

テレビ配線でいう「混合器」は、複数の同軸ケーブル(異なる周波数帯)を、インピーダンスが乱れないように合成して1本に出力する機器で、無線分野のダイプレクサと同等の考え方です。
ダイプレクサ(ディプレクサ)は、ローバンド側とハイバンド側をフィルタで分け、共通のポート(コモンポート)で合流させる構造で、混合と分離を周波数で行います。
この「周波数で交通整理する」性質があるため、混合器は“電波を足し算する箱”というより、「互いの帯域に入り込まないように隔離しながら同軸に同居させる箱」と理解すると、施工後の切り分けが速くなります。
現場で特に多い構成は、地デジ(UHF)とBS・110度CS(IF帯域)を1本にまとめ、室内側で分波器(セパレーター)で再分離するパターンです。
参考)https://www.maspro.co.jp/pdfview/manual_pdf/6024.pdf
このとき、混合器の仕様に「混合周波数」「通過帯域損失」「阻止帯域減衰量(端子間阻止)」が明記されている機種を選ぶと、あとから“仕様外の帯域を通していた”事故を避けやすいです。
混同しやすいのが「分配器」「分波器」で、分配器は同じ信号を複数系統へ等分配するため、分配数に応じて電力が分かれ、減衰が増えていきます。
一方の分波器は、混合された信号を地上波とBS・CSなどに“分離するだけ”なので、一般に分配器より減衰が少ないと説明されます。
さらに実務的に重要な豆知識として、分波器は入出力を逆に使うことで、地デジとBS・CSをまとめる「混合器」として使える旨が案内されていることがあります(壁端子が分かれている現場で配線を1本化したい場面で便利です)。
ただし、分波器を混合用途で使う場合も、対象帯域(4K8Kの3224MHzまで対応など)と通電(電源供給)が要確認です。
分配器やテレビ端子が「1端子電流通過型」かどうかで、BS・CSアンテナの給電が成立する/しないが決まるため、“映らない”の原因が混合器ではなく通電経路にあるケースが現場では頻出します。
屋外(内)用の衛星ミキサー(混合器)の例では、FM・VU入力側とBS・CS入力側の双方に電流通過機能を持ち、スイッチでON/OFFできる仕様が示されています。
この種の機器では「FM・VU入力にブースターを接続しない場合は必ずスイッチをOFFにする」「ONのままUHFミキサーやUHFアンテナへ直結するとショートして故障原因になる」といった注意が明記されています。
つまり、症状が“受信不良”に見えても、実態は「通電設定ミス→ショート/保護動作→系全体が不安定」という故障モードがあり、施工時のスイッチ状態・接続先の再確認が復旧の近道になります。
また、仕様上は4K・8K放送に対応し3224MHzまで伝送できる旨や、混合対象の周波数帯(例:10~770MHz+1000~3224MHz)が明確に示されています。
建築・改修現場では、古い部材が混在しやすく「混合器は対応でも、途中の分配器・ケーブル・テレビ端子が非対応」というボトルネックが起こりがちなので、帯域対応は“系で揃っているか”で判断するのが安全です。
混合器にも通過帯域損失(挿入損失)があり、仕様表として帯域ごとに損失の上限値が記載されることがあります。
同じ仕様表に阻止帯域減衰量(端子間の回り込みを抑える性能)も示されるため、例えば「UHF側からBS・CS側へ不要な漏れ」「BS・CS側からUHF側へ飛び込み」を抑える観点で、端子間阻止が弱い機器はトラブル源になり得ます。
測定器がない現場でも、切り分けの順序としては「混合器を外して単独系で映るか→分波器(セパレーター)を新品で確認→混合器を戻す→最後に分配器以降」という流れにすると、手戻りが減りやすいです。
施工品質で意外に差が出るのはF型コネクタの処理で、編組やアルミ箔の切れ端が芯線に触れるとショートして視聴不能になる注意が具体的に示されています。
「芯線が曲がっているとショートして機器が故障」「芯線長は指定寸法に」といった記述もあるため、施工後の不具合が出たら混合器交換の前にコネクタ再加工(防水キャップ含む)を疑うのが現実的です。
見落とされがちですが、屋外設置では「電気的な仕様」より先に、雨水の侵入で性能が一気に崩れることがあります。
取扱説明書の例でも、ケーブルをつたってケースに雨水が入らないようにU字形に配線すること、入力と出力のケーブルを束ねないことが注意として示されています。
この“ケーブルの水ループ(ドリップループ)”を作らずに真っ直ぐ引くと、コネクタ部の浸水→微小な導通不良→帯域によって症状が変わる(地デジは映るがBSが乱れる等)という、判断を迷わせる故障になりやすいので、最初から水の動線で配線を設計するのが効果的です。
さらに、入力と出力のケーブルを束ねると、近接による回り込み(飛び込み)や、作業後の引っ張り応力でコネクタが緩むといった二次トラブルにもつながります。
混合器は「付ければ終わり」ではなく、屋外の機械的ストレスと水の侵入対策まで含めて“システムの一部”として扱うと、施工品質が安定します。
(混合周波数・通電スイッチ・F型コネクタ加工寸法・防水配線の注意がまとまっている:機器選定と施工チェックに有用)
マスプロ電工:衛星ミキサー(家庭用)取扱説明書(PDF)