
野縁は天井下地材として建築現場で欠かせない部材です。最も一般的な木造野縁の寸法は30mm×40mmの赤松材で、業界では「いんにっさん」と呼ばれています。この呼び名は1.0(いん)×1.3(いっさんが訛ってにっさん)に由来し、1.0は1寸(30mm)、1.3は1寸3分(39mm≒40mm)を表しています。
木造野縁の主要寸法一覧。
LGS(軽量鉄骨)野縁の寸法規格も豊富で、JIS A 6517に基づく標準寸法が定められています。
LGS野縁の主要寸法一覧。
木造野縁は住宅建築において最も多用される天井下地材です。一般的な30mm×40mmサイズは303mmピッチで配置され、同じ野縁を910mmピッチに並べた野縁受けに留め付けます。この配置により、石膏ボード(910mm×1820mm)を効率的に施工できる下地構造が完成します。
材料の使用方法には「平使い」と「縦使い」の2通りがあります。平使いは幅の広い面を上にして使用する方法で、天井材の取り付け時にビスが止めやすくなります。一方、縦使いは強度を重視する施工法で、長期間での野縁の変形を防ぐ効果があります。
特殊用途として、40mm×60mmの大型野縁も使用されます。これは従来の30mm×40mm野縁2本分の強度を1本で実現し、石膏ボードのジョイント部分の施工性を向上させます。材料コストは変わりませんが、大工の施工手間を大幅に削減できる利点があります。
野縁の標準長さは4000mmが一般的で、現場での加工性と運搬効率を両立した規格となっています。材質は主に赤松が使用され、適度な強度と加工性を備えています。
LGS野縁は鋼製天井用下地材として、木造野縁では対応困難な大スパンや高い耐久性が要求される現場で使用されます。JIS規格では19形と25形の2つの主要カテゴリーに分類され、それぞれ異なる強度特性を持ちます。
19形LGS野縁の詳細仕様。
25形LGS野縁の詳細仕様。
メーカー普及品では19形のみがラインナップされ、代わりに複数サイズの野縁受けチャンネルが用意されています。天井ふところが狭い場合用として、チャンネル19(19mm×10mm)やチャンネル25(25mm×10mm)といった小型規格も利用可能です。
施工ピッチは仕上げ材によって異なり、下地貼りがある場合は野縁360mm程度、ダブル野縁1,800mm程度が標準です。仕上げ材直貼りの場合は野縁300mm程度、ダブル野縁900mm程度とより密に配置します。
適切な野縁寸法の選定は、施工効率と品質の両方に大きく影響します1112。まず考慮すべきは天井仕上げ材の種類と重量です。石膏ボード12.5mm厚程度であれば標準の30mm×40mm野縁で十分ですが、より重い仕上げ材や特殊な天井構造では大型野縁やLGS野縁が必要になります。
スパン距離も重要な選定要素です。木造野縁の場合、野縁受け間隔は一般的に910mm以下に設定しますが、より長いスパンが必要な場合はLGS野縁や断面の大きい木造野縁を検討します。
施工現場の条件も寸法選定に影響します。天井ふところが狭い場合は、従来の野縁受けでは納まらない可能性があり、小型のチャンネル野縁受けを使用する必要があります。また、湿度の高い環境では木造野縁よりもLGS野縁の方が長期的な安定性を期待できます。
コスト面では、材料費だけでなく施工手間も考慮する必要があります。40mm×60mm野縁のように、従来の2本分を1本で済ませる規格は、材料費は同等でも施工時間の短縮により総合的なコストダウンを実現できます。
耐震性能も選定基準の一つです。地震時の天井脱落防止のため、より強固な野縁システムが要求される場合があり、特に大規模建築物では詳細な構造計算に基づく寸法選定が必要です。
野縁施工における寸法管理は、天井全体の品質を左右する重要な工程です。まず天井高さの設定から始まり、一般的な住宅では2400mmが標準ですが、近年は高天井志向により2500mm以上の設定も増加しています。
野縁の配置精度は石膏ボードの施工性に直結します。1尺5寸角(455mm×455mm)の割付が基本となり、3尺×6尺(909mm×1818mm)の石膏ボードに対して最適な下地間隔を実現します。この割付により、石膏ボードのカットを最小限に抑え、施工効率と仕上がり品質の両方を向上させます。
水平精度の管理には、レーザーレベルや水準器を用いた正確な墨出し作業が不可欠です。部屋の4隅に天井高さの印を付け、墨壺を用いて基準線をはじく従来の手法は、現在でも高い精度を実現する有効な方法です。
野縁の固定方法も品質に大きく影響します。木造野縁の場合、野縁受けとの接合部には適切な釘またはビスを使用し、LGS野縁ではハンガーやクリップによる確実な固定が重要です。特にジョイント部分では、専用の野縁ジョイントを使用して連続性を確保します。
施工中の検査ポイントとして、野縁の直線性、水平精度、固定強度を定期的にチェックします。たわみや変形が発見された場合は、原因を特定して適切な補修を行います。最終的には、天井が下がってこないことを最重要の品質基準として、長期的な安定性を確保する施工管理が求められます。
品質確保のため、施工完了後も定期的な点検を実施し、経年変化による問題の早期発見と対策を行うことが、建築物の長寿命化に貢献します。