

同じ「60」表記でも、メーカーが違うと外径が最大1.3mm異なり、接合部から雨漏りが発生します。
日本の住宅で使用される丸樋(半丸型の軒樋・丸型の竪樋)には、用途に応じた複数の規格サイズが存在します。まずは主要なサイズ体系を把握しておきましょう。
軒樋(半丸型)のメインサイズは以下の通りです。
| 呼び径 | 幅(開口部) | 定尺長さ |
|--------|------------|---------|
| 75mm | 約75mm | 2,700mm |
| 105mm | 約105mm | 3,600mm |
| 120mm | 約120mm | 3,600mm |
一般住宅で最もよく採用されるのは 105mm です。間口の広い建物や降雨量の多い地域では 120mm が選ばれます。105mmの半円を広げたイメージは、ちょうど一般的なマグカップの直径程度(約10cm)と覚えると現場での感覚がつかみやすくなります。
竪樋(丸型)のサイズ一覧は次のとおりです。
| 呼び径 | 外径の目安 | 定尺長さ |
|--------|----------|---------|
| 45mm | 約45mm | 2,700mm |
| 60mm | 約60mm | 2,700mm |
| 75mm | 約75mm | 2,700mm |
| 90mm | 約90mm | 3,600mm |
一般住宅で最も多く使われるのは 直径60mm の竪樋です。屋根面積が広い場合や豪雨の多い地域では75mmが使われることもあります。60mmはちょうど一般的な缶ジュース(直径約66mm)より少し細い程度のサイズ感です。
これが基本の規格です。
「呼び径60mmなら同じサイズだろう」と思いがちですが、実際にはメーカーによって外径・内径が数ミリ単位で異なります。これを知らずに異なるメーカーの丸樋部材を組み合わせると、接合部に隙間が生まれて雨水が漏れ出すリスクが生じます。
主要4メーカーの竪樋60・75サイズを実際の寸法で比較すると、その差は一目瞭然です。
| メーカー | 呼び径60の外径 | 呼び径75の外径 |
|---------|-------------|-------------|
| 積水化学工業(エスロン) | 59.7mm | 73.7mm |
| Panasonic | 60.4mm | 75.5mm |
| デンカアステック | 60.2mm | 75.1mm |
| タキロンシーアイ | 61.0mm | 74.0mm |
同じ「呼び径60」でも、積水化学工業とタキロンシーアイでは外径が1.3mmも違います。指の爪の厚みほどの差ですが、樋のジョイント部ではこれが水漏れの直接原因になります。これは見逃せない違いです。
雨樋部材はメーカー間の互換性が基本的にありません。部分交換や補修の際は、必ず既存部材のメーカーと品番を確認してから同一メーカーの製品を選ぶことが原則です。
品番の調べ方は、軒樋の「止まり」や「軒継手」の刻印をチェックするのが最も確実です。日当たりのない場所や樋の内側にも刻印が残っていることが多いので、劣化が進んでいる場合は日陰部分も含めてくまなく確認しましょう。施工時の見積書が手元にあれば、メーカーと品番が記載されているケースが多く、それを参照するのも有効な手段です。
参考:メーカー別の規格サイズについては斎田株式会社のブログが詳細なデータをまとめています。
交換・補修の際に正確なサイズを把握することは、施工不良を防ぐ上で欠かせない作業です。軒樋と竪樋では測り方が異なるので、それぞれのポイントを押さえましょう。
軒樋(半丸型)の測り方
半丸型の軒樋は、半円の内側の直径(内寸)を測るのが基本です。外側の寸法はメーカーによって微妙に異なるため、外寸を参照すると選定ミスにつながる場合があります。ただし、経年劣化で変形していることもあるため、寸法の計測だけに頼らず、「止まり」「軒継手」などの部材に刻印されている品番を確認するのが最も確実な方法です。
竪樋(丸型)の測り方
丸型の竪樋は、外径が呼び寸法と対応しています。メジャーで外周を測り、直径に換算するか、ノギスで直接外径を測ることで呼び径を特定できます。角型の竪樋はメーカーごとに形状が大きく異なるため、部材の刻印や品番を先に調べる方法が確実です。
測定時の注意点をまとめると以下のとおりです。
- 樋本体だけでなく「止まり」「継手」「エルボ」などの部材にある刻印を必ず確認する
- 変形・劣化が進んでいる場合は複数箇所で測定し、平均値を参考にする
- 既存品をすぐに廃棄せず、品番表示部分だけでも写真に撮っておく
- 施工時の見積書・施工計画書が残っていれば品番を照合する
品番の確認が大切です。
丸樋のサイズは「なんとなく今と同じでいいだろう」では不十分で、屋根の投影面積と地域の降雨強度を組み合わせた排水計算が正しい選定の根拠になります。
まず排水計算の基本的な考え方を整理します。
🔢 屋根の降水量(Q)の求め方
$$Q = A \times a$$
- A:屋根投影面積(竪樋1本が受け持つ範囲) ※単位:㎡
- a:1秒間の降雨強度 ※単位:m/s(降雨強度mm/hを3,600,000で割って換算)
例えば降雨強度160mm/hの地域で、竪樋1本あたりの受け持ち面積が40㎡(例:奥行き4m×長さ10m)の場合。
$$a = 160 \div 3{,}600{,}000 \approx 0.0000444 \text{ m/s}$$
$$Q = 40 \times 0.0000444 \approx 0.00178 \text{ m}^3/\text{s}$$
この降水量を上回る排水量を持つ軒樋・竪樋を選べば、原則としてオーバーフローは発生しません。軒樋の排水量は「排水有効断面積×排水速度÷安全係数1.5」、竪樋の排水量は「流水係数0.6×落とし口の流速×流水断面積」で算出します。
屋根面積を目安にした簡易的な推奨サイズ一覧も参考になります。
| 屋根投影面積(目安) | 推奨軒樋サイズ | 推奨竪樋サイズ |
|------------------|-------------|-------------|
| 50㎡未満 | 幅90mm程度 | 直径45mm |
| 50〜100㎡ | 幅105mm | 直径60mm |
| 100〜200㎡ | 幅120mm | 直径75mm |
| 200㎡以上 | 幅150mm以上 | 直径100mm以上|
ただし、これは時間雨量50〜100mm/h程度を想定した目安です。近年はゲリラ豪雨で瞬間的に150〜160mm/hを超えるケースもあります。計算上の排水量に対して20〜30%の余裕を持たせたサイズを選ぶことが、長期的なトラブル回避につながります。余裕を持たせた設計が基本です。
各メーカーはウェブ上で排水計算フォームを公開しています。パナソニックの「アイアン雨とい排水計算システム」や積水化学工業の「排水計算シミュレーション」を活用すると、より正確なサイズ選定が可能です。
参考:屋根投影面積と降雨量の計算方法について詳しく解説されています。
屋根の雨水排水計画|雨樋の寸法選定と排水能力計算方法の解説|Architerial
サイズ選定の失敗が現場でどのようなトラブルにつながるか、具体的に把握しておくことは重要です。「排水できればいい」ではなく、建物全体への影響を視野に入れた判断が必要です。
リスク①:オーバーフローによる外壁・基礎への損傷
サイズが小さすぎる軒樋は、大雨のたびに雨水があふれ出します。溢れた水が外壁に直接当たり続けると外壁材が傷み、シーリングの劣化を早め、最終的には雨漏りへと発展します。外壁の部分補修だけで3万円前後、大掛かりな修繕では20万円以上かかることもあります。地面への直撃が続くと基礎周辺に水が溜まり、建物の耐久性にも関わります。
リスク②:雨水の重さによる樋本体の変形・破損
容量を超えた雨水が樋内に溜まると、水の重量(1リットル=1kg)が支持金具に集中します。塩ビ製の軒樋はもともと軽量設計のため、想定外の荷重が繰り返しかかると変形や金具の抜けが発生します。破損修理は部分補修でも1万〜10万円、足場が必要になれば6万〜30万円規模になります。
リスク③:異メーカー部材の混用による漏水
前述のメーカー間寸法差により、異なるメーカーの部材を接続すると接合部からじわじわと漏水が始まるケースがあります。症状が小さく見えても、外壁の内側に水が回り込むと修繕コストは一気に跳ね上がります。
適切なサイズ選定は、初期費用の最適化だけでなく、建物の長寿命化という大きな価値につながっています。施工の際は「今と同じサイズ」という判断よりも、現行の排水能力が地域の降雨強度に対応しているかを必ず確認することが、建築業従事者としての重要な確認事項です。
参考:丸型・角型の雨樋サイズと価格目安、選定方法の詳細はこちら。
雨樋にはどんな種類やサイズがあるの?屋根屋が完全解説|上清工業