
角型鋼管の規格選定において最も重要なのが、STKR(一般構造用)とBCR(建築構造用)の違いを理解することです。
STKR400の特徴:
BCR295の特徴:
BCR295は建築基準法第37条第二号に適合する国土交通大臣認定を取得しており、建築構造用部材として法的に使用が認められています。一方、STKR400は一般構造用途での使用が前提となっており、建築構造物での使用には制限があります。
金属加工業界では、用途に応じた適切な規格選定が品質管理の要となります。建築プロジェクトでは必ずBCR295以上の建築構造用鋼管を選定し、一般的な製品製造や機械部品にはコストパフォーマンスに優れるSTKR400を選択するのが基本です。
角型鋼管の品質管理において、寸法許容差は製品の信頼性を左右する重要な要素です。JIS規格では厳格な寸法許容差が規定されています。
辺の長さの許容差:
厚さの許容差:
角度の許容差:
断面性能の計算では、角部外側の曲率半径を考慮した質量計算式が使用されます。BCR295では2.5tの曲率半径、BCP235・BCP325では3.5tの曲率半径で計算されており、実際の断面性能に影響を与えます。
製造時の曲がり許容差も重要で、全長の0.1%以下(Uコラム)から0.3%以下(角パイプ)まで用途により異なります。これらの数値は設計計算や加工精度に直接影響するため、図面作成時には必ず確認が必要です。
品質管理表を作成する際は、これらの許容差を基準値として設定し、製品検査の合否判定に活用することが重要です。
角型鋼管の製造方法は品質と用途に大きく影響します。主要な製造方法には冷間ロール成形と冷間プレス成形があり、それぞれ異なる特徴を持ちます。
冷間ロール成形(BCR295)の特徴:
冷間プレス成形(BCP235・BCP325)の特徴:
品質基準の違い:
項目 | BCR295 | STKR400 |
---|---|---|
降伏点 | 295N/mm² | 245N/mm² |
引張強度 | 400N/mm² | 400N/mm² |
伸び | 規格により規定 | JIS G 3466準拠 |
シャルピー試験 | 0℃で27J以上(t≥12mm) | 規定なし |
化学成分 | SN材相当 | 一般構造用 |
建築構造用のBCR295では、厚さ12mm以上でシャルピー吸収エネルギーが規定されており、低温での靭性を確保しています。これは建築物の耐震性能に直結する重要な品質要求です。
製造時のミルシートには、これらの機械的性質と化学成分が記載されており、品質証明書として重要な役割を果たします。
角型鋼管の用途別選定では、建築基準法への適合性が最重要課題です。建築構造用途では国土交通大臣認定製品の使用が義務付けられています。
建築構造用途での選定基準:
実際の建築適用例:
一般構造用途での選定:
サイズ選定では、常時生産されているエコノミーパイプ(青字表示)を選択することで、納期短縮とコスト削減が可能です。特殊サイズは入手先が限られ、単価も高くなるため、設計段階での慎重な検討が必要です。
建築用途では、構造計算書に使用する角型鋼管の規格と大臣認定番号を明記し、確認申請時の審査をスムーズに進めることが重要です。
角型鋼管の製造過程で生じる継ぎ目と溶接痕は、製品の外観と性能に影響する重要な要素です。これらの特徴を理解することで、用途に応じた適切な選定が可能になります。
STKR400の溶接痕特徴:
STKMR290の溶接痕特徴:
継ぎ目なしパイプとの比較:
項目 | 溶接管 | 継ぎ目なし管 |
---|---|---|
製造方法 | 電気抵抗溶接 | 熱間押出成形 |
溶接痕 | あり | なし |
肉厚均一性 | 溶接部で変化 | 均一 |
コスト | 低い | 高い |
大型サイズ | 対応可能 | 制限あり |
溶接痕の品質管理ポイント:
特に建築構造用途では、溶接痕部分の品質が構造性能に影響するため、JIS規格に基づく厳格な品質管理が実施されています。
外観を重視する用途では、ペンタイト(溶融亜鉛メッキ)や電気亜鉛メッキを施した製品を選択することで、均一な表面仕上げが得られます。これらの表面処理により、溶接痕も含めて均一な外観を実現できます。
加工時には溶接痕の位置を考慮した切断計画を立て、製品の品質向上を図ることが重要です。特に精密加工が要求される用途では、溶接痕の位置と方向を事前に確認し、適切な加工方法を選定する必要があります。