無筋コンクリートの強度特性と施工管理のポイント

無筋コンクリートの強度特性と施工管理のポイント

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無筋コンクリートの強度特性

無筋コンクリートの強度の基本理解
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圧縮強度に特化した構造

鉄筋を含まないため引張力は弱いが、圧縮力に優れた性能を発揮

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28日強度が設計基準

材齢28日での圧縮強度を基準として許容応力度を決定

経年による強度増加

適切な養生により長期間にわたって強度が向上し続ける

無筋コンクリートの基本的な強度特性

無筋コンクリートの強度は、その名称が示すとおり鉄筋を含まないコンクリート構造体の力学的性能を表します。最も重要な特徴は、圧縮力に対して優れた抵抗性を示す一方で、引張力や曲げ力に対しては著しく弱いことです。

 

コンクリートの強度は一般的に圧縮強度を指しており、これは1平方ミリメートルあたりに何ニュートンの力まで耐えられるかを示すN/mm²という単位で表現されます。例えば21N/mm²のコンクリートは、1cm²あたり約214kgの圧縮荷重に耐えることができます。

 

無筋コンクリートが発揮する圧縮強度の大きさは、使用するセメントの種類、水セメント比、骨材の品質、養生条件などによって大きく左右されます。施工現場では、これらの要因を適切に管理することで、設計で要求される強度を確実に確保する必要があります。

 

  • 圧縮力:コンクリート本来の優れた性能を発揮
  • 引張力:圧縮強度の約1/10程度の低い抵抗力
  • 曲げ力:引張側で先に破壊が発生
  • せん断力:断面積と応力分布により決定

無筋コンクリートの許容応力度と設計基準

無筋コンクリートの設計では、コンクリートの28日設計基準強度をもとにして許容応力度が定められています。国土交通省の基準によると、圧縮応力度の許容値はσck/4以下で5.5N/mm²以下、曲げ引張応力度の許容値はσck/80以下で0.3N/mm²以下と規定されています。

 

土木工事における標準的な仕様では、無筋コンクリートには呼び強度18N/mm²以上のコンクリートが使用されます。この場合の許容圧縮応力度は4.5N/mm²、許容曲げ引張応力度は0.225N/mm²となります。

 

設計基準強度σckから算出される許容応力度の安全率は、圧縮に対しては4倍、曲げ引張に対しては80倍と大きな差があります。これは無筋コンクリートの引張抵抗力の低さを反映したものです。

 

実際の構造物では、以下の点に注意して設計・施工を行う必要があります。

  • 軸力と曲げの組み合わせ:σ=N/A±M/I×y の式で応力度を算定
  • せん断力:τ=Q×S/(I×b) の式で算定
  • 中立軸位置:断面の図心を通る軸として計算
  • 安全性の確保:許容値を超えないよう十分な余裕を確保

無筋コンクリートの強度発現メカニズム

コンクリートの強度発現は時間の経過とともに徐々に進行する特徴があります。普通ポルトランドセメントを使用した場合、材齢7日で最終強度の約40%、28日で約80%、3ヶ月で約90%の強度を発現します。

 

この強度発現過程において、水セメント比が最も重要な因子となります。水セメント比が低いほど密実なコンクリートとなり、高い強度を得ることができます。無筋コンクリートの標準仕様では水セメント比60%以下と規定されています。

 

セメントの水和反応により形成されるカルシウムシリケート水和物(C-S-H)が、コンクリートの強度発現の主要な役割を担います。この水和反応は適切な温度と湿度条件下で長期間継続するため、初期養生が極めて重要です。

 

強度発現に影響を与える主要な要因。

  • 水セメント比:低いほど高強度(60%以下が標準)
  • セメント量:適切な量での密実性確保
  • 骨材品質:清潔で適切な粒度分布
  • 養生条件:温度・湿度・養生期間の管理
  • 締固め:バイブレーター等による適切な密実化

無筋コンクリートでは鉄筋による拘束がないため、乾燥収縮や温度変化による応力集中が生じやすくなります。特に地覆や面壁コンクリートでは、ひび割れ抑制のため膨張材入りコンクリートの使用が標準とされています。

 

無筋コンクリートの強度試験と品質管理

無筋コンクリートの品質管理では、圧縮強度試験が中心となります。標準的な試験方法では、φ10cm×高さ20cmの円柱供試体を作製し、材齢28日での圧縮強度を測定します。

 

試験供試体の作製から試験実施まで、すべての工程で厳格な品質管理が求められます。特に供試体の養生条件は現場コンクリートと同等となるよう注意が必要です。標準養生(20±2℃、湿度95%以上)と現場養生の両方で管理することが推奨されます。

 

品質管理における重要なポイント。

  • 圧縮強度試験:材齢28日での標準試験
  • スランプ試験:フレッシュコンクリートの品質確認
  • 空気量測定:耐久性に影響する空気量の管理
  • 塩化物量試験:鋼材腐食防止のための塩分量確認
  • 温度管理:マスコンクリート効果による品質への影響

強度の判定基準では、個々の試験結果が呼び強度の85%以上、かつ3回の試験結果の平均値が呼び強度以上であることが求められます。基準を満たさない場合は、追加試験やコア抜き試験による確認が必要となります。

 

現場での品質管理では、生コンクリートの受入れ検査も重要です。スランプ、空気量、塩化物量、温度の測定を定期的に実施し、規格値内であることを確認します。

 

日本コンクリート工学会による無筋コンクリート構造物の応力度計算に関する技術資料
https://jsce.jp/pro/node/771

無筋コンクリートの強度向上のための施工上の工夫

無筋コンクリートの強度を最大限に活用するためには、施工段階での細やかな配慮が不可欠です。特に締固め作業では、鉄筋がないため振動の伝達が鉄筋コンクリートとは異なる特性を示します。

 

効果的な締固めのためには、バイブレーターの挿入間隔を通常より密にし、振動時間も十分に確保する必要があります。コンクリート表面にセメントペーストが浮き上がり、気泡の発生が止まるまで振動を継続することが重要です。

 

打設後の初期養生では、急激な乾燥を防ぐため表面を湿潤に保つことが極めて重要です。特に夏期の施工では、散水養生やシート養生を適切に実施し、ひび割れの発生を防止します。

 

施工品質向上のための具体的な工夫。

  • 分離防止:適切なスランプ値での打設(8cm標準)
  • 層間接着:打継ぎ時間の短縮と表面処理の徹底
  • 表面仕上げ:コテ仕上げによる緻密な表面層の形成
  • 養生期間延長:標準養生期間以上の湿潤養生実施
  • 温度管理:打設時温度と養生温度の適切な管理

無筋コンクリートでは、構造的な特性を理解した上で、圧縮力を有効活用する構造設計と施工方法の選択が重要です。例えば、重力式擁壁では自重による圧縮力でせん断抵抗力を確保し、アーチ構造では圧縮力のみで荷重を支持する設計が採用されます。

 

また、長期耐久性の観点から、コンクリートの緻密性向上と中性化抑制が重要となります。水セメント比の低減、適切な養生期間の確保、表面保護工法の適用などにより、数十年にわたる構造物の健全性を維持することが可能です。

 

国土交通省北海道開発局による無筋コンクリートの許容応力度に関する技術基準
https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/dou_ken/ud49g70000001ly2-att/splaat0000003vaf.pdf
無筋コンクリートは適切な設計と施工により、優れた耐久性と経済性を両立できる構造材料です。強度特性を正しく理解し、品質管理を徹底することで、長期間にわたって安全で信頼性の高い構造物を構築することができます。