帰属意識とエンゲージメントを高める組織コミットメント向上策

帰属意識とエンゲージメントを高める組織コミットメント向上策

記事内に広告を含む場合があります。

帰属意識とエンゲージメント

この記事で分かること
📊
帰属意識とエンゲージメントの違い

一方向の愛着と双方向の貢献意欲、それぞれの特性と組織への影響を理解できます

🏗️
建設業における定着率向上策

離職率低下と生産性向上を実現する、職場環境改善の具体的アプローチを紹介します

💡
組織コミットメントを高める実践方法

心理的安全性の確保からキャリア開発まで、従業員のモチベーション向上施策を解説します

帰属意識の定義と組織コミットメント

 

帰属意識とは、従業員が自分の所属する組織に対して感じる「つながり」や「一体感」といった精神的な結びつきを指します。学術的には「組織コミットメント」と呼ばれ、所属している組織に対して愛着を感じている、一体感を持っている状態を表します。建設業においては、会社の経営方針への共感や、手がける建築物・プロジェクトへの愛情から生まれる特性があります。
参考)https://media.bizreach.biz/20588/

帰属意識が高い従業員は、組織の課題を「自分ごと」として捉え、主体的に業務に取り組めるようになります。Gallup社の調査によれば、従業員の組織への帰属意識が高い企業ほど離職率が低く、生産性が約20%高い傾向が認められています。建設業界では、プロジェクトの大規模性や長期性から、従業員の帰属意識が特に重要な要素となります。
参考)https://www.itoki.jp/resources/column/article/sense-of-belonging/

一方で、帰属意識が低下すると、会社への関心が薄れ、離職率の上昇や生産性の低下といったリスクが高まります。建設業においては、現場と本社の物理的・心理的距離が帰属意識に影響を与えるケースも報告されています。人材の定着や生産性向上、企業文化の強化といった面で、帰属意識は不可欠な要素です。
参考)https://shanaiho-app.jp/cases/4228/

帰属意識とエンゲージメントの違い

帰属意識とエンゲージメントの最大の違いは、その方向性にあります。帰属意識は「従業員から企業へ」という一方通行のベクトルであるのに対し、エンゲージメントは「従業員から企業」「企業から従業員」という双方向のベクトルを指します。帰属意識が「ここに自分の居場所がある」と感じる受動的な安心感であるのに対し、エンゲージメントは「この会社のために貢献したい」という能動的な意欲を意味します。
参考)https://service.alue.co.jp/blog/sense-of-belonging

従業員エンゲージメントは、近年多く見かける言葉ですが、学術的に合意のとれた定義はなく、帰属意識、職務満足、定着意思なども含まれます。一方、ワークエンゲージメントは「仕事に対して熱意や活力がある、打ち込んでいる」という状態を指し、仕事と個人との関係性を表す概念です。帰属意識が高いからといって、必ずしも「企業へ貢献したい」という意識が伴うわけではない点に注意が必要です。​
建設業界では、帰属意識をベースにエンゲージメントが築かれるのが理想的とされています。厚生労働省の調査では、従業員のワークエンゲージメントが高い企業は、人手不足でも定着率が上昇していることが公表されています。ワークエンゲージメントと組織コミットメント、新入社員の定着率、従業員の離職率の低下には正の相関があることが確認されています。
参考)https://sp-cultive.com/blog/article-123/

帰属意識向上による離職率低下とモチベーション

帰属意識の向上は、建設業における離職率の低下に直接的な影響を及ぼします。帰属意識の高い従業員は、企業に愛着を持ち「長く組織に貢献したい」と感じるようになり、結果として定着率が上がります。人材が定着しやすくなれば、人手不足の解消や、採用・教育にかかるコストの軽減につながるという好循環が生まれます。建設業界では、明確なキャリアプランや評価制度がない企業では定着率の向上は望めず、早期離職が続けば採用コストの増大と現場の負担増加という悪循環に陥ります。
参考)https://www.irischitose.co.jp/blog/column/identification/

帰属意識が高まると、仕事に対するモチベーションも高まります。帰属意識の高まりと比例して企業への興味・関心が強くなり、企業の業績を自分ごととして捉えて積極的・能動的に仕事に取り組む従業員が増えます。従業員が自分の役割を主体的に果たし、企業の発展に意欲的に貢献する姿勢が生まれます。自分から新しいアイデアを提案する、周囲とこまめに連携をとるなど、組織全体へのよい影響が期待できます。
参考)https://hcm-jinjer.com/blog/jinji/sense-of-belonging/

建設業界における実態調査では、チームへの帰属意識が組織への帰属意識につながる可能性や、プロジェクトへの愛着と組織とのかかわりについて重要な関係性が示されています。専門性獲得により組織で仕事がやりやすくなり、帰属意識は高まるという傾向も確認されています。建設業の人材定着マネジメントにおいて、帰属意識の向上は中核的な要素となっています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/aija/90/836/90_2239/_pdf/-char/ja

帰属意識を高める職場環境とチームワーク

帰属意識を高めるには、職場環境の整備とチームワークの強化が不可欠です。オープンなコミュニケーション環境の構築が第一歩となり、従業員が自由に意見を述べ、アイデアを交換できる雰囲気を作ることが重要です。定期的なチームミーティングの開催、オンラインコラボレーションツールの活用、フィードバックを積極的に求める文化の醸成により、チームメンバー間の信頼関係が深まります。
参考)https://ones.com/ja/blog/knowledge/strengthen-teamwork-productivity/

チーム内で円滑なコミュニケーションを実施するには、誰もが対等に忌憚なく発言でき、異なる意見が生じた場合でも、お互いを認めあって着地点を見つけられる心理的安全性の高い環境をつくることが重要です。エン・ジャパン株式会社の調査では、コミュニケーションが取れている効果として、「働きやすさ」に次いで「チームワーク」が高まることを実感している人が多いという結果が得られています。心理的安全性を確保するには、上司が部下に積極的に声をかけるなど、日頃から風通しのよい雰囲気づくりがポイントです。
参考)https://mag.smarthr.jp/hr-management/od/teamwork/

建設業における心理的安全性の強化では、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方が重要視されます。心理的安全性が高まると、従業員は職場に帰属意識を持ちやすくなり、離職率の低下につながります。建設現場特有の課題として、国内外に点在する現場の社員の帰属意識を高めるために、気軽にコミュニケーションできる仕組みづくりが求められています。
参考)https://media.unipos.me/psychological-safety-and-corporate-value

帰属意識向上のための組織ビジョン共有と人材育成

組織のビジョンや目標を明確に共有することは、従業員の帰属意識を高める重要な施策です。従業員が自分の仕事に誇りを持ち、組織への帰属意識を高めるためには、会社の目的(ミッション)やビジョンを明確に伝えることが重要です。企業の存在意義や将来像が不明確だと、社員の帰属意識とモチベーションを低下させる大きな要因となります。リモートワークの普及によって生じた課題に加え、不透明な企業ビジョンと目標の共有が特に問題視されています。
参考)https://syujitsusya.co.jp/column/1-organizational-management/article-3814/

建設業における人材育成では、資格取得支援制度の導入とキャリアパスの明示が効果的です。施工管理技士や技術士などの資格取得を支援する制度を設け、受験費用の補助や勉強時間の確保、合格時の報奨金支給などを実施します。キャリアパスを明確に示すことで、将来のビジョンが見えやすくなり、入社後何年でどのような役職に就けるのか、必要な経験やスキルは何かを具体的に説明できます。評価制度と連動させることで、努力が報われる仕組みを作り、資格取得や技術習得が給与や昇進に反映されれば、モチベーションが維持されます。
参考)https://www.kokudo-kc.co.jp/column/uncategorized/739/

建設業の人材定着率を200%向上させた事例では、戦略的な人事管理と育成計画の重要性が強調されています。企業側はキャリアパスを明確に設定し、若手社員に対して成長の道筋を示すことで、優秀な人材の確保と育成、そして離職率の低下を図ることができます。デジタル化時代における新しい人材管理手法や、今後の建設業界で求められる人材戦略の構築も重要な要素となっています。
参考)https://syokunin.work/column/construction-human-resources-guide/

帰属意識向上が生産性と組織力に与える影響

帰属意識が高いと、組織が活性化し組織力や企業全体の生産性が向上します。従業員がより良い職場環境を求めて業務改善を進めたり、仕事へ積極的に取り組んだりするためです。意見交換も積極的におこなわれるので、職場の改善に向けた議論が活性化し、コミュニケーションも活発におこなわれるため、チームワークも強化されます。従業員の組織コミットメントが高い社員が多い企業ほど、平均勤続年数が長期化し、業務品質や顧客満足度が向上したという報告があります。
参考)https://ourly.jp/learning/organizational-commitment/

建設業界では、従業員エンゲージメント向上の視点から働き方改革等に関する取組が重要視されています。建設業の2024年問題において、解決の鍵は「従業員エンゲージメント」とされ、労働力不足への対応や生産性の向上が喫緊の課題となっています。組織コミットメントの向上により、業績向上を報酬として還元し、さらなるモチベーション向上という好循環が形成され、コミットメントが循環的に強化される点もメリットといえます。
参考)https://www.rice.or.jp/wp-content/uploads/2023/03/75-2-1.pdf

建設業における組織力強化では、心理的資本(PsyCap)とワークエンゲージメントが建設作業員の安全行動を高める役割を果たすことが研究で示されています。建設業は不安定な産業セクターの一つであり、従業員の認知的および参加関連の構造を評価することで、職業上の安全性を改善できる可能性があります。これらの調査結果から、組織コミットメントが企業の持続的成長と人材の定着率、パフォーマンスに直結することが示唆されます。
参考)https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpubh.2022.810145/pdf

総合建設業の人材定着マネジメントに関する研究(日本建築学会)
建設業における組織への帰属意識とチームへの愛着の関係性について、実証的なデータに基づく分析が示されています。

 

建設業の2024年問題、解決の鍵は「従業員エンゲージメント」(ITmedia ビジネスオンライン)
働き方改革関連法施行後の建設業における従業員エンゲージメント向上の重要性と具体的な施策が解説されています。

 

帰属意識を高める方法とは? エンゲージメントとの違いも解説(ビズリーチ)
帰属意識とエンゲージメントの概念的な違いと、それぞれを高めるための5つのプロセスが詳細に説明されています。

日本人労働者の帰属意識:個人と組織の関係と精神的健康 (MINERVA現代経営学叢書 51)