

建築の色指定でよく出てくる「マンセル値」は、色相(Hue)・明度(Value)・彩度(Chroma)の三属性で色を表す表記です。代表的な書き方は有彩色が「HV/C」(例:5R4/14)で、無彩色は明度だけを「N」を付けて表します(例:N5.5)。この体系はJISの色の表示方法(JIS Z 8721)にも採用され、色票としてはJIS標準色票などで確認できます。
一方で「マンセル値変換 日塗工」と検索される背景には、“マンセル値で指定された色を、日塗工(日本塗料工業会)の塗料用標準色の色票番号に置き換えたい”という現場ニーズがあります。ところが、マンセル値は汎用の表色系である一方、日塗工は「塗料で再現できること」を前提に選定された色票で、管理の単位も「色票番号」です。つまり、変換は「完全一致の換算」ではなく「日塗工のどの色票が最も近いかを決める行為」になりやすい、という点を最初に押さえる必要があります。
さらに厄介なのは、同じマンセル値の表記が付いていても、実物の色票が完全に同じ色として保証されるわけではないことです。日塗工側も、マンセル記号のみでは色を特定できず、マンセル値は参考値であり、受発注は日塗工色票番号で行うよう注意喚起しています。建築実務では「マンセル値は共通言語として便利だが、契約の色指定は“物”としての色票番号に寄せる」方が事故を減らします。
参考:日塗工の色指定の注意(マンセル値は参考、受発注は色票番号)
https://www.toryo.or.jp/jp/color/standard/color-caution.html
日塗工の塗料用標準色は、見本帳が2年ごとに発行され、色票番号の先頭に発行年度を示すアルファベット(発行年度記号)が付きます。例えば2024年版は「P」で、同じ色番号でも「P」を付けて版を特定することが、色違い防止の基本動作になります。過去版の記号一覧も公開されており、設計図書や既存建物の補修で「いつの版のどの番号か」を特定する手がかりになります。
現行の色票番号は、マンセル値に基づいた「三属性表示方式」として構成されています。公開されている説明では、例として「L15-60V」のように、発行年記号+色相区分(2桁またはN)+明度区分(2桁)+彩度区分(アルファベット)で表されます。ここで重要なのは、日塗工の番号体系が“マンセルの発想”を取り込んでいる点で、現場が「マンセル値変換 日塗工」を求める心理的ハードルを下げていることです。
ただし「体系がマンセル的」=「マンセル値から一意に逆算できる」ではありません。日塗工の色票番号は、色相・明度・彩度の区分を使いながらも、最終的には日塗工が採録した“色票の集合”として定義されます。したがって、マンセル値が分かっても、日塗工側に完全一致の色票が存在しない場合は「近似」「要調色」「別体系での合意(例:実サンプル承認)」が必要になります。
参考:日塗工 色票番号の構成(発行年度記号、三属性表示方式)
https://www.toryo.or.jp/jp/color/standard/number.html
「同じ日塗工番号なら同じ色」と思いがちですが、日塗工は環境負荷低減のため2007年D版から塗料を変更しており、2005年C版以前と同じ色番号でも“僅かに異なる色がある”と明記されています。正面からは同じに見えても、斜めからの見え(フロップ)や照明条件で差が出る可能性があり、補修や増築での色合わせほど影響が大きくなります。さらに受発注時には、発行年度記号を付けて版を区別するよう求めています。
また日塗工は、色見本帳そのものの「有効期限を3年」としている理由も公開しています。建築物や色見本帳は外界条件で変退色するため、古い見本帳同士で“同じ色”の認識を共有できないことが欠点になり、結果としてクレームや係争につながるためです。ここは見落とされがちですが、「マンセル値変換 日塗工」を真面目にやるほど、実は“変換表の正しさ”より“見本帳の鮮度・保管・同一版での合意”が支配的になります。
実務では、次のような事故パターンがよく起きます。
対策の基本は「マンセル値を補助にしても、発注・検収・承認は日塗工色票番号+版(年度記号)+現物見本で固める」です。特に改修工事は、既存塗膜の退色があるため、日塗工の“番号の一致”だけでは一致しません。既存面に合わせる場合は、現地の色(測色・現物)を優先して「合わせに行く」運用に切り替えるのが現実的です。
参考:日塗工 色違い防止の注意(D版以降の変更、年度記号、マンセル値は参考)
https://www.toryo.or.jp/jp/color/standard/color-caution.html
ここでは「変換」を“机上の換算”ではなく“施工で色違いを起こさないための手順”としてまとめます。ポイントは、仕様書の言葉を「曖昧な数値」から「責任の所在が明確な指定」に変えることです。
✅ 推奨フロー(設計~発注~検収)
📌 仕様書に入れておくと効く文言例(そのままコピペは避け、案件用に調整)
そして“変換表”を使う場合の注意点です。ネット上にはマンセルと日塗工の対応を説明するページや、マンセルの概念(色相・明度・彩度)を整理した資料が多数ありますが、これらは「色を探すためのナビ」にはなっても「契約上の免責」にはなりません。建築は面積が大きく、塗膜の光沢・ローラー目・下地吸い込みでも見えが変わるため、最後は必ず実塗板で合意するのが安全です。
検索上位では「マンセル値で発注しない」「D版以降で色が違う」がよく語られますが、現場で意外に効くのが“色見本帳の保管と寿命管理”です。日塗工は色見本帳の有効期限を3年としている理由を明確にしており、両者が同じ条件で原本を保有していないと共通認識が作れない、外界条件で原色を保つのは難しい、としています。つまり、色違いの原因は「変換が間違った」より前に、「基準となる色票が既に劣化している」ことがあり得ます。
そこで、建築会社・塗装会社側ができる、地味だけど強い運用を提案します。
これは「マンセル値変換 日塗工」をする前段の品質保証です。色は数値ではなく“契約で共有された基準物”として扱うほうが、結果的に手戻りが減ります。特に改修工事で、施主が「前と同じ色」を求めるケースでは、日塗工番号の一致より“当時の承認塗板”が最強のエビデンスになります。色番号が同じでも人間の印象は条件で揺れるため、証拠として残るものを増やすほど、現場はラクになります。
参考:日塗工 色見本帳の有効期限(変退色と共通認識の問題)
https://www.toryo.or.jp/jp/color/standard/number.html