形鋼の種類と特徴や用途を徹底解説

形鋼の種類と特徴や用途を徹底解説

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形鋼の種類と特徴

形鋼の基本情報
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形鋼とは

断面がH形やL形など特定の形状に成形された鋼材の総称で、建築や土木の構造材として広く使用されています。

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大きな分類

熱間圧延で作られる「重量形鋼」と、薄い鋼板を折り曲げて作る「軽量形鋼」の2種類に大別されます。

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主な用途

建物の柱や梁、橋梁、船舶の構造材、基礎杭など、様々な建築・土木構造物に使用されています。

形鋼(かたこう)とは、断面が特定の形状に成形された鋼材の総称です。建築や土木工事において、柱や梁(はり)などの構造材として広く使用されています。名前の通り、断面がH形やL形など、様々な形状に成形されているのが特徴で、その形状によって強度や用途が異なります。

 

形鋼は大きく分けて2種類あります。熱間圧延によって製造される「重量形鋼」と、薄い鋼板を冷間で折り曲げて作られる「軽量形鋼」です。一般的に「形鋼」と言った場合は、重量形鋼を指すことが多いです。

 

形鋼は断面形状によって様々な種類があり、それぞれ特性や用途が異なります。建築施工に携わる方々にとって、これらの違いを理解することは、適切な材料選定や施工計画を立てる上で非常に重要です。

 

形鋼の重量形鋼と軽量形鋼の違い

重量形鋼と軽量形鋼は、製造方法や特性に大きな違いがあります。

 

【重量形鋼】
・製造方法:熱間圧延によって製造
・板厚:比較的厚い
・主な用途:建物の主要構造部材(柱、梁など)
・代表的な種類:H形鋼、I形鋼、山形鋼、溝形鋼、Z形鋼など
・特徴:高い強度と剛性を持ち、大きな荷重に耐えられる
【軽量形鋼】
・製造方法:薄い鋼板(板厚6mm以下)を冷間で折り曲げて製造
・板厚:薄い(一定の厚さ)
・主な用途:屋根や壁の下地材(母屋・胴縁)など
・代表的な種類:軽山形鋼、軽溝形鋼、リップ溝形鋼、ハット形鋼など
・特徴:軽量で取り扱いやすく、比較的自由に成形できる
重量形鋼は、建物の主要な構造部材として使用されることが多く、大きな荷重を支える必要がある場所に適しています。一方、軽量形鋼は板厚が薄いため重量が軽く、取り扱いやすいという特徴がありますが、その分だけ負荷に弱いため、主要な構造部材には使用されません。

 

両者の選定は、必要とされる強度や剛性、施工性、コストなどを総合的に判断して行われます。

 

形鋼のH形鋼の特徴と用途について

H形鋼(エッチがたこう)は、断面が「H」の形をした形鋼で、最もポピュラーな形鋼の一つです。略してH鋼とも呼ばれ、「形鋼の相場」はH鋼の価格を基準としていることが多いです。

 

【H形鋼の特徴】
・断面が「H」形状で、フランジ(水平部分)とウェブ(垂直部分)から構成
・フランジとウェブの厚さは均一(テーパーなし)
・他の形鋼に比べて断面効率(重量当たりの曲げ剛性や曲げ強度)が優れている
・曲げに対する強度が特に優れている
・比較的安価である
・水平ロールと垂直ロールを持つユニバーサル圧延機によって製造
【H形鋼の主な用途】
・建築物の柱や梁
・橋梁の主桁や横桁
・高速道路や建築物の基礎杭
・船舶の構造材
・各種産業機械のフレーム
H形鋼は、その高い強度と比較的安価な価格から、多くの建築・土木工事で使用されています。特に、曲げに対する強度が求められる部位に適しており、建物の骨組みを形成する主要な構造材として広く採用されています。

 

また、H形鋼には様々なサイズがあり、使用目的に応じて適切なサイズを選定することが重要です。一般的には、ウェブの高さ(H)×フランジの幅(B)×ウェブの厚さ(t1)×フランジの厚さ(t2)の順で表記されます(例:H-300×150×6.5×9)。

 

形鋼の山形鋼と溝形鋼の特性比較

山形鋼と溝形鋼は、建築や土木工事でよく使用される代表的な形鋼です。それぞれの特性を比較してみましょう。

 

【山形鋼(やまがたこう)】
・断面形状:「L」字型(アングル鋼、L字鋼とも呼ばれる)
・種類。

  1. 等辺山形鋼:二辺の長さが等しい
  2. 不等辺山形鋼:二辺の長さが異なる
  3. 不等辺不等厚山形鋼:二辺の長さと厚さが異なる

    ・特徴。

  • 比較的軽量
  • 曲げに対する強度は中程度
  • 接合が容易
  • コストパフォーマンスが良い

    ・主な用途。

  • 鉄塔や橋梁の補強材
  • 建築物の補強材や接合部材
  • 門や柵の枠組み
  • クレーンを支える梁
  • 機械のフレームや台車の構造材

【溝形鋼(みぞがたこう)】
・断面形状:「コ」字型(チャンネル鋼とも呼ばれる)
・種類。

  1. 一般溝形鋼:フランジにテーパーがある
  2. 平行フランジ溝形鋼(PFC):フランジにテーパーがない

    ・特徴。

  • 曲げに対する強度が優れている
  • 施工性が高い
  • フランジ先端に丸みのある突起をつけたものとテーパーのない直角のものがある

    ・主な用途。

  • 建築物の小梁や間柱
  • 耐震ブレース
  • 仕上げの下地材
  • 耐風梁
  • 船舶、車両、機械の構造材

【比較ポイント】

  1. 強度:溝形鋼の方が曲げに対する強度が高い傾向
  2. 用途の違い:山形鋼は主に補強材や接合部材として、溝形鋼は主に梁や柱として使用
  3. 施工性:どちらも比較的施工しやすいが、用途によって適切な選択が必要
  4. コスト:一般的に山形鋼の方がコストは低い

両者は用途に応じて使い分けることが重要で、必要な強度や施工条件、コストなどを考慮して選定します。また、軽量形鋼としても両方の形状があり、主要構造部材ではない場所で使用されることもあります。

 

形鋼のI形鋼とZ形鋼の特徴と活用法

I形鋼とZ形鋼は、特徴的な断面形状を持つ形鋼で、それぞれ特定の用途に適しています。

 

【I形鋼(アイがたこう)】
・断面形状:「I」字型(I型ジョイスト、アイビームとも呼ばれる)
・特徴。

  • H形鋼と形状が似ているが、フランジ内側にテーパー(勾配)がついている
  • 同サイズのH形鋼と比べると肉厚で重量が大きく、剛性も優れている
  • フランジの内側から外側に向けて先細りになるように成形されている
  • 外側の角はエッジがきいているが、内側の角には丸み(アール)がつけられている

    ・主な用途。

  • ホイストクレーンの走行用レール(H形鋼は使用されない)
  • 建築や橋梁の構造材
  • 機械や車両の骨組み

【Z形鋼(ゼットがたこう)】
・断面形状:「Z」字型(かつては乙形鋼とも呼ばれた)
・特徴。

  • 比較的厚さが薄くても横方向の曲げに対して強い形状
  • 特殊な形状のため使用頻度は比較的少ない
  • 断面が非対称で、特定の方向の力に対して効果的

    ・主な用途。

  • ジョイント部分の補強
  • 段違いになっている箇所のステー
  • 特殊な構造物の補強材

【活用法のポイント】

  1. I形鋼の選定。
    • クレーンレールとして使用する場合は、荷重に応じた適切なサイズを選ぶ
    • 建築構造材として使用する場合は、必要な強度と剛性を確保できるサイズを選定
  2. Z形鋼の活用。
    • 非対称な形状を活かし、特定方向の力に対する補強材として使用
    • 段差のある接合部などの特殊な形状に対応する場合に有効
    • 軽量でありながら横方向の曲げに強いという特性を活かした設計
  3. 両者の使い分け。
    • 用途に応じた適切な形鋼の選定が重要
    • 必要な強度や剛性、施工条件、コストなどを総合的に判断
    • 特殊な条件下では、これらの特徴的な形状の形鋼が威力を発揮

I形鋼とZ形鋼は、一般的なH形鋼や山形鋼ほど使用頻度は高くありませんが、特定の用途においては非常に重要な役割を果たします。特に、I形鋼はクレーンレールとして、Z形鋼は特殊な補強材として、その特性を活かした活用が可能です。

 

形鋼の施工現場における選定ポイント

建築や土木の施工現場で適切な形鋼を選定するためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。形鋼の選定は、構造物の安全性や耐久性、施工効率、コストなどに大きく影響します。

 

【形鋼選定の基本ポイント】

  1. 必要な強度と剛性
    • 支える荷重や力の方向(圧縮、引張、曲げ、ねじれなど)
    • 構造計算に基づいた必要断面性能の確認
    • 安全率を考慮した余裕のある設計
  2. 施工条件と取り扱いやすさ
    • 現場での運搬や取り付けのしやすさ
    • 接合方法(溶接、ボルト接合など)との相性
    • 加工のしやすさ(切断、穴あけなど)
  3. コストパフォーマンス
    • 材料費と施工費のバランス
    • 長期的なメンテナンスコストの考慮
    • 代替材料との比較検討
  4. 環境条件への対応
    • 屋内・屋外の使用環境
    • 腐食環境(海岸近くなど)への対策
    • 火災時の性能要求

【形状別の選定ポイント】
・H形鋼:曲げに強く、主要構造材として最適。柱や大梁に適している。

 

・山形鋼:接合部材や補強材として使いやすい。軽量で扱いやすい。

 

・溝形鋼:曲げに強く、小梁や間柱に適している。

 

・I形鋼:特にクレーンレールに適している。H形鋼より剛性が高い。

 

・Z形鋼:特殊な形状を活かした補強材として有効。

 

・T形鋼:下地材や簡易な骨組みに適している。

 

【施工現場での実践的なアドバイス】

  1. 設計図書の確認
    • 指定された形鋼の種類、サイズ、材質を正確に理解する
    • 不明点は設計者に確認する習慣をつける
  2. 現場での保管と取り扱い
    • 形鋼は平らな場所に保管し、変形を防ぐ
    • 雨水による錆を防ぐため、適切な養生を行う
    • 長尺物の運搬には十分な人員と適切な機械を使用
  3. 加工と取り付け
    • 正確な寸法で切断・加工を行う
    • 接合部は特に注意して施工する
    • 溶接による変形に注意し、必要に応じて仮付けを行う
  4. 検査とチェック
    • 施工後の寸法精度や接合部の確認
    • 必要に応じて非破壊検査などを実施
    • 施工記録の適切な保管

形鋼の選定は、単に強度だけでなく、施工性や経済性、長期的な性能なども考慮した総合的な判断が必要です。現場の条件や要求性能を十分に理解し、最適な形鋼を選ぶことが、安全で効率的な施工につながります。

 

形鋼のCT形鋼と特殊形鋼の活用事例

一般的な形鋼に加えて、特殊な用途に適したCT形鋼(カットティー)や特殊形鋼も存在します。これらは特定の条件下で優れた性能を発揮し、施工現場での問題解決に役立ちます。

 

【CT形鋼(T形鋼)の特徴】
・断面形状:「T」字型
・製造方法:H形鋼をウェブ中心で2つに切断して作られる(カットティーの由来)
・特徴。

  • 比較的軽量
  • 曲げに対して一定方向に強い
  • 断面性能が小さいため、力がかかる方向に注意が必要

    ・主な用途。

  • 下地材
  • 簡易な骨組み
  • 特殊な形状が必要な部位

【特殊形鋼の種類と特徴】

  1. 球平形鋼(BP)
    • 断面が球状の突起を持つ平鋼
    • 主に建設機械のクローラー(履帯)部分に使用
    • 耐摩耗性と強度のバランスに優れている
  2. 不等辺不等厚山形鋼(NAB)
    • 辺の長さと厚さが異なる山形鋼
    • 特定方向の力に対して効率的な断面形状
    • 特殊な構造物や機械部品に使用
  3. リップ溝形鋼
    • 溝形鋼のフランジ先端に折り返し(リップ)がついた形状
    • 座屈に対する強度が向上
    • 軽量構造物の骨組みに適している

【活用事例】

  1. 工場建屋の改修工事
    • 事例:既存のH形鋼柱に補強材を追加する必要があった
    • 解決策:CT形鋼を使用して片側だけの補強を実現
    • 効果:スペースを取らず、効率的に強度アップが可能だった
  2. 特殊機械のフレーム製作
    • 事例:振動が多い環境での機械フレーム
    • 解決策:不等辺不等厚山形鋼を使用して振動方向に強い構造を実現
    • 効果:通常の形鋼より軽量化しながら必要な強度を確保
  3. 仮設構造物の迅速施工
    • 事例:短期間で組立・解体が必要な仮設構造物
    • 解決策:リップ溝形鋼を使用した軽量フレーム
    • 効果:作業効率の向上と安全性の確保を両立
  4. 狭小地での建築工事
    • 事例:狭い敷地での建築で、通常のH形鋼が搬入困難
    • 解決策:現場でCT形鋼を組み合わせて使用
    • 効果:搬入問題を解決しつつ必要な強度を確保

【選定と活用のポイント】
・特殊形鋼は一般的な形鋼より入手性が低いため、事前の調達計画が重要
・製造メーカーや規格によって寸法や性能が異なるため、詳細な仕様確認が必要
・特殊な用途に適しているが、コストが高くなる傾向があるため、費用対効果を検討
・加工や接合方法について、事前に検討や試験を行うことが望ましい
CT形鋼や特殊形鋼は、標準的な形鋼では対応が難しい特殊な条件下で、その特性を活かした活用が可能です。施工現場の制約条件や要求性能を十分に理解し、適材適所で活用することで、効率的かつ安全な施工を実現できます。

 

形鋼の世界は多様で、一般的な種類だけでなく、特殊な形状や用途に特化した形鋼も数多く存在します。施工のプロフェッショナルとして、これらの特性を理解し、最適な選択ができるようになることが重要です。