価では、ロックウールはグループ3(発がん性について分類できない)に分類されており、これはお茶やコーヒーと同じレベルです。つまり、人体への健康被害リスクは極めて低いと評価されています。
ただし、施工時には以下の点に注意が必要です。
- 細かい繊維が皮膚に触れるとかゆみを感じることがあるため、適切な保護具の着用が推奨されます
- 多量の繊維を吸入しないよう、マスクの着用や換気を心がけましょう
- 製品によっては、バインダー(接着剤)やビニールカバーが低温で燃焼し黒煙を発生することがあります
ロックウールの製品には、F☆☆☆☆(ホルムアルデヒド放散等級最高レベル)の認定を受けたものが多く、揮発性有機化合物(VOC)の発生もほとんどないため、室内環境の安全性にも配慮されています。
ロックウールとグラスウールの比較と選び方
建築現場で頻繁に比較検討されるのが、ロックウールとグラスウールです。両者は人造鉱物繊維系の断熱材として似た特性を持ちますが、いくつかの重要な違いがあります。
【ロックウールとグラスウールの比較表】
特性 |
ロックウール |
グラスウール |
原料 |
高炉スラグ・玄武岩など |
ガラス(リサイクルガラスなど) |
耐熱性 |
650~700℃ |
約400℃ |
撥水性 |
優れている |
やや劣る |
吸湿性 |
低い |
比較的高い |
防音性 |
非常に優れている |
優れている |
価格 |
やや高い |
比較的安い |
施工性 |
やや扱いにくい |
扱いやすい |
耐アルカリ性 |
あり |
なし |
選び方のポイント
- 予算重視:コストを抑えたい場合はグラスウールが適しています
- 性能重視:高い耐火性や防音性、耐水性が必要な場合はロックウールが優位です
- 施工条件:湿気の多い環境ではロックウールの方が適しています
- 用途:高温になる箇所や防火区画にはロックウールが推奨されます
実際の選定では、建物の構造や用途、地域の気候条件、予算などを総合的に考慮することが重要です。コストパフォーマンスの観点では、グラスウールより価格が高いロックウールですが、その性能差を考慮すると、長期的には優れた選択肢となる場合も多いでしょう。
ロックウール施工時の環境配慮と2025年省エネ基準対応
2025年から全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられることを見据え、ロックウールの環境面での特性と施工時の配慮点について理解しておくことが重要です。
ロックウールは環境に配慮した素材として以下の特徴を持っています。
- 製造エネルギーの削減:JFEロックファイバーなど一部メーカーでは、製鉄所の副産物である高炉スラグを1400℃の高温のまま専用鉄道で運搬・再資源化することで、製造エネルギーを他の繊維系断熱材と比較して約1/2に削減しています
- リサイクル可能:使用後のロックウールは再利用が可能で、廃棄物削減に貢献します
- CO2削減効果:断熱性能による省エネ効果で、建物のライフサイクルを通じたCO2排出量を大幅に削減できます
- グリーン購入法対象:「国等による環境物品等の調達に関する法律」(グリーン購入法)の対象材料に含まれています
施工時の環境配慮ポイント
- 適切な防湿対策:ロックウールは撥水性が高いものの、湿気によって断熱性能が低下するため、適切な防湿層の設置が必要です
- 隙間のない施工:熱橋(ヒートブリッジ)を防ぐため、隙間なく施工することが重要です
- 廃材の適切な処理:施工時に発生する端材は分別して適切にリサイクルに回すことが推奨されます
- 健康配慮:施工者の健康を守るため、防塵マスクや手袋などの保護具の着用が必要です
2025年の省エネ基準対応に向けては、断熱材の選定だけでなく、適切な厚みの確保や気密性の高い施工技術の習得も重要になります。ロックウールの種類や厚みを適切に選定し、高い断熱性能を発揮させることで、新基準に対応した省エネ住宅の実現に貢献できます。
JFEロックファイバーの総合カタログ - 2025年省エネ基準対応に関する詳細情報
ロックウール主要メーカーと製品ラインナップ
日本国内のロックウール市場には複数のメーカーが存在し、それぞれ特徴ある製品を展開しています。2025年3月時点での主要メーカーと代表的な製品ラインナップを紹介します。
主要メーカー。
- ニチアス株式会社
- 市場シェア:約16.7%
- 特徴:総合断熱材メーカーとして幅広い製品を展開
- 日本ロックウール株式会社
- 市場シェア:約10.3%
- 特徴:ロックウール専業メーカーとして高品質製品を提供
- JFEロックファイバー株式会社
- 市場シェア:約9.6%
- 特徴:製鉄所の副産物を活用した環境配慮型製品が強み
- 株式会社エーアンドエーマテリアル
- 市場シェア:約7.7%
- 特徴:建材総合メーカーとして多様な用途に対応
代表的な製品ラインナップ。
- 住宅用断熱材
- 『アムマット』シリーズ(JFEロックファイバー):天井・壁・界床に施工可能で、防湿フィルム付きの製品も展開
- 『アムマット プレミアム』:防湿フィルムを厚くし、結露対策を強化した高性能製品
- 建築用耐火材
- 『ダイライト』シリーズ(DAIKEN):火山性ガラス質堆積物とロックウールを原料とした無機質素材で、耐火性・耐震性に優れた製品
- 『ダイライトMS』:燃焼しにくく、火災の類焼や延焼を防ぐ高性能耐震・防火建材
- 工業用断熱材
- ワイヤードブランケット:プラントや造船に使用される耐熱性の高い製品
- フェルト・ボード:工場の壁や配管等に使用される断熱・吸音製品
- 吹付け用ロックウール
- 粒状綿:建物の柱や梁、躯体などに吹き付けて使用する耐火被覆材
各メーカーは、2025年からの省エネ基準適合義務化に向けて、より高性能な製品の開発や、施工性を向上させた製品の提供に注力しています。施工現場のニーズに合わせて、適切なメーカーと製品を選定することが重要です。
ロックウールメーカー28社の最新ランキングと詳細情報
ロックウール断熱材の施工方法と注意点
ロックウール断熱材の効果を最大限に発揮させるためには、適切な施工方法と注意点を理解することが重要です。ここでは、主な施工方法と施工時の注意点について解説します。
主な施工方法。
- マット・ボード状製品の施工
- 壁内や天井裏に充填する方法が一般的
- 柱や間柱の間にぴったりとはめ込み、隙間ができないように注意
- 必要に応じて防湿フィルム付きの製品を選定するか、別途防湿層を設ける
- 吹込み工法
- 天井裏や既存住宅の壁内に粒状のロックウールを吹き込む
- 専用の吹込み機を使用し、均一な密度になるよう施工
- 施工後の沈下を考慮した充填密度の管理が重要
- 吹付け工法
- 鉄骨部材などの耐火被覆や天井の吸音を目的として使用
- 専用の吹付け機で水と混合しながら吹き付ける
- 厚みの管理と乾燥時間の確保が重要
施工時の注意点。
- 防湿対策
- ロックウールは撥水性があるものの、湿気によって断熱性能が低下するため、適切な防湿層の設置が必須
- 特に浴室や台所など湿気の多い場所の近くでは、防湿対策を徹底する
- 隙間のない施工
- 断熱材同士の継ぎ目や、断熱材と構造材との間に隙間があると、熱橋(ヒートブリッジ)となり断熱効果が大幅に低下
- 特に複雑な形状の部分や配管・配線周りは丁寧に施工する
- 圧縮しすぎない
- ロックウールを過度に圧縮すると空気層が減少し、断熱性能が低下する
- 製品の指定された厚みを維持できるよう施工する
- 作業者の健康保護
- 施工時は防塵マスク、手袋、長袖作業着などを着用
- 肌に触れるとかゆみを感じることがあるため、直接触れないよう注意
- 作業後は手洗いとうがいを徹底する
- 脱落防止対策
- 天井や壁に施工する場合、経年による脱落を防ぐため、適切な固定方法を採用
- 特に振動や風圧がかかる場所では、補強材や固定具の使用を検討
ロックウール断熱材の施工は、その特性を理解した上で適切に行うことで、長期間にわたって高い断熱性能を維持することができます。特に2025年からの省エネ基準適合義務化に向けて、施工品質の確保がますます重要になっています。
ロックウール工業会による製品の特性と取扱いに関する詳細ガイド