
同軸ケーブルの規格表には、建築事業者が施工時に必要とする重要な情報が集約されています。JIS規格における品名記号は「5D-2V」のような形式で表記され、これらの記号には明確な意味があります。
最初の数字(5)は絶縁体外径を示し、数字が大きいほど太いケーブルを意味します。次のアルファベット(D)は特性インピーダンスを表し、Dは50Ω、Cは75Ωを示します。
実際の太さと減衰量の関係について、具体的な数値を以下に示します。
この数値から分かるように、ケーブルが太くなるほど減衰量が小さくなり、長距離伝送に適することが理解できます。
JIS規格同軸ケーブルの規格構成には、建築現場での品質管理に欠かせない複数の測定項目があります。規格構成の分類項目として、内部導体の構成(本/mm)、絶縁体の外径(mm)、特性インピーダンス(Ω)、波長短縮率MHz(%)、減衰量(dB/km)、外部導体(mm)、VCシース(mm)、概算質量(kg/km)、標準長(m)、耐電圧(ACV/1分)が設定されています。
特に注目すべきは、ケーブル名称に含まれる材質記号の違いです。最も一般的な「2V」は、中心導体にAC(軟銅線)、絶縁体にPE(充実ポリエチレン)、外部導体にA(一重軟銅線)、外部被覆にPVC(塩化ビニール)を使用しています。
「2W」は外部導体がAA(二重軟銅線)で構成され、二重シールドとも呼ばれ、2Vより少し太くて少し硬い分、シールド性が向上し低損失を実現します。
意外に知られていない「QE」シリーズは、絶縁体にLP(充実架橋ポリエチレン)を使用することでPEより耐熱性を向上させ、同軸コネクタの中心コンタクトを半田付けで取り付ける製品に特に適しています。
MIL規格(Military Specifications and Standards)は米軍仕様に基づく高周波同軸ケーブルの規格で、RGタイプとして知られています。この規格は高周波の映像機器や通信機器の接続に広く使用されており、建築現場での特殊用途に対応します。
代表的なRG規格ケーブルの特性は以下の通りです。
特筆すべきは、RG-316/Uのテフロン系材質使用による高温耐性で、一般的なPVC被覆では使用困難な環境でも安定した性能を発揮します。
インピーダンス別の用途分類では、75Ω系のRG59がE1、DS3、ATMに、50Ω系のRG58が10Base-2に使用され、それぞれJIS相当サイズの3C-2Vと3D-2Vに対応します。
同軸ケーブルの構造による性能差は、建築現場での用途選定において極めて重要な要素です。絶縁体材質による分類では、充実ポリエチレン(PE)、発泡ポリエチレン(FP)、高発泡ポリエチレン(HF)の順に低損失性能が向上します。
「FB」シリーズは絶縁体にFP(発泡ポリエチレン)を使用することで低損失を実現し、外部導体の軟銅線とアルミ箔の組み合わせにより遮蔽性に優れ、外部ノイズの影響を大幅に軽減します。
さらに高性能な「SFA」シリーズでは、絶縁体にHF(高発泡ポリエチレン)、外部導体にアルミ箔ではなく銅箔を使用することで、FBより低損失で遮蔽性も向上しています。
軽量化ニーズに対応した「LITE」シリーズは、内部導体にCWA(銅被覆アルミ線)を使用し、通常のFB・SFAと同寸法で最大約30%の軽量化を実現しています。この軽量化は、高層建築物での施工時における作業効率向上に大きく寄与します。
環境配慮型の「EM」シリーズは、塩素などのハロゲン物質を含まない環境に優しい材料を使用し、JIS C 3005による60度傾斜難燃性試験合格品として、建築基準法の防火規定に適合する設計となっています。
建築事業者にとって同軸ケーブルの適切な選定は、施工後のメンテナンス性と長期的な性能維持に直結する重要な判断です。選定基準の第一は伝送距離と減衰量の関係で、一般的に太いケーブルほど減衰量が少なくなるため、長距離伝送では太めのケーブルを選択することが理想的です。
インピーダンス選択では、50Ωが無線通信や高周波回路向け、75Ωがテレビ放送や映像伝送向けに使用されることが基本原則となります。しかし、建築現場では混在する場合があるため、事前の用途確認が不可欠です。
施工環境による材質選択では、屋外や高温環境ではテフロン系被覆のRG-316/Uタイプ、屋内の一般環境では経済性を重視したPVC被覆タイプが適しています。
意外に見落とされがちな要素として、ケーブル重量があります。高層建築物での垂直配線では、ケーブル自重による張力が問題となる場合があり、LITE仕様による軽量化が有効な対策となります。
将来的な配線変更への対応を考慮すると、CD管内への配線では外径の小さいケーブルを選択し、余裕を持った配管径の設計が重要になります。この際、1.5D系や3D系の細径ケーブルの採用により、配線作業の効率化が図れます。
品質管理の観点では、JIS規格品の選択により、規格に基づいた品質保証と長期的な供給安定性が確保されます。特に大規模建築プロジェクトでは、規格統一による施工管理の簡素化と、将来の更新・増設時の互換性確保が重要な選定要因となります。