大阪北部地震とは震度6弱被害状況対策

大阪北部地震とは震度6弱被害状況対策

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大阪北部地震とは

📋 大阪北部地震の概要
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発生日時と規模

2018年6月18日午前7時58分、マグニチュード6.1、震源の深さ13キロメートル

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最大震度観測地域

大阪市北区、高槻市、枚方市、茨木市、箕面市で震度6弱を観測

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主な被害

死者6名、負傷者434名、住家被害は全壊10棟、半壊181棟、一部損壊30,524棟

2018年6月18日午前7時58分、大阪府北部を震源とするマグニチュード6.1の地震が発生しました。この地震は大阪市北区、高槻市、枚方市、茨木市、箕面市で震度6弱の強い揺れを観測し、関東地方から九州地方にかけての広い範囲で震度1以上の揺れが記録されました。震源の深さは13キロメートルと比較的浅く、人口密集地帯の直下で発生したことが特徴です。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E5%BA%9C%E5%8C%97%E9%83%A8%E5%9C%B0%E9%9C%87

気象庁が1923年に観測を開始して以来、大阪府で震度6弱以上の揺れを観測したのは初めてとされましたが、これは観測方法や観測点の密度が時代とともに変化したことも影響しています。この地震による被害は、死者6名、負傷者434名、住家被害は全壊10棟、半壊181棟、一部損壊30,524棟、非住家被害686棟に及びました。被害が特に大きかったのは茨木市と高槻市で、それぞれ約1万棟の住家被害が発生しました。
参考)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e5656fb8a0f2da6210e0a7e50ead59af53473dcd

この地震は通勤時間帯に発生したため、交通機関の麻痺により多数の帰宅困難者が発生しました。大阪府北部在住者の約25%が「歩いて帰宅した」「外出先に泊まった」など帰宅困難者となり、都市直下型地震の特徴的な被害を示しました。枚方市大垣内では900.4galの最大加速度を記録するなど、局地的に非常に強い揺れが観測されています。
参考)https://www.nhk.or.jp/bunken-blog/500/317923.html

大阪北部地震の震源メカニズム

 

 

 

防災科学技術研究所の解析によると、本震は西北西から東南東を圧縮面とする逆断層型の地震でした。政府の地震調査委員会は、発震機構および地震活動の分布から、震源断層は南北2つに分けられると推定しています。具体的には、北側は東傾斜の逆断層、南側は南東傾斜の右横ずれ断層であったとされています。​
この地震の特徴は、地下の小さな断層が別方向にズレたことで発生した複雑なメカニズムにあります。南北方向の逆断層と北東南西方向の横ずれ断層がそれぞれ動くことで、蓄積された歪が一気に解放されました。余震活動では地震活動域の全域で横ずれ断層型、北側で逆断層型が混在する形で発生しており、複雑な断層構造を反映しています。
参考)https://gooddo.jp/magazine/climate-change/earthquake/osaka_earthquake/3743/

震源周辺には有馬-高槻断層帯、生駒断層帯、上町断層帯など複数の断層帯が存在しますが、地震調査委員会は2018年7月10日に、これらの既知の活断層が動いた証拠はないとの見解を示しました。この地震は新潟-神戸歪集中帯の南西部で発生しており、この地域の複雑な地殻変動を示す事例となりました。大阪府付近では、兵庫県南部地震(1995年)以来の被害地震となり、その前は1936年の河内大和地震まで遡ります。
参考)https://www.jishin.go.jp/resource/column/column_18sum_p10/

大阪北部地震による建物被害の特徴

この地震では建物の被害に特徴的な傾向が見られました。住家被害は全壊10棟、半壊181棟と比較的少なかったものの、一部損壊が30,524棟と圧倒的に多い結果となりました。マンション管理会社の調査では、306棟中89棟で被害があったものの、大破や中破はなく、被害が大きいものでも小破程度に留まりました。
参考)https://www.h-fukui.com/news/1645.html

被害の内訳としては、エキスパンションの破損や外壁のひび割れ(クラック)が中心でした。別の管理会社では527棟中、最大でも中破程度で、小破や軽微な被害が大半を占めました。地震保険に加入していた物件でも、被害の程度が軽微だったため「一部損にもならない」可能性が高いとの見解が多く示されました。実際に地震保険の査定が始まった物件でも、一部損に認定されたケースは数件程度でした。​
特に社会問題化したのがブロック塀の倒壊です。犠牲者6人のうち2人がブロック塀の崩落に巻き込まれて死亡しており、高槻市の小学校では女児が倒壊したブロック塀の下敷きになる痛ましい事故が発生しました。これを受けて、全国の小中学校でブロック塀(80センチ以上)の撤去が進められ、大阪府では98%の学校で撤去が完了しました。管理会社でも被害調査後、外構などで倒壊の危険性があるブロック塀の調査を実施しています。
参考)https://www.komei.or.jp/komeinews/p106057/

この地震では極短周期の0.5秒以下の地震動成分が卓越したため、建物被害を引き起こす1〜2秒の地震動成分が小さく、阪神・淡路大震災と比較して建物倒壊が少なかったと分析されています。現在の計測震度は極短周期成分が卓越する地震で高震度が出やすい特性があるため、震度6弱という数値ほど建物被害が大きくならなかったのです。​

大阪北部地震のライフライン被害と復旧

ライフラインの被害状況と復旧速度には大きな差が見られました。電気は地震発生から2時間半で停電が解消され、最も早く復旧しました。鉄道も当日の夜には運転を再開し、都市機能の回復に貢献しました。一方、地中に埋設されている水道とガスは復旧に時間を要しました。​
水道は約21万3千人が断水の影響を受け、復旧に2日間を要しました。これに対してガスは約11万2千戸が供給停止となり、完全復旧まで7日間かかりました。地震後、ガスの復旧に1週間もかかったことが話題になりましたが、阪神・淡路大震災で復旧に3か月を要したことと比較すると、大幅に短縮されています。この背景には、過去23年間のガスの地震防災対策の成果が反映されています。​
ガスの復旧が水道より時間がかかった理由は、安全確認の厳格さにあります。ガスは漏れると爆発の危険性があるため、供給再開前に全戸の安全確認が必要です。高槻市では約6万7千戸、茨木市では約4万5千戸が供給停止となり、これらの地域を中心に復旧作業が進められました。ガス事業者は全国から応援要員を集め、24時間体制で復旧作業にあたりました。
参考)https://www1.gifu-u.ac.jp/~nojima/LLEQreport/180618-OsakaFuHokubuEQ-LL-GUNN-ver.2.pdf

交通機関では、関西地方の多くの鉄道が当日の夕方にかけて運転を見合わせたため、いわゆる「帰宅困難者」が多数発生しました。高速道路でも、出勤した家族を迎えに行く車が都市部に殺到し、大規模な交通渋滞が発生しました。通信面では、テレビやスマートフォンがほぼ使用できる状況でしたが、この経験から電池で使えるラジオの備えの重要性も再認識されました。
参考)https://news.yahoo.co.jp/articles/c75de5d52a86fe49a56e6035be58832698049e77

参考リンク:大阪府北部地震のライフライン被害状況の詳細
岐阜大学 平成30年大阪府北部の地震におけるライフライン復旧概況

大阪北部地震から学ぶ不動産業界への教訓

この地震は不動産従事者にとって重要な教訓を残しました。まず、耐震化の必要性が改めて認識されました。大阪府や大阪市では、地震後に耐震診断・改修等の補助金制度を拡充しています。昭和56年の建築基準法改正以前の建物は一般的に耐震性が低いとされており、耐震診断の実施が推奨されています。不動産従事者は顧客に対して、耐震診断の重要性を説明する責任があります。
参考)https://shinyama-k.com/consultation/2116/

地震保険の重要性も再認識されました。被害を受けた建物の所有者からは「地震保険に入っていて本当によかった」との声が多く聞かれました。しかし実際には、マンション管理組合で地震保険に加入しているケースは「3分の1もない」状況でした。地震後は地震保険への問い合わせが増加しており、不動産業界として適切な保険加入を促す役割が求められます。​
危険なブロック塀の除去対策も急務となりました。高槻市など被災自治体では、地震後に「危険ブロック塀等対策補助金制度」を創設し、一部損壊までを対象にした被災者支援策を実施しました。不動産取引において、敷地内のブロック塀の安全性確認は重要なチェック項目となっています。不動産従事者は、物件調査時にブロック塀の状態を確認し、必要に応じて補強や撤去を提案する必要があります。
参考)https://s40bad52d572cd288.jimcontent.com/download/version/1740358359/module/14736601735/name/%E5%B8%82%E6%94%BF%E5%A0%B1%E5%91%8A%E9%A7%85%E5%89%8D%E9%85%8D%E5%B8%83%E7%89%88%E7%AC%AC105%E5%8F%B7.pdf

都市直下型地震における帰宅困難者対策も重要な課題として浮上しました。大阪府は災害時の一斉帰宅の抑制とともに「安否確認・情報収集手段の確保」を呼びかけています。オフィスビルや商業施設などの不動産では、テナントや利用者の安全確保のための防災計画の整備が求められます。帰宅困難者が帰宅の可否を判断するために利用したメディアは、「インターネットのポータルサイト」が27%で最も多く、次いで「NHKテレビ」が23%でした。​

大阪北部地震と不動産市場への影響分析

地震発生直後の不動産市場への影響は限定的でした。J-REIT(不動産投資信託)市場では、地震発生翌日の下落は前日比0.2%にとどまり、大きな影響は見られませんでした。大阪エリアのJ-REITが保有する物件では、建物や設備の一部損害が生じたものの、運用状況に重大な影響を及ぼすような被害は発生しませんでした。
参考)https://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/info/fund/report/fund_shiryou180620_02.pdf

マンション管理業界では、会員受託物件の約8割が「被害なし」と回答し、残りの2割でも軽微な被害が大半でした。不動産管理会社8社へのヒアリングでは、中破が数棟あったものの大被害はなく、地震保険の査定でも一部損の認定が少数にとどまりました。これは、近年の耐震基準の向上と、阪神・淡路大震災以降の耐震補強の成果と考えられます。
参考)https://www.re-port.net/article/news/0000056171/

ただし、歴史的な大地震では不動産市場への影響は大きくなります。阪神・淡路大震災の直後には、被災地で土地・建物の売買が「震災直後から2か月程度、前年同時期と比べて激減した」と報告されています。買い手は「被災地だから大幅に値下がりしているはずだ」と考える一方、売り手は震災前の価格を基準にしたいと考え、価格観に大きなギャップが生じるためです。
参考)https://tescapital.net/media/2025/04/01/5616/2025%E5%B9%B44%E6%9C%88%E9%A6%96%E9%83%BD%E7%9B%B4%E4%B8%8B%E5%9C%B0%E9%9C%87%E7%99%BA%E7%94%9F%E6%99%82%E3%81%AE%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E5%B8%82%E5%A0%B4%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%BD%B1/

大阪北部地震の経験から、不動産従事者は南海トラフ巨大地震や上町断層帯地震など、今後予想される大規模地震への備えを強化する必要性が認識されました。大阪市は2016年3月に策定(2021年3月改定)された大阪市耐震改修促進計画に基づき、建築物の耐震化の促進に取り組んでいます。不動産業界全体として、ハード・ソフト両面での対策に早急に取り組む姿勢が求められています。​
参考リンク:不動産業界の地震対策の参考資料
TAC「災害時に役立つ不動産知識~大阪北部地震の検証~」

 

 

 

 


2018年北海道胆振東部地震・大阪府北部の地震被害調査報告書 (地震被害調査シリーズ No. 2、3)