硬化剤と種類から用途まで建築業界で知るべき基礎知識

硬化剤と種類から用途まで建築業界で知るべき基礎知識

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硬化剤と種類による性能と選定

硬化剤の基本分類と特徴
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アミン系硬化剤

常温硬化性に優れ、接着性と耐久性を兼備

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酸無水物系硬化剤

低毒性で長いポットライフを実現

チオール系硬化剤

低温速硬化と高反応性を両立

硬化剤は、樹脂材料を化学反応によって硬化させる重要な添加剤です 。建築業界において、塗料、接着剤、シーリング材等の性能を決定する重要な要素として位置づけられています。硬化剤の選択により、最終的な材料の耐久性、作業性、硬化時間が大きく左右されるため、適切な種類の選定が不可欠です 。
参考)硬化剤とは?種類や使い方、各メーカーのおすすめ製品も解説!│…

 

硬化剤のアミン系種類と建築用途での特徴

アミン系硬化剤は、硬化剤の中で最も歴史があり、種類と使用量が多い硬化剤です 。脂肪族ポリアミン、脂環族アミン、芳香族アミンの3つの主要な種類に分類され、それぞれ異なる反応性と硬化物特性を示します 。
参考)https://www.threebond.co.jp/technical/technicalnews/pdf/tech32.pdf

 

脂肪族ポリアミンは常温硬化性に優れ、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンが代表的な製品です 。これらは接着性に優れた硬化物を得ることができますが、毒性が強く皮膚炎や呼吸器障害の原因となるため、変性アミンとして使用されることが多くなっています 。
参考)エポキシ樹脂

 

建築用途では、反応性の異なる1級から3級のアミノ基を有する化合物に変性を加えることで、多種多様な特徴を持ったアミン系硬化剤が開発されています 。アミド変性により接着性と防食性が向上し、アダクト変性では毒性低減と可使時間短縮、発熱量の低減が実現されます 。
参考)エポキシ樹脂とは

 

変性アミンは毒性および揮発性が低く、樹脂に対して同量配合すればよいように調整されており、取扱いやすさが大幅に改善されています 。特に分子量が大きいものは皮膚刺激性が小さく、可塑性と可とう性に富む硬化物を得ることができ、接着性と靱性が向上します 。
参考)エポキシ樹脂接着剤 – SANYO CHEMICAL MAG…

 

硬化剤の酸無水物系種類と低毒性特性

酸無水物系硬化剤は、アミン系硬化剤と比較して毒性が低く、ポットライフが長く、発熱が少ないという特徴を持っています 。脂環式酸無水物系硬化剤であるHN-2200やMHAC-Pは、液状硬化剤でエポキシ樹脂との混合が容易という利点があります 。
参考)エポキシ樹脂硬化剤

 

MHAC-Pは耐熱性に優れた硬化物が得られるという特性があり、特に高温環境での使用が想定される建築用途において重要な選択肢となります 。混合物のポットライフが長く安定しているため、大規模な建築現場での作業効率向上に貢献します。
注型、含浸、積層等の広い分野で使用することができ、建築業界における多様な用途に対応可能です 。電気・電子部品の封止用途でも広く使用されており、建築物における電気設備の保護材料としても活用されています 。
参考)技術情報 エポキシ樹脂硬化促進剤│サンアプロ株式会社

 

酸無水物系硬化剤の中でも液状酸無水物硬化系用の代表的なグレードであるU-CAT SA 102(DBUのオクチル酸塩)は、硬化時の発熱が穏やかで硬化樹脂の着色が少ないという優れた特性を有しています 。

硬化剤の反応性種類と温度依存特性

硬化剤の反応性は活性化エネルギーによって決定され、硬化時間と密接な関係があります 。活性化エネルギーが低い硬化剤ほど硬化時間が短く、室温でも効率的な硬化反応が進行します。
参考)https://www.denso.com/jp/ja/-/media/global/business/innovation/review/12-2/12-2-doc-13-ja.pdf

 

メルカプタン系硬化剤は、室温硬化エポキシ系接着剤の硬化剤として用いられる変性ジアミンと比較して活性化エネルギーが低いという特徴があります 。この低い活性化エネルギーにより、低温環境での硬化が可能となり、建築現場での季節的な制約を軽減できます。
チオール系硬化剤は反応性が高く、低温速硬化が可能な種類として注目されています 。通常の樹脂では主剤の性質が強く反映されますが、エポキシ樹脂は硬化剤の種類、使用量、硬化条件によって硬化後の特性が大きく変化する特徴があります 。
参考)エポキシ樹脂チオール系硬化剤の特長 | 堺化学工業株式会社

 

潜在性硬化剤として知られるBF₃とアミンの付加物は、ポットライフが短すぎる問題を改善した製品として位置づけられています 。建築現場での作業効率を考慮すると、適切なポットライフを持つ硬化剤の選択が重要な要素となります。

硬化剤種類による建築現場での選定基準

建築現場での硬化剤選定においては、塗料との相性、求める性能、作業環境の3つの主要な基準を考慮する必要があります 。塗料の種類によって使用できる硬化剤の種類が決定され、ウレタン塗料にはイソシアネート系、エポキシ塗料にはアミン系が一般的に使用されます 。
参考)外壁塗装における硬化剤の役割とは?種類や選び方、注意点を徹底…

 

耐候性を重視する場合は耐候性に優れた硬化剤を、耐薬品性を重視する場合は耐薬品性に優れた硬化剤を選択する必要があります 。海岸地域では塩害に強い硬化剤を、工業地域では酸性雨に強い硬化剤を選定することが求められます。
作業環境における気温と湿度の影響も重要な選定要素です 。低温環境では低温硬化性に優れた硬化剤を、高湿度環境では湿気に強い硬化剤を選択することで、施工品質の安定化を図ることができます。
施工現場での使用環境に合わせた適度な粘度、作業時間を確保できるポットライフ、垂直面での施工時のタレにくさなどの作業性も重要な選定基準となります 。これらの要素を総合的に判断し、最適な硬化剤種類を選択することが、建築物の品質向上につながります。

硬化剤種類の建築業界における最新技術動向

建築業界における硬化剤技術は、環境配慮と高性能化の両立を目指した開発が進んでいます。マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤は、一液性エポキシ樹脂組成物として注目される新しい種類の硬化剤です 。この技術により、二液混合の手間を省き、施工効率の向上を実現しています。
参考)https://patents.google.com/patent/WO2010098431A1/ja

 

LED封止用途では電気特性を損なわず、硬化反応時の急激な発熱がなく、硬化後の樹脂着色が少ない硬化剤が求められています 。U-CAT SA 506(DBUのp-トルエンスルホン酸塩)は、従来品と併用することで硬化発熱の挙動を非常に穏やかにする革新的な製品です 。
半導体封止材用途では、成型サイクルに見合った硬化促進性能として、175℃で1~2分後の脱型に対応するため、25~35秒程度のゲルタイムが要求されています 。このような高精度な制御技術は、建築用材料の品質管理にも応用されつつあります。
構造内のカチオン成分の置換基を変更するなど組成を工夫した新規エポキシ樹脂硬化促進剤により、耐熱性および耐光性が改良された硬化物が開発されています 。独自の耐久テストでは従来品と比較して約30%の耐久性改善が確認されており、建築物の長寿命化に貢献する技術として期待されています。