
コンクリートのひび割れは、その幅と深度によって適用する補修工法が大きく異なります。日本コンクリート工業会では、ひび割れ幅を基準とした補修工法の指針を以下のように定めています。
ヘアークラックと呼ばれる微細なひび割れは、幅0.2~2mm程度、深さ約10mmが目安となります。これらの診断には、クラックスケールやルーペを使用して正確な測定を行うことが重要です。
構造クラックの場合、地震や重量物の外部力、設計上の問題や施工不備が原因となっている可能性があるため、専門業者による詳細な診断が必要です。
補修工法の選択は、ひび割れの状況と建物の用途に応じて慎重に行う必要があります。以下は各工法の特徴と適用条件です。
表面被覆工法(シール工法)
塗膜弾性防水材やポリマーセメントモルタルで表面を被覆する工法で、微細なひび割れ(幅0.2mm以下程度)に適用されます。内部への水や炭酸ガスの侵入を防ぎ、耐久性を向上させる効果があります。
注入工法
0.2mm以上のひび割れに樹脂系またはセメント系の材料を注入する工法です。防水性と耐久性の回復のほか、使用材料によってはコンクリート躯体の一体化を図ることも可能です。現在では専用の注入器具を用いた注入方法が主流となっています。
充填工法
ひび割れ幅が1.0mm以上の比較的大きなひび割れに適用する工法で、ひび割れに沿ってコンクリートの表面を10mm程度の幅でU字型にカットし、その部分に補修材を充填します。
市場には多様な補修材料が存在しますが、以下は実際の施工現場で高い評価を得ている製品の比較表です。
製品名 | メーカー | 対応幅 | 特徴 | 価格帯 |
---|---|---|---|---|
クラックイレイザー | ヤブ原産業 | 0.2~2.0mm | カチオン性ポリマー配合、高強度 | 中価格 |
安心補修スティック | 住友大阪セメント | 表記無し | 携帯便利、簡単施工 | 低価格 |
インサルクラックシャットキット | エービーシー商会 | 1mm以下 | スプレー式、簡単作業 | 低価格 |
クラックフィラー | アッシュフォードジャパン | 0.2~2.0mm | 超微粒子セメント、高流動性 | 中価格 |
ひびうめーる | ツネミ | 0.3~3.0mm | 道具一式キット、3色展開 | 中価格 |
特にクラックイレイザーは、カチオン性ポリマー配合により高強度・高耐久・高接着を実現し、接着強度1.4N/㎟、圧縮強度42.2N/㎟を誇ります。
DIYでのコンクリートひび割れ補修は、適切な手順を踏めば確実な効果を得られます。以下は基本的な施工手順です。
事前準備
施工手順
注意点
コンクリートひび割れの補修は、単なる応急処置ではなく、建物の長期的な耐久性向上につながる重要な保全作業です。この観点から、近年注目されているのが「自己治癒コンクリート」の技術です。
自己治癒コンクリートの革新性
自己治癒コンクリートは、人の傷口が自然治癒するように、コンクリート劣化の大きな原因となるひび割れを初期段階で自動的に修復する技術です。この技術により、従来の定期的な補修作業の頻度を大幅に削減できる可能性があります。
防水性・水密性の基準
日本建築学会では、防水性・水密性の観点から以下の基準を設定しています。
長期効果を高める補修のポイント
コンクリートひび割れ補修は、建物の資産価値維持と安全性確保の観点から、決して軽視できない重要な保全作業です。適切な診断と工法選択により、建物の寿命を大幅に延ばすことが可能となります。