インピーダンス抵抗違いを周波数から理解

インピーダンス抵抗違いを周波数から理解

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インピーダンス抵抗違い

この記事で理解できること
直流と交流の違い

抵抗は直流・交流両方に作用し、インピーダンスは交流回路特有の総合的な電気抵抗です

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周波数による変化

インピーダンスは周波数によって値が変化するため、条件に応じた設計が必要です

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建物設備への応用

電気設備の設計や点検において、インピーダンスの理解は電圧降下や短絡電流の予測に不可欠です

インピーダンスと抵抗の基本定義の違い

 

インピーダンスと抵抗の最も基本的な違いは、適用される回路の種類にあります。抵抗は直流回路でも交流回路でも電流の流れを妨げる要素であり、その値は周波数に関わらず一定です。一方、インピーダンスは交流回路における総合的な電気抵抗を表し、抵抗成分に加えてコイル(インダクタンス)やコンデンサ(キャパシタンス)による影響も含んだ概念です。
参考)https://techweb.rohm.co.jp/product/circuit-design/electric-circuit-design/15939/

抵抗器は電気エネルギーを熱に変換する特性を持ち、オームの法則(R=V/I)で計算できます。これに対してインピーダンスは、交流回路において電圧と電流の比率を示す値であり、単位は抵抗と同じΩ(オーム)ですが、その内容は複雑です。
参考)https://denki-plantengineer.com/teikou-impedance-chigai

直流回路では電池のようにプラスとマイナスが常に一定ですが、交流回路では電圧が時間とともに変化し、プラスとマイナスが入れ替わります。この交流特有の性質により、コイルやコンデンサが抵抗のような働きをするため、インピーダンスという概念が必要になります。
参考)https://large.rgr.jp/H-aid/ELE/orm/index.html

インピーダンスにおけるリアクタンスの役割

インピーダンスを理解するには、リアクタンスという要素を知る必要があります。リアクタンスとは、交流回路においてコイルやコンデンサが作り出す電気の流れにくさのことで、抵抗とは異なり周波数によって値が変化します。
参考)https://detail-infomation.com/resistance-reactance-impedance/

コイルが作るリアクタンスは「誘導性リアクタンス」と呼ばれ、XL=2πfLという式で表されます。この式から分かるように、周波数(f)が高くなるほど誘導性リアクタンスは大きくなり、電流を妨げる力が強くなります。コイルは交流回路において、電流の変化を妨げようとする性質(自己誘導作用)により、電圧に対して電流が90°位相が遅れて流れます。
参考)https://www.japan-ems.jp/post-2864/

一方、コンデンサが作るリアクタンスは「容量性リアクタンス」と呼ばれ、XC=1/(2πfC)という式で表されます。容量性リアクタンスは周波数が高くなるほど小さくなり、電流が流れやすくなります。コンデンサでは電圧に対して電流が90°位相が進みます。
参考)https://denki-plantengineer.com/reactance-introduction-guide

インピーダンスは、抵抗(R)と誘導性リアクタンス(XL)、容量性リアクタンス(XC)を合成したものであり、Z=R+jXという複素数で表現されます。ここでXはリアクタンスの合計値(XL-XC)を表します。
参考)https://iro2.info/denko-impedance/

インピーダンスの複素数表示と位相差

インピーダンスを複素数で表示すると、交流回路の計算が大幅に簡単になります。複素数表示では、実部に抵抗成分(R)、虚部にリアクタンス成分(X)を配置し、Z=R+jXと表現します。この表記法により、電圧と電流の位相差を含めた計算が可能になります。
参考)https://eleking.net/study/s-accircuit/sac-impedance-f.html

交流回路では、電圧と電流の間に時間的なズレ(位相差)が生じます。抵抗だけの回路では電圧と電流は同位相ですが、コイルやコンデンサが含まれると位相がずれます。この位相差を考慮せずに単純な掛け算や割り算を行うと、誤った結果になってしまいます。
参考)https://www.watt-mag.jp/articles/531/

複素数であれば、数でありながらベクトルでもあるため、位相を考慮した計算が可能です。抵抗の複素インピーダンスはZR=Rと表され虚部がゼロ、インダクタンスの複素インピーダンスはZL=jωL、キャパシタンスの複素インピーダンスはZC=1/(jωC)と表されます。
参考)https://techweb.rohm.co.jp/product/circuit-design/electric-circuit-design/20017/

計算結果を実際の瞬時値に戻すには、複素数の大きさを正弦波の実効値として√2倍し、複素数の位相角にωtを足してsin関数に入れます。この手法により、交流回路における電圧降下や電流の予測が正確に行えます。
参考)https://fhirose.yz.yamagata-u.ac.jp/img/phaser_41.pdf

インピーダンス測定における建物電気設備の特性

建物の電気設備において、インピーダンスは電源から各コンセントまでの電気の流れにくさを表す重要な指標です。一般住宅では、発電所からコンセントまでの電源インピーダンスは0.2Ω~0.5Ω程度と推定されます。
参考)https://seppotl.web.fc2.com/zht01/acimp.html

電源インピーダンスの大部分は屋内配線に依存しており、特に分電盤とコンセント間の配線が約50%を占めています。この部分の配線を太くすることで、インピーダンスを低減し、電圧降下を改善できます。住宅の新築や改築時に配線のサイズアップを行えば、少ない費用で電源インピーダンスを50%以下まで低下させることが可能です。​
変圧器(トランス)のインピーダンスも、建物の電力供給において重要な役割を果たします。インピーダンスが大きいと電圧降下が増加し、逆に小さすぎると短絡電流が過大になるため、適切な設計が必要です。特にキュービクル内に設置される変圧器は、ビルや工場の安定稼働を支える重要な機器であり、負荷に応じたインピーダンスの調整が求められます。
参考)https://www.jeea.or.jp/course/contents/12151/

短絡電流の計算においても、インピーダンスの理解は不可欠です。パーセントインピーダンス法を用いることで、定格電流が生じている回路上での電圧降下を簡便に計算でき、電気設備の安全性評価に役立ちます。
参考)https://chief-engineer.info/short-circuit-current-and-percent-impedance/

インピーダンスの測定方法と実務での活用

インピーダンスの測定は、電気設備の点検や保守において重要な作業です。最も基本的な測定方法は、電圧と電流を測定してオームの法則を応用する方法です。具体的には、800W程度の電気ストーブなどの負荷をコンセントに接続する前の電圧(V0)と、接続後の電圧(V1)を測定し、電源のインピーダンス=(V0-V1)÷負荷電流で計算できます。
参考)https://kikusui.co.jp/impedance-pitfalls/

専門的な測定では、交流インピーダンス法が用いられます。この方法では、二極法と四極法があり、四極法は低周波域における分極の影響が小さく、幅広い周波数での測定に適しています。測定時の注意点として、周波数が低いほど、また試料の比抵抗が低いほど、分極の影響で位相差が大きくなり、測定値が高くなる傾向があります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamstecr/20/0/20_41/_article/-char/ja/

インピーダンス測定は、燃料電池の触媒反応抵抗の評価や、電気回路の特性分析にも活用されています。測定結果から得られるデータは、設備の劣化診断や最適な運用条件の決定に役立ちます。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsas/36/0/36_36108/_article/-char/ja/

建物の電気設備における実務では、電圧降下の計算、短絡電流の予測、配線サイズの決定などにインピーダンスの知識が必要です。不動産従事者がこれらの概念を理解することで、電気設備に関する適切な判断や、専門家とのコミュニケーションが円滑になります。
参考)https://info-meidens.com/senryaku/2025/09/24/transformer-impedance-basic-effect/

ロームのインピーダンス解説ページでは、抵抗やリアクタンスとの関係を回路図とともに詳しく説明しています
プラントエンジニアの電気設計サイトでは、インピーダンスと抵抗の違いを実務的な観点から解説しており、初心者にも分かりやすい内容です
日本電気技術者協会のサイトでは、インピーダンスと電圧降下、短絡電流の計算方法を電験の過去問題とともに紹介しています