
もたれ式擁壁は、躯体自体では自立せず背面土にもたれかかって自重により土圧に抵抗する構造の擁壁です。他の擁壁形式と比較して、以下の特徴があります。
もたれ式擁壁の主な特徴
施工の基本工程は以下の通りです。
もたれ式擁壁の基礎工事は、構造の安定性を左右する最も重要な工程です。基礎地盤が軟弱な場合、擁壁全体の安定性が確保できないため、入念な地盤調査と適切な基礎処理が必要です。
基礎工事の施工手順
砂層または砂礫層の場合の標準的な処理方法。
岩盤の場合は、岩盤面の不陸調整を行い、直接コンクリートを打設します。このとき、岩盤面の清掃と湿潤処理を十分に行うことが重要です。
基礎工事の品質管理ポイント
特に注意すべき点として、設計上の掘削線より背面地山を緩く掘り過ぎないことが挙げられます。過掘削は地山の安定性を損なう原因となるため、丁寧な施工管理が求められます。
裏込め材の施工は、もたれ式擁壁の安定性に直接影響する重要な工程です。適切な材料選定と転圧管理により、設計で想定した土圧条件を実現する必要があります。
裏込め材の種類と選定基準
もたれ式擁壁に使用される裏込め材の分類。
礫質土が推奨される理由は、透水性が良好で土圧が安定しやすく、転圧効果も高いためです。粘性土を使用する場合は、含水比の管理と十分な転圧が必要になります。
裏込め材施工の実際の手順
段階的施工が基本となります。
転圧管理では、締固め度90%以上を目標とし、現場密度試験による品質確認を行います。特に型枠近傍では、型枠損傷を避けながら十分な転圧を実現する技術が求められます。
水抜き孔周辺の特別な配慮
水抜き孔(VPφ75)の設置では、2~3m2に1箇所の間隔で配置し、30cm×30cm(厚さ5cm)の透水材マットを設置します。この透水材は、裏込め材の吸い出し防止と適切な排水機能の確保を目的としています。
もたれ式擁壁の型枠工事では、表型枠のみの施工となるため、従来の重力式擁壁と比較して特殊な安全対策が必要です。型枠の浮き上がりや転倒防止のための技術的工夫が施工品質と安全性を左右します。
型枠の浮き止め・張り止め技術
セパレーターを活用した革新的な手法。
この手法により、従来の鉄筋アンカー方式と比較して、施工後の補修作業が簡素化され、仕上がりも美観が保たれます。
型枠支保工の安全管理
もたれ式擁壁の型枠は傾斜しているため、コンクリート打設時の浮力対策が重要です。
養生期間中の安全管理も重要で、構造的に後ろに倒れたがる力が大きいため、十分な養生期間を確保し、段階的な脱枠作業を計画する必要があります。
従来のもたれ式擁壁施工では裏型枠が必要でしたが、最新の施工技術では裏型枠を不要とする革新的な工法が開発されています。この新工法は工期短縮と施工安全性の大幅な向上を実現しています。
格子状鉄筋を使用した新工法
特許技術による革新的施工方法。
この工法の施工手順。
透水性マットを活用した耐震強化工法
地震対策を強化した最新の施工技術。
この工法により、地震時の法面崩落防止と擁壁躯体の振動減衰効果を実現し、従来工法と比較して大幅な耐震性向上を達成しています。
品質管理の重要項目
もたれ式擁壁の品質管理では以下の項目が重要です。
特に打ち継ぎコンクリートでは、段ごとの重複を避け、高さの80%程度での打ち継ぎ処理が品質確保の要となります。これらの管理項目を確実に実施することで、長期間にわたって安定した性能を発揮するもたれ式擁壁を構築できます。