
ねじ長さの規格において最も重要なのは、どの部分を測定するかという点です。一般的にねじのサイズ表記は「M8 × 15」のような形式で、前者がねじの太さ(呼び径)、後者がねじの長さを示します。
ねじ長さの測定基準は、ねじの形状によって大きく異なります。
この違いは、締結時にサラ頭ねじが相手材に頭まで埋まるためです。建築現場では、この測定基準を正確に理解していないと、必要な締結力が得られない場合があります。
JIS規格では、ねじ長さの表記単位は**mm(ミリメートル)**で統一されており、インチねじの場合は単位が変わることも覚えておく必要があります。
JIS B 0205規格に基づくメートルねじの基準寸法は、建築業界で最も重要な規格の一つです。この規格はJIS B 0205-2による一般メートルねじの基準寸法について規定しています。
メートルねじの呼び方は、外径を基準としており、M3、M4、M5といった表記で示されます。ここで注意すべきは、外径はねじ山のある軸の直径であり、ねじの頭部の直径ではない点です。
基準寸法における重要な要素。
これらの寸法は、ねじの互換性と品質保証において欠かせない要素となっています。建築現場では、これらの基準寸法に合致しないねじを使用すると、構造体の安全性に重大な影響を与える可能性があります。
半ねじボルトの規格は、建築現場で頻繁に使用される重要な仕様です。六角ボルト(半ねじ)の規格品では、首下全てにねじが切られていないため、胴寸法とねじ長さの区別が重要となります。
JIS B 1180による半ねじ長さの規格:
首下長さ | 半ねじ長さの計算式 |
---|---|
129mm以下 | d×2+6 |
130~219mm | d×2+12 |
220mm以上 | d×2+25 |
例えば、M10(d=10mm)のボルトで首下長さが100mmの場合、ねじ長さは10×2+6=26mmとなります。
この規格は、ボルトの機械的性質と安全性を保証するために制定されており、建築現場では必ず遵守すべき基準です。特に構造用ボルトにおいては、この基準に適合しない製品の使用は建築基準法違反となる可能性があります。
半ねじボルトの利点として、ねじ部以外の部分で剪断力を負担できるため、より高い強度が得られる点があります。これは建築構造において重要な特性です。
ねじ長さの適切な選定は、材質と用途に応じた計算が必要です。建築現場では、以下の基準で選定することが重要です。
材質別ねじ込み深さの目安:
材質 | ねじ込み深さ |
---|---|
鉄や鋼材 | 呼び径の1~1.5倍 |
アルミ材 | 呼び径の2倍以上 |
樹脂や弱い材料 | 呼び径の2.5~3倍以上 |
例えば、M6のねじをアルミ材に使用する場合、ねじ込み長さは12mm(6mm × 2)以上が必要です。
実際の長さ選定で考慮すべき要素。
建築現場特有の条件として、取り付け物が20mmより厚い場合は、ねじ込み長さを取り付け物厚さと同等から2倍程度を目安とする必要があります。
下穴径の計算も重要で、ドリル径=ねじ呼び径(d) - ねじピッチという式で求められます。例えば、M3×0.5の場合、下穴は3-0.5=2.5mmとなります。
建築現場では、一般的な機械設計とは異なる独自の選定基準があります。これは建築特有の安全率と耐久性要求に基づいています。
建築現場特有の選定基準。
特殊用途での長さ規格。
1️⃣ 軽天工事用ドライウォールスクリュー:
ねじ呼び径 | 突き出し長さ |
---|---|
Φ3 | 8mm |
Φ3.5~4.2 | 10mm |
Φ4.8 | 12mm |
2️⃣ コンクリート用アンカーボルト:
最低ねじ込み長さ20mm以上、下穴深さはねじ込み長さ+10mm以上が必要
3️⃣ ジャックポイント用ねじ:
C型鋼への取り付けで、働き長さ(L1)が取り付け物と下地の総厚より長いことを確認
これらの基準は、建築基準法や各種工事仕様書に基づいており、現場監督や施工管理技士の責任において遵守する必要があります。特に構造部材への施工では、設計図書で指定された規格以外の使用は認められません。
建築現場では、ねじの調達コストと工期短縮のため、標準化された長さの採用も重要です。例えば、25mm、30mm、35mm、40mm、50mmといった5mm刻みでの標準化により、在庫管理と現場効率の向上が図れます。