oリングつぶししろと溝寸法と圧縮率

oリングつぶししろと溝寸法と圧縮率

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oリングつぶししろの圧縮率

oリングつぶししろの圧縮率
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まずは「つぶし代」と「つぶし率」

溝深さ・装着すきまから逆算し、狙いの圧縮率レンジに入れるのが基本です。

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次に「溝寸法」と「面取り」

JISの表面性状や面取り寸法は、組付け傷→漏れを減らすための具体策です。

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最後に「劣化」と「ばらつき」

圧縮永久ひずみ、熱膨張、寸法公差の合成で“効くつぶししろ”が変わります。

oリングつぶししろのつぶし代とつぶし率

oリングつぶししろの議論は、まず「つぶし代(圧縮させた距離)」と「つぶし率(線径に対する圧縮割合)」を分けて考えると、設計の迷いが減ります。
つぶし率は一般に「つぶし率=つぶし代÷Oリング線径×100」で表され、負荷や摩擦、締付け条件の目安になります。
つぶし率は概ね8〜30%が適正範囲、40%以上は破損リスクが高い、という整理が広く共有されています。
ここで重要なのは「どの“状態”でのつぶし代か」です。平面固定(フランジ)で隙間なし締結なら、単純に「つぶし代=Oリング線径−溝深さ」で考えやすい一方、円筒面溝のように装着隙間(クリアランス)がある場合は、隙間の影響を入れて「つぶし代=Oリング線径−溝深さ+装着隙間/2」という考え方になります。


つまり、同じ溝深さでも「隙間(偏心含む)」があると“実効つぶし代”が変わり、漏れ側に転ぶことがあるのが落とし穴です。


現場で多い失敗例は「図面では20%つぶし率のつもり」でも、加工公差・組付け公差・面粗さ・偏芯が重なって一部断面が10%未満になり、初期漏れが出るケースです。


この問題は、Oリングが“全周均一に”つぶれる前提が崩れると顕在化するので、つぶししろを語るときは「最小つぶし率(ワースト)」を意識するのが実務的です。


箇条書きで、押さえるポイントをまとめます。


  • つぶし率は「設計値」だけでなく「最小値」「最大値」を見る(寸法公差の合成で逆転が起きる)。
  • 低圧ほど初期の弾性(セルフシール)依存が大きいので、最小つぶし率が効く。
  • 高圧ほど押し付け(D形化)で補われるが、はみ出し・破損側のリスクが増える。

参考:つぶし代・つぶし率の定義と目安(8〜30%、40%以上注意)
Oリングのつぶし代とつぶし率【Oリング・パーフロの桜シール】

oリングつぶししろの溝寸法と表面性状

oリングつぶししろを決める際、溝寸法は「深さ」だけでなく「幅」「溝底の丸み」「表面性状」までセットで効きます。
特に表面性状(面粗さ)は、微小な漏れ経路(シール面の“道”)を作る原因にも、初期馴染みを助ける要因にもなり得るため、規格の推奨値をベースに考えるのが安全です。
JISのハウジング寸法規格では、用途別に接触面の表面性状(Ra、Rz)が示され、固定用・運動用で要求が異なります。


例えば運動用は固定用より厳しい面粗さが示されており、摺動での摩耗や発熱、スティックスリップを避ける意図が読み取れます。


また、現場で見落とされがちなのが「溝の剛性」と「締結体のたわみ」です。


図面上は溝深さが規格どおりでも、フランジが薄い・ボルトピッチが粗い・締結面が局所的に座屈すると、締結後に溝形状が“変形”し、局所的につぶし率が不足して漏れます。


建築設備(ポンプ周り、配管フランジ、点検口など)では、機械設計のように厚肉前提ではない部位もあるため、「溝寸法=加工寸法」ではなく「溝寸法=締結後の機能寸法」と捉えるのが事故防止につながります。


実務で効くチェックリストです。


  • 溝底の丸み(r)が小さすぎると局所応力が上がり、き裂・圧縮割れの起点になりやすい。
  • 溝幅が狭いと、熱膨張や膨潤で“逃げ”がなくなり、実質つぶし率が過大になる。
  • 面粗さが荒いとガス・真空用途で漏れやすい(液体より顕著)。

参考:JIS B 2401-2(ハウジング形状・寸法、表面性状、バックアップリング判断の枠組み)
https://www.kikakurui.com/b2/B2401-2-2012-01.html

oリングつぶししろの面取りと取付け

oリングつぶししろの設計が適正でも、組付けで傷が入ると漏れの再現性が一気に上がります。
そのため、面取り(取付け部の端部処理)は「加工の手間」ではなく「性能の一部」として扱うのが合理的です。
JISのハウジング規格には、Oリングの太さ(線径)ごとに面取り長さzの最小値が示されており、線径が大きいほど面取りも大きく設定されています。


ねじ部や鋭い角を通して組み付ける場合は、キャップなどの治具を使って損傷を避ける設計・手順が推奨されており、これは現場での“うっかり傷”を前提にした実務的な知見です。


建築従事者向けに現場あるあるで言うと、点検作業で頻繁に分解される部位ほど「再組付けの品質」が支配的になります。


このタイプの現場では、寸法よりも先に「面取り」「バリ取り」「清掃」「薄く潤滑(指定がある場合)」を標準手順に落とし込むほうが、漏れクレームは減りやすいです。


おすすめの運用ルール(入れ子なし)

  • 角でOリングを引っかけないよう、面取りとバリ取りを図面化する。
  • 組付け前に、溝底・接触面の異物(切粉、シール剤の残渣)を除去する。
  • Oリングはねじれた状態で入れない(ねじれは部分的なつぶし不足と早期摩耗の原因)。

参考:面取り寸法z、鋭角部を通る場合の取付け注意(図示あり)
https://www.kikakurui.com/b2/B2401-2-2012-01.html

oリングつぶししろのバックアップリングと直径隙間

oリングつぶししろを“強めれば漏れない”と考えると、高圧条件では逆に失敗します。
理由は、圧力でOリングがすきま方向へ押し出される「はみ出し(押し出し破壊)」が起きるためで、つぶししろだけでは解決しません。
JISの考え方では、バックアップリングの要否は「直径隙間(2g)」と「使用圧力」「Oリング硬さ(デュロメータ硬さ)」で判断する枠組みになっています。


例えば硬さ70と90で許容される直径隙間の最大値が異なるなど、材料とすきまの組合せで安全域が変わることが表で示されています。


ここが意外と重要なポイントです。


建築設備の現場では、配管の芯ズレや据付誤差が“すきま(偏心)”を増やし、設計時の想定より2gが大きくなることがあります。


その状態で「漏れたから締め増し」すると、つぶし率だけ上がって押し出し破壊の方向に進むため、対策が逆効果になり得ます。


対策の考え方(現場向け)

  • 圧力が高い・温度が高い・隙間が読めない場合は、バックアップリングを前提に設計検討する。
  • すきま管理が難しい構造なら、硬度アップや溝形状の見直しだけでなく、機械的ガイド(芯出し)も検討する。
  • 「締める」ではなく「すきまを減らす/支える」方向で考える。

参考:バックアップリング要否判断(直径隙間2gと圧力・硬さの表)
https://www.kikakurui.com/b2/B2401-2-2012-01.html

oリングつぶししろの独自視点:熱膨張と圧縮永久ひずみの「時間差」

oリングつぶししろで、検索上位では“数字(8〜30%)”が先に出がちですが、現場で効くのは「時間差」の視点です。
同じつぶし率でも、締結直後の密封と、数日〜数か月後の密封は別物になり得ます。
理由は2つあります。


1つ目は、ゴムは時間とともに接触圧が下がる(圧縮永久ひずみ・応力緩和)ため、初期につぶしていても“効き”が落ちます。


2つ目は、温度でOリングが膨張し、さらに流体で膨潤する場合、溝内の占有が増えて“実質つぶし率”が上がり、別の故障モード(過大圧縮、摩耗、割れ)に移ることがある点です。


この「初期は漏れる」「しばらくすると止まる」「夏場に再発」「締め増しで悪化」みたいな挙動は、時間差の複合作用で説明できる場合があります。


たとえば冬場の低温・低圧で最小つぶし率側に寄り、初期漏れが出る一方、運転で温度が上がって膨張し、いったん止まる。


しかし長期でへたりが進むと再び接触圧が落ち、微小漏れが再発する、という筋書きです。


ここで役立つのが「溝に余裕を持たせる(占有率を上げすぎない)」という発想です。


占有率(溝断面に対するOリング断面の比率)が高すぎると、膨張・膨潤の逃げがなくなり、局所的に応力が上がって損傷しやすくなります。


規格側でも、特注ハウジングの決定方法として占有率(ハウジング占有率)の定義や算出式が示されており、“つぶししろだけで決めない”ための道具立てが用意されています。


現場向けの実装アイデアです。


  • 設備の運転温度レンジ(停止時・起動直後・定常)で「最小つぶし率」と「最大つぶし率」を両方見積もる。
  • 溝の占有率を上げすぎない(膨張・膨潤・公差の逃げを確保する)。
  • 再使用前提の点検口などは、規格の面取り・面粗さに加えて「締結順序」と「増し締め禁止(条件付き)」を手順化する。

参考:特注ハウジングの決定方法(占有率Fmaxの定義と算出式、つぶし率レンジの考え方)
https://www.kikakurui.com/b2/B2401-2-2012-01.html