鋼管規格表の読み方と選定の基礎知識

鋼管規格表の読み方と選定の基礎知識

記事内に広告を含む場合があります。

鋼管規格表の基本構成と実務活用

鋼管規格表の重要ポイント
📋
規格の種類

JIS規格とASME規格の特徴と使い分け方法

📏
寸法表記

外径・肉厚・長さの正確な読み取り方法

⚙️
材料選定

用途に応じた最適な鋼管の選択基準

鋼管規格表のJIS規格とASME規格の違い

鋼管規格表を理解する上で最も重要なのは、日本のJIS規格と国際的なASME規格の違いを把握することです。

 

JIS規格の主要な種類

  • JIS G 3444:一般構造用炭素鋼鋼管(STK)
  • JIS G 3474:鉄塔用高張力鋼管(STKT)
  • JIS G 3475:建築構造用炭素鋼鋼管(STKN

これらの規格は日本国内の建築・土木分野で広く使用されており、特に建築構造用では耐震性能の観点から厳しい基準が設定されています。

 

ASME規格の特徴
ASME B 36.10とASME B 36.19は、主に配管システムで使用される鋼管の寸法を規定しています。これらの規格では、外径が12.75インチ(NPS 12、DN 300)より小さいパイプについて、実際の直径がNPS(公称パイプサイズ)より大きくなる特徴があります。

 

国際プロジェクトでは、ASME規格の理解が必須となるため、両規格の換算表を常備することが実務上重要です。特に石油・ガス業界では、ASME規格が標準的に使用されています。

 

JIS規格からASME規格への移行時は、材料の機械的性質だけでなく、寸法の微細な違いも考慮する必要があります。

 

鋼管規格表におけるパイプスケジュールの見方

パイプスケジュール(Sch)は、鋼管の肉厚を数値で表す重要な指標です。この数値は単純な厚さではなく、圧力に対する耐久性を表す規格化された値です。

 

主要スケジュールの種類

  • SCH 5、5S、10、10S:薄肉用途
  • SCH 20、20S、30、40、40S:標準用途
  • SCH 60、80、80S、100:高圧用途
  • SCH 120、140、160:超高圧用途

スケジュール40と80が最も頻繁に使用される理由は、これらが様々な業界で必要とされる一般的な圧力レベルに対応しているためです。

 

スケジュール計算式
パイプスケジュールの計算式は以下の通りです。
Sch = P/[σ]t × 1000

  • P:設計圧力(MPa)
  • [σ]t:設計温度下での材料の許容応力(MPa)

この計算により、使用環境に最適なスケジュールを選定できます。実際の現場では、安全率を考慮して一段階上のスケジュールを選択することが一般的です。

 

重量クラス(WGT)との対応関係も重要で、STD(スタンダード)、XS(エクストラストロング)、XXS(ダブルエクストラストロング)の3種類があります。

 

鋼管規格表の寸法表記と計算方法

鋼管規格表の寸法表記には複数の方法があり、それぞれ異なる情報を提供します。

 

基本的な表記方法

  • 外径×肉厚:Φ88.9mm×5.49mm(3 1/2"×0.216")
  • NPS×スケジュール:NPS 3インチ×Sch 40
  • NPS×重量クラス:NPS 3インチ×SCH STD
  • 外径×重量:OD 3 1/2インチ、16.8ポンド/フィート

公称パイプサイズ(NPS)の理解
公称パイプサイズは、高圧・低圧および温度環境で使用されるパイプの北米標準サイズセットです。実際の外径とは異なる場合があるため、設計時は必ず実寸法を確認する必要があります。

 

呼び径(DN)の活用
呼び径は外径に近い値ですが、実際のパイプ径とは異なります。DN50は呼び径50mmのパイプを意味し、同一呼び径の配管と配管継手は相互接続が可能です。

 

重量計算の実用性
フィートあたりのポンド(lb/ft)表記は、北米・南米で一般的です。この表記により、材料コストや輸送重量の概算が可能になります。

 

製造可能寸法範囲は製造所によって異なるため、発注前に各メーカーの仕様書を確認することが重要です。

 

鋼管規格表を使った材料選定のポイント

実際の材料選定では、鋼管規格表の数値だけでなく、使用環境や経済性を総合的に判断する必要があります。

 

用途別選定基準

  • 一般構造用:JIS G 3444(STK)が標準
  • 建築構造用:JIS G 3475(STKN)で耐震性重視
  • 鉄塔用:JIS G 3474(STKT)で軽量・高強度
  • 配管用:ASME B 36.10で耐圧性重視

製造方法による特性差
継目無鋼管は高い耐圧性能を持ちますが、電気抵抗溶接鋼管より高価です。用途に応じた製造方法の選択が、コストパフォーマンスを左右します。

 

長さ規格の考慮
標準長さは6m(20フィート)または12m(40フィート)ですが、シングルランダム長(SRL 18~25フィート)やダブルランダム長(DRL 38~40フィート)の選択により、加工工数を削減できます。

 

材質グレードの選定
ASTM A312グレード316Lのようなステンレス鋼や、API 5L、ASTM A53、ASTM A106Bなどの炭素鋼から、腐食環境や温度条件に応じて選定します。

 

発注時は、製造可能寸法範囲と納期を併せて検討し、代替材料の検討も含めた柔軟な選定が求められます。

 

鋼管規格表の製造方法による特性の違い

鋼管規格表に記載される製造方法は、最終製品の性能に大きな影響を与えるため、選定時の重要な判断材料となります。

 

電気抵抗溶接鋼管の特徴
電気抵抗溶接(ERW)鋼管は、製造効率が高く、比較的安価な製造方法です。溶接部の品質管理が重要で、JIS規格では厳格な検査基準が設定されています。小径から中径まで幅広いサイズに対応し、建築構造用途で多用されています。

 

継目無鋼管の優位性
継目無鋼管は、溶接部がないため均一な強度特性を持ちます。高圧用途や厳しい使用環境では、継目無鋼管が優先的に選択されます。製造コストは高いものの、信頼性の高さから重要構造物に使用されます。

 

LSAW鋼管とスパイラル鋼管
大径鋼管の製造には、LSAW(縦方向サブマージアーク溶接)やスパイラル鋼管が使用されます。これらは溶接技術の進歩により、継目無鋼管に匹敵する性能を実現しています。

 

板巻鋼管の応用範囲
プレスベンドやロールベンドによる板巻鋼管は、特殊形状や超大径用途で威力を発揮します。製造設備の制約から、発注前の製造可能性確認が不可欠です。

 

品質管理の重要性
各製造方法で異なる品質管理基準があり、用途に応じた適切な検査レベルの選択が必要です。非破壊検査の実施頻度や検査項目は、製造方法と使用環境によって決定されます。

 

JFE鋼管の製造設備一覧を参考にした製造可能寸法範囲の確認
JFE鋼管の一般構造用鋼管カタログ - 製造設備と寸法範囲の詳細情報
鋼管の国際規格ASME B36.10/B36.19の詳細解説
鋼管寸法規格の詳細解説 - ASME B36.10とB36.19の比較と活用方法
これらの製造方法の違いを理解することで、用途に最適な鋼管を選定し、プロジェクトの成功に貢献できます。規格表の数値だけでなく、製造プロセスが製品性能に与える影響を考慮した選定が、金属加工従事者には求められています。