もたれ式擁壁の施工方法完全ガイド

もたれ式擁壁の施工方法完全ガイド

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もたれ式擁壁施工方法

もたれ式擁壁施工の全体像
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基礎工事

堅固な地盤への基礎設置と地盤反力の確保

🧱
裏込め材施工

適切な材料選定と転圧による安定性確保

安全対策

型枠の浮き止め・張り止めによる施工安全性向上

もたれ式擁壁施工の基本工程と特徴

もたれ式擁壁は、躯体自体では自立せず背面土にもたれかかって自重により土圧に抵抗する構造の擁壁です。他の擁壁形式と比較して、以下の特徴があります。

 

もたれ式擁壁の主な特徴

  • 基本的に無筋コンクリート構造で施工が容易
  • 底版幅が小さく、堅固な基礎地盤が必要(許容支持力度300kN/m2以上)
  • 一般的に5~15m程度の高さで使用される
  • 山岳道路の拡幅や片切片盛の場合に適用される

施工の基本工程は以下の通りです。

  1. 地盤調査と設計確認:基礎地盤の支持力確認
  2. 基礎工事:掘削、割栗石基礎、均しコンクリート施工
  3. 裏込め材設置:段階的な敷き均しと転圧
  4. 型枠設置:表型枠の設置と浮き止め対策
  5. コンクリート打設:計画的な打設と養生
  6. 型枠撤去と仕上げ:水抜き孔設置と表面仕上げ

もたれ式擁壁施工における基礎工事の重要ポイント

もたれ式擁壁の基礎工事は、構造の安定性を左右する最も重要な工程です。基礎地盤が軟弱な場合、擁壁全体の安定性が確保できないため、入念な地盤調査と適切な基礎処理が必要です。

 

基礎工事の施工手順
砂層または砂礫層の場合の標準的な処理方法。

  • 割栗石基礎(厚さ20cm)の敷設
  • 切込砕石による調整
  • 均しコンクリート(σck=18N/mm2)の打設

岩盤の場合は、岩盤面の不陸調整を行い、直接コンクリートを打設します。このとき、岩盤面の清掃と湿潤処理を十分に行うことが重要です。

 

基礎工事の品質管理ポイント

  • 掘削面の平坦性確認(レベル測量)
  • 支持地盤の支持力確認(平板載荷試験)
  • 割栗石の粒度確認と転圧度管理
  • 均しコンクリートの強度管理

特に注意すべき点として、設計上の掘削線より背面地山を緩く掘り過ぎないことが挙げられます。過掘削は地山の安定性を損なう原因となるため、丁寧な施工管理が求められます。

 

もたれ式擁壁の裏込め材施工と転圧管理

裏込め材の施工は、もたれ式擁壁の安定性に直接影響する重要な工程です。適切な材料選定と転圧管理により、設計で想定した土圧条件を実現する必要があります。

 

裏込め材の種類と選定基準
もたれ式擁壁に使用される裏込め材の分類。

  • C1:礫質土(最も推奨される材料)
  • C2:粘性土(条件により使用可能)

礫質土が推奨される理由は、透水性が良好で土圧が安定しやすく、転圧効果も高いためです。粘性土を使用する場合は、含水比の管理と十分な転圧が必要になります。

 

裏込め材施工の実際の手順
段階的施工が基本となります。

  • 30cm程度のまき出し厚で敷き均し
  • 人力によるダンパープレートでの転圧
  • 幅1.0m程度の範囲は特に入念な転圧
  • 3級バックホウを使用した効率的な運搬・敷き均し

転圧管理では、締固め度90%以上を目標とし、現場密度試験による品質確認を行います。特に型枠近傍では、型枠損傷を避けながら十分な転圧を実現する技術が求められます。

 

水抜き孔周辺の特別な配慮
水抜き孔(VPφ75)の設置では、2~3m2に1箇所の間隔で配置し、30cm×30cm(厚さ5cm)の透水材マットを設置します。この透水材は、裏込め材の吸い出し防止と適切な排水機能の確保を目的としています。

 

もたれ式擁壁型枠工事の安全対策と施工技術

もたれ式擁壁の型枠工事では、表型枠のみの施工となるため、従来の重力式擁壁と比較して特殊な安全対策が必要です。型枠の浮き上がりや転倒防止のための技術的工夫が施工品質と安全性を左右します。

 

型枠の浮き止め・張り止め技術
セパレーターを活用した革新的な手法。

  • 40cm程度のカップ型セパレーターを半分に切断
  • 切断面から5cm程度で90度に曲げ加工
  • 基礎コンクリートに埋め込み、型枠固定用アンカーとして活用
  • 施工後はカップ部分を撤去し、モルタル充填で仕上げ

この手法により、従来の鉄筋アンカー方式と比較して、施工後の補修作業が簡素化され、仕上がりも美観が保たれます。

 

型枠支保工の安全管理
もたれ式擁壁の型枠は傾斜しているため、コンクリート打設時の浮力対策が重要です。

  • チェーン、ターンバックル、鋼管、楔等を用いた確実な固定
  • 型枠下端部の重点的な張り止め対策
  • 生コンクリート打設前の支保工点検

養生期間中の安全管理も重要で、構造的に後ろに倒れたがる力が大きいため、十分な養生期間を確保し、段階的な脱枠作業を計画する必要があります。

 

もたれ式擁壁の品質管理と革新的施工法

従来のもたれ式擁壁施工では裏型枠が必要でしたが、最新の施工技術では裏型枠を不要とする革新的な工法が開発されています。この新工法は工期短縮と施工安全性の大幅な向上を実現しています。

 

格子状鉄筋を使用した新工法
特許技術による革新的施工方法。

  • 複数の屈曲した縦筋と横筋で構成される格子状鉄筋の活用
  • 格子状鉄筋に固定された吸出し防止材との一体化
  • ユニット体として現場で組み付け、裏型枠機能を代替

この工法の施工手順。

  1. 第1ステップ:法面前方位置へのユニット体設置
  2. 第2ステップ:ユニット体と法面間の裏込め材敷き固め
  3. 第3ステップ:表型枠設置とコンクリート打設

透水性マットを活用した耐震強化工法
地震対策を強化した最新の施工技術。

  • 厚み10mm以上の透水性マットによる法面全体の被覆
  • 10cm以上のアンカーで法面に固定
  • 透水係数1.0×10⁻²(cm/sec)以上の高透水性能

この工法により、地震時の法面崩落防止と擁壁躯体の振動減衰効果を実現し、従来工法と比較して大幅な耐震性向上を達成しています。

 

品質管理の重要項目
もたれ式擁壁の品質管理では以下の項目が重要です。

  • コンクリート強度管理(標準24N/mm2)
  • 型枠精度管理(通りと勾配の確認)
  • 裏込め材の転圧度管理
  • 水抜き孔の施工精度確認
  • 目地部の施工品質管理

特に打ち継ぎコンクリートでは、段ごとの重複を避け、高さの80%程度での打ち継ぎ処理が品質確保の要となります。これらの管理項目を確実に実施することで、長期間にわたって安定した性能を発揮するもたれ式擁壁を構築できます。