軟石種類と特徴を建築用途で解説

軟石種類と特徴を建築用途で解説

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軟石種類と特徴

この記事で分かる軟石の基礎知識
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主要な軟石種類

札幌軟石、大谷石、白河石など日本各地の軟石の特徴と産地

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加工方法の種類

ダイヤ切り、コブ出し、ビシャンなど用途別の加工技術

施工のポイント

建築現場での使用方法と注意すべきメンテナンス

軟石とは、火山活動によって生成された凝灰岩の一種で、その名の通り柔らかく加工しやすい石材です。建築業従事者にとって、軟石は耐火性や保温性に優れた建材として重要な選択肢となっています。日本各地で採掘される軟石は、それぞれ異なる特徴を持ち、用途に応じた使い分けが可能です。
参考)https://boseki-info.jp/words/nanseki.html

本記事では、建築現場で実際に使用される軟石の種類、加工方法、施工時の注意点について詳しく解説します。
参考)【芦野石・白河石】採掘・加工方法そして素材の魅力を徹底解説し…

軟石の主要産地と種類別特性

北海道の札幌軟石は、約4万年前の支笏湖を形成した火山活動で発生した火砕流が固結してできた「支笏溶結凝灰岩」です。灰色を基調として青味と赤味があり、空気を多く含んでいるため軽量で保温性に優れています。札幌市南区の辻石材工業が現在唯一の採掘・加工業者として、年間約650トンを産出しています。
参考)辻石材工業株式会社|札幌軟石|加工ラインナップ

大谷石は栃木県宇都宮市の大谷町で採掘される軽石凝灰岩で、江戸時代から建築資材として広く使われてきました。札幌軟石よりキメが細かく適度な硬度を持ち、耐火性は1000℃以上の熱にも耐えられるため、七輪や石窯などにも使用されます。独特の斑点模様が特徴で、フランク・ロイド・ライトの旧帝国ホテルにも使用され、関東大震災で焼け残ったことで有名です。
参考)札幌軟石 - Wikipedia

白河石と芦野石は、見た目が非常に似ているため同じ石として扱われることもありますが、白河石は福島県白河市、芦野石は栃木県那須町で採掘されます。火山岩の安山岩に分類され、耐久性と耐火性に優れており、6世紀頃の遺跡群の石室や白河小峰城の石垣にも使用されてきました。芦野石は白目と赤目、白河石は白目と黒目に分けられ、中硬石に分類されます。
参考)芦野石

小樽軟石は水中火山が噴出してできたもので、地層ごとに異なる色や縞模様があるのが特徴です。現在は採掘されていませんが、小樽市内で取り壊された古い石造りの建築物から再利用されています。
参考)軟石(なんせき)ってどんな石?

美瑛軟石は100万~200万年前の火砕流が堆積し固まった流紋岩質凝灰岩で、札幌軟石の灰色に比べやや明るい象牙色で、キラキラと輝く質感が特徴です。現在は採掘されていないため、美瑛町役場では解体した建物の石を保管して再利用する取り組みを行っています。
参考)北海道の軟石文化をご紹介します。 - 札幌軟石情報発信サイト

軟石の加工方法と技術

軟石の加工方法には、仕上がりの質感や用途に応じて複数の種類があります。​
ダイヤ切りは、ダイヤモンドカッターを使用して石材を平滑に切断する方法で、最も一般的な加工技術です。精密な寸法で切り出すことができ、内外装材やタイル状の仕上げに適しています。
参考)Instagram

コブ出しは、石の表面を粗く仕上げる伝統的な加工方法で、独特の立体感と質感を生み出します。自然な風合いを活かした外壁や造園用石材として人気があり、きれいなR加工も可能です。​
ビシャン加工には機械ビシャンと手ビシャンがあり、石材表面に細かい凹凸をつける技法です。機械ビシャンは効率的で均一な仕上がりが得られ、手ビシャンは職人の技術による味わい深い表情が特徴です。​
チェーン挽きは、チェーンソー式の採掘機械を使用した加工方法で、大谷石や札幌軟石などの軟石の採掘に広く用いられています。昭和30年後半頃から導入され、現在も主流の採掘方法となっています。
参考)http://www.shirai-ishi.com/process/1_saikutsu/index.html

ツル目は、石材表面に独特の模様をつける加工で、滑り止め効果もあるため床材や敷石に適しています。​
採掘現場では、かつてはツルや発破による手掘りが主流でしたが、現在はチェーンソー式採掘機械により効率的に石材を切り出しています。
参考)日本の伝統と美を織り成す建材「大谷石」 - 建材の知識と情報…

軟石の建築用途と施工方法

軟石は建築資材として多様な用途で使用され、明治から昭和初期にかけて北海道開拓時代の主要建造物の資材となりました。
参考)https://boseki-info.jp/shurui/sapporo.html

建築用途としては、外壁材、内装材、床材、石塀、門柱、土留め、敷石など幅広い施工が可能です。札幌市資料館や小樽運河倉庫群、日本キリスト教団札幌教会など、現在も多くの歴史的建造物が現存しています。
参考)大谷石の特長・規格サイズの販売−大谷の石屋 マルオカ

商家の蔵、店舗、公共建築、教会、倉庫などに軟石建物が次々に建てられ、空隙率が高く保温性に優れていたため、野菜や果物の保管、酒・味噌・醤油の醸造庫としても最適でした。
参考)札幌軟石編ストーリー

施工時の注意点として、石材の割付けは水平打継ぎ部や異種下地の取合い部で1枚の石材がまたがないように配置する必要があります。開口部回りは建具との取合いを良くし、引金物や受金物を適切に設置することが重要です。
参考)https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/eizen/04032202/020/002.pdf

大谷石は内外装に多用する建築石材としての利用はフランク・ロイド・ライトが最初とされ、もともと耐火性に優れていることから蔵や塀・門柱などに使われていました。
参考)第5話 エピソードの宝庫 ライト建築の特徴href="https://www.yodoko-geihinkan.jp/p-library/secret/sec-5/" target="_blank">https://www.yodoko-geihinkan.jp/p-library/secret/sec-5/amp;#8212;href="https://www.yodoko-geihinkan.jp/p-library/secret/sec-5/" target="_blank">https://www.yodoko-geihinkan.jp/p-library/secret/sec-5/amp;#…

石材の取付け方法には、引金物緊結下地工法やあと施工アンカー工法があり、現場の状況に応じて適切な工法を選択します。勾配が1割未満の石積みは一般的に練積で施工し、1割以上の石張りでは練積と空積を使い分けることができます。
参考)https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kankyo/stone-structure/s-1.pdf

軟石のメリットとメンテナンス

軟石の最大のメリットは、柔らかいため切り出しやすく、細工が容易である点です。この特性により、細かい彫刻や装飾を施すことが可能で、デザインの自由度が高くなります。​
耐火性は軟石の重要な特徴で、防火に強いという理由から開拓使が採石に力を入れました。大谷石は1000℃以上の熱にも耐えられるため、かまどやピザ窯などの用途にも利用されています。
参考)大谷石とは?建材としての特徴や効能から、活用事例までを解説!…

保温性と調湿性にも優れており、多孔質な構造により建物の内部環境を快適に保つ効果があります。大谷石はゼオライトを含み、マイナスイオンと遠赤外線を放出するとされています。​
独特の風合いは時間をかけて少しずつ見た目が変化し、コケなどが生えて自然になじむ石へと変化していきます。この経年変化が軟石特有の味わいを生み出し、レトロかつモダンな質感を演出します。
参考)新国産石種 札幌軟石 のご紹介

メンテナンスに関しては、吸水率が高い軟石は風化しやすい性質があるため、定期的な清掃と保護処理が必要です。石材用洗剤を塗布して洗浄を行い、すすぎと拭き上げを行った後、床維持剤で仕上げることが推奨されます。
参考)https://bmix.net/ckfiles/files/%E7%9F%B3%E6%9D%90%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%82%B9.pdf

メタ珪酸ナトリウムを含む洗剤は石材のひび割れや表面の白化を引き起こす可能性があるため使用を避け、石材の性質を見極めてパッドやブラシを選択することが重要です。​
軟石は使用場所の選定が重要で、溶結凝灰岩に属する比較的柔らかい性質のため、過度な荷重がかかる場所や水に長時間さらされる環境では注意が必要です。​
<参考リンク:札幌軟石の加工技術と歴史について>
辻石材工業株式会社|札幌軟石|加工ラインナップ
<参考リンク:大谷石の特徴と建築用途の詳細>
大谷石とは?建材としての特徴や効能から、活用事例までを解説
<参考リンク:芦野石・白河石の採掘と加工方法>
【芦野石・白河石】採掘・加工方法そして素材の魅力を徹底解説

軟石施工における建築業従事者の実務ポイント

建築現場で軟石を扱う際、施工計画と施工管理担当者を工事前に定めることが重要です。施工管理担当者は工事の施工内容を把握し、適切な管理を行う必要があります。
参考)https://www.mlit.go.jp/tec/sekisan/sekou/pdf/300327kouji_sekoukanrikijun01.pdf

石材の下地への取付けは所要の状態を確保し、石材の仕上り面は所定の形状及び寸法を有する必要があります。受金物は下段より高さ2m程度ごとの横目地位置に設け、石材の幅が900mm以下の場合は縦目地位置ごとに150mmのものを使用します。​
コンクリートブロックを積む、またははり付ける工事は石工事に分類され、建築物の内外装として施工する場合や法面処理・擁壁としての用途があります。
参考)建設業の業種について~4~(石工事業・屋根工事業) - 建設…

軟石を使用した壁は独特の柔らかい雰囲気があり、ナチュラルなお庭、シンプルなお庭、和風のお庭など、どんな空間にも不思議とマッチする特性があります。​
現場で使用される軟石、特にリユース品は既に軟石の味わいが出ており、空間に直ぐになじむという利点があります。古い石造りの建築物から再利用された軟石は、環境にも配慮した持続可能な建材として注目されています。
参考)軟石ってなんだ? - 軟石や

施工時は防水層等に損傷を与えないよう特に注意し、あと施工アンカーを使用する場合は適切な位置に打ち込む必要があります。石材相互にせり持ち作用が働く谷積みは、布積よりも安定性があると言われています。​
建築用石材として軟石を選定する際は、産地による特性の違い、加工方法の適性、施工環境、メンテナンス計画を総合的に判断することで、長期的に安定した品質を維持できます。​