
接着剤は形態による分類として、液体タイプと固体タイプに大きく分けられます。液体タイプには水溶液形、溶剤形、水分散形(エマルション)、無溶剤形があり、固体タイプには固形状やフィルム・シート状が含まれます。建築現場では主に液体タイプの塗布用接着剤が使用され、作業性と接着性のバランスが重視されます。
参考)(2)建材用接着剤・シーリング材の種類
主成分による分類では、有機系高分子化合物が中心となり、その中でも合成系高分子化合物が高い比率を占めています。代表的なものとして、エポキシ樹脂系、ウレタン系、シリコーン系、アクリル系などがあり、それぞれ異なる特性を持ちます。建築事業者は被着材の種類や使用環境に応じて、最適な主成分の接着剤を選択する必要があります。
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接着剤の硬化方法は、室温硬化形、熱硬化形、熱溶融形など複数のタイプに分類されます。室温硬化形には溶剤揮散形、触媒添加形、湿気硬化形、嫌気硬化形があり、常温での作業が可能なため建築現場で広く採用されています。特に一液湿気硬化型のシリコーン系接着剤は使いやすく、シーリング材として多用されています。
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二液性接着剤は主剤と硬化剤を混合することで化学反応を起こし硬化するタイプで、エポキシ系が代表的です。混合の手間はかかりますが、下地への付着性、乾燥性、塗膜の強度に優れており、公共工事などで多く使用されます。一方、一液型接着剤は開缶後すぐに使用できる作業性の良さがあり、一般住宅の施工に適しています。
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被着材との相性は接着剤選定の最重要ポイントです。金属同士の接着には耐熱・耐水・耐久性が求められ、二液型エポキシ樹脂系が適しています。エポキシ系は硬いもの同士をしっかり接着する特性があり、金属・セラミック・炭素繊維などの高機能材料の接合に最適です。
参考)接着ガイド:2.接着剤の選び方
コンクリートと木材の接着には、酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤が広く使用されており、初期接着力に優れ軽量物なら仮止め不要です。金属とコンクリートの接着には、変成シリコーン樹脂系の一液常温硬化型が耐水性に優れ、弾性があるため衝撃や振動に強い特徴があります。木材と複合材の接着にはウレタン系が適しており、柔軟性と強度のバランスが取れています。
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エポキシ樹脂系接着剤は耐熱性・耐水性・耐薬品性に優れ、屋外での使用や化学薬品への曝露などの厳しい環境でも高い強度と耐久性を発揮します。硬化後は硬く強固な接合体となり、機械的負荷にも十分耐えられるため、構造用接着剤として建築分野で重要な役割を果たしています。
参考)https://www.3mcompany.jp/3M/ja_JP/bonding-and-assembly-jp/resources/structural-adhesives-resources/full-story/~/epoxies-are-not-all-epoxies/?storyid=09e8047e-cf63-43a6-a7c2-8ca2c7ba456e
ウレタン系接着剤は強度と柔軟性を兼ね備え、衝撃や振動などの荷重に耐える特性があります。硬化後も弾性を保つため、振動や衝撃を受ける構造物の接着に適しており、複合材料の接合にも優れた性能を示します。シリコーン系は耐熱性・耐寒性に優れ、-40℃から80℃といった広い使用温度範囲を持つため、温度変化の大きい屋外環境での施工に最適です。
参考)https://www.monotaro.com/k/store/%E9%87%91%E5%B1%9E%E3%81%A8%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AE%E6%8E%A5%E7%9D%80%E5%89%A4/
建築事業者が接着剤を選定する際、一般的な物性だけでなく、施工現場特有の条件を考慮した評価が重要です。例えば、ポットライフ(混合後の使用可能時間)は二液型接着剤において重要な指標であり、気温が高い夏季は表示時間よりも短くなるため、作業計画に大きく影響します。
参考)塗料の1液型と2液型の違いを教えてください - 一級建築士と…
また、水中硬化型接着剤は、完全に乾燥できない箇所への施工や濡れた場所での金属・コンクリート・木材の充填接着に有効で、通常の接着剤では対応できない特殊環境での作業を可能にします。さらに、低ホルマリン性やF☆☆☆☆登録製品など、環境対応や健康への配慮も重要な選定基準となっており、室内施工では有害ガスの発生が少ない水性接着剤が推奨されます。
参考)https://www.monotaro.com/s/attr_f3590-%E8%80%90%E4%B9%85%E3%83%BB%E8%80%90%E6%91%A9%E8%80%97/q-%E8%80%90%E7%86%B1%20%E6%8E%A5%E7%9D%80%E5%89%A4/
建築用接着剤は被着材の組み合わせ、使用環境、施工条件、安全性など多角的な視点から選定する必要があります。接着剤メーカーの総合カタログに掲載されている二種類の被着材の組合せ表を活用すれば、適用可能な接着剤の種類を効率的に絞り込むことができます。エポキシ系、ウレタン系、シリコーン系それぞれの特性を理解し、現場の要求性能に最適な接着剤を選択することが、高品質な建築施工につながります。
参考)接着剤の選定、評価方法|接着ゼミ|マコー株式会社
建材用接着剤の分類と種類の詳細 - 独立行政法人製品評価技術基盤機構
接着剤の種類と特徴の専門解説 - ノードソン株式会社
接着剤の選び方ガイド - セメダイン株式会社